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大学・研究所にある論文を検索できる 「整形外科患者の静脈血栓塞栓症のリスク評価と下肢自動運動器を用いた血栓予防の実行可能性の検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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整形外科患者の静脈血栓塞栓症のリスク評価と下肢自動運動器を用いた血栓予防の実行可能性の検討

小林, 加菜未 筑波大学

2022.11.24

概要

目 的:
近年日本では静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism:VTE)を有する患者が増加傾向であり、特に整形外科疾患はVTEのリスクが高い。既存の研究では高齢・手術・外傷・下肢麻痺・妊娠・悪性腫瘍などのリスク因子が提示されている。当院は、大学病院であり合併症を有する患者が多いため独自の傾向もあると考えられ、整形外科入院患者の血栓率及びVTEのリスク因子を調べるために調査を行った。またVTEの予防法として理学的予防と薬物予防が推奨されている。脊椎疾患患者は周術期の出血による合併症が重大であるため、薬物予防が困難であり、理学的予防が非常に重要となる。理学的予防には弾性ストッキング・間欠的空気圧迫装置の使用や早期離床・下肢自動運動などがある。下肢自動運動を励行し、より強固に血栓予防をするため当院整形外科でVTE予防のための下肢自動運動を励行する機器であるLeg exercise apparatus(LEX)が開発された。本研究ではこの機器を用いて脊椎疾患で床上安静を要する患者に対する下肢自動運動による血栓予防の安全性・実行可能性について検討することとした。

対象と方法:
【研究1】整形外科疾患患者の下肢静脈血栓発生率とその特徴 Retrospective cohort study
対象は2015年4月1日から9月30日と2018年4月1日から9月30日の間に筑波大学附属病院に整形外科疾患の治療目的で入院した患者とした。2015年と2018年の対象患者の比較をt検定・カイ二乗検定で行った。また名義ロジスティック回帰分析でそれぞれの年のVTEの有無に対して有意に関連する因子について検討した。検討因子は年齢・性別・Body Mass Index(BMI)・入院期間・入院原因疾患・手術の有無・既往歴・血液検査データとした。
【研究2】床上安静を要する脊椎疾患患者におけるLEXを用いたVTE予防法の研究 Feasibility study
対象は2019年1月から2021年5月の間に筑波大学附属病院に脊椎疾患により入院し、治療のため床上安静を要した患者とした。LEXを用いた下肢自動運動をプロトコルに準じて実施し、その安全性・実行可能性について検討した。プロトコルではLEX開始前に症候性VTEのないことを確認し、LEXを用いた下肢自動運動を1セッション5分以上で1日3回、離床まで実施した。

結 果:
【研究1】2015年と2018年の対象患者は血栓症既往の有無・入院時D-dimer値・下肢血管超音波検査施行の有無で有意差を認めた。2015年の対象患者は393例でそのうち24例(6.1%)でVTEを認め、2018年の対象患者は426例でそのうち32例(7.5%)でVTEを認めた。2015年では性別・BMI・年齢・入院日数、2018年では入院日数・悪性腫瘍の既往が血栓の高リスクであることを統計学的に示すことができた。また2015年のVTE症例のうち1例と2018年のVTE症例のうち4例、合わせて5例で中枢型血栓を認め、うち3例が脊椎疾患患者であった。
【研究2】31例中29例でプロトコルを完遂できた。脱落例を含めてLEXを用いた下肢自動運動が原因と考えられる重篤な有害事象は発生しなかった。またLEXを用いた運動プロトコルの実施期間中に症候性VTEの新規発生は認めなかった。

考察:
2015年と2018年での比較を行い、対象者は2018年で血栓症既往症例が多く、入院時D-dimer値が高値で、下肢血管超音波施行例が多いことが統計学的に示唆された。下肢血管超音波検査施行例が2018年で多い理由としては院内の血栓予防プロトコルが2016年より運用されたことが要因と考えられる。血栓率は2015年と2018年で有意差を認めなかった。2018年では下肢血管超音波検査施行率が上昇したにも関わらず血栓率は2015年と同様であったことから、2015年には検出されなかった無症候性血栓を有する症例が存在した可能性が考えられる。リスク因子は2015年が性別・BMI・年齢・入院日数、2018年が入院日数・悪性腫瘍既往で統計学的有意差を認めた。入院期間が長い患者で血栓率が高くなった理由としては、長期入院患者は入院の時点で重症度が高く、合併症を有するなど血栓リスクが高いことが考えられる。血栓症は2015年に24例、2018年に32例で認められ、中枢型は2015年に1例、2018年に4例で認められた。5例の中枢型血栓のうち3例は脊椎疾患患者であった。脊椎疾患は中枢型の血栓発症率が高かった。周術期の脊椎疾患患者は出血による合併症が重篤であり、薬物予防が困難であるため特に中枢型のVTEや肺塞栓を予防するために早期からの理学的予防が必要であると考えられる。
研究2では31例を対象とし、全例で肺塞栓や中枢型のVTEなどの症候性VTEを含む重篤な有害事象を認めずにLEXを用いた下肢自動運動プロトコルを実行することができた。31例中29例でプロトコルを完遂することができ、脱落例においてもLEXが原因と考えられる重篤な有害事象は認めなかったことから、床上安静を要する脊椎疾患患者へのLEXを用いた下肢自動運動は疼痛が少なく血栓予防法として適用しやすいと考えられた。

結論:
筑波大学附属病院に入院した整形外科患者における血栓率を調査し、性別・BMI・年齢・入院日数・悪性腫瘍の既往がリスクとなる可能性があること、血栓を有する患者は下肢・脊椎患者が多く、特に脊椎疾患患者で中枢型の血栓発症率が高いという特徴があることが示唆された。またLEXを使用した血栓予防が脊椎疾患により床上安静を要する患者に対して安全に実行可能であり、今後新たな血栓予防法としてより多くの患者への導入が期待される。

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