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大学・研究所にある論文を検索できる 「脳血管障害を発症した慢性維持血液透析患者の急性期腎代替療法に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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脳血管障害を発症した慢性維持血液透析患者の急性期腎代替療法に関する研究

秋保 真穂 東北大学

2021.09.24

概要

【背景】 慢性維持透析患者が脳血管障害を合併した際には、血液透析による循環動態や頭蓋内圧への影響、抗凝固剤の使用など様々な問題があるが、急性期の腎代替療法(Renal replacement therapy: RRT)に関 するエビデンスは非常に少なく、モダリティ選択や透析条件の方針について、標準化されていないのが現状である。本研究は現在我が国で実際に行われている RRT の内容やその予後を把握し検討することを目的とし、以下の 3 つの研究を行った。

【方法】 研究①: 全国規模のアンケート調査研究として、日本透析医学会、日本神経学会、日本脳神経外科学会の 3 学会全てで認定されている計 317 施設の透析医に対して各施設における治療方針を調査した。研究②: 宮城県内の多施設後方視的観察研究として、2012 年 4 月から 2016 年 3 月までに 4 つの基幹病院で脳血管障害の入院加療を行った慢性維持血液透析患者、計 206 名(脳梗塞 86 例、脳内出血 69 例、その他の脳血管障害 51 例)について診療録から各症例の治療内容や予後を調査し、解析を行った。またこのうち脳血管障害発症後、前医で一度も RRT を行わずに研究対象施設に入院した患者では急性期 RRT の詳細な内容についても解析を行った。研究③: 診断群分類包括評価制度(Diagnosis Procedure Combination: DPC)データを用いた全国における診療実態の調査として、2012 年 4 月から 2020 年 3 月までの期間で急性期脳血管障害での入院中に RRT を施行した患者、計 31,482 名の治療内容について解析した。

【結果】 研究①: 計 103 施設(32.5%)の回答が得られ、脳梗塞(Cerebral infraction: CI)及び脳内出血(Intracerebral hemorrhage: ICH)の急性期において 80%以上の施設が間欠的血液透析(Intermittent hemodialysis: IHD)のみを選択していた。このうち CI で 22.3%、ICH で 8.7%の施設は透析条件を発症前と変更していなかった。ガイドラインで推奨される持続的血液透析濾過(Continuous hemodiafiltration: CHDF)や腹膜透析(Peritoneal dialysis: PD)を選択している施設は少なく、CHDF は CI、ICH とも 16.5%の施設でのみ選択されていた。PD を選択している施設は CI では認めず、ICH で 1.0%のみであった。前回透析からの経過時間に関わらず、発症日の RRT は避ける傾向にあり、また急性期には抗凝固剤の変更や、透析効率を下げる条件変更を行う傾向にあった。研究②: 全 206 例における院内死亡率は 14.6%(CI: 9.3%、ICH: 23.2%)であった。発症病型別でみると CI では心原性脳梗塞(18.8%: 6/32 例、p=0.026)、ICH では被殻と視床に病変が及ぶ混合型出血(50.0%: 6/12 例、p=0.016)がその他の病型と比較し死亡率が高かった。脳血管障害発症後、前医で一度も RRT を行わずに入院した患者(CI: 71 例、ICH: 68 例)について、CI の 1.4%、ICH の 16.2%が発症後の透析を見合わせたまま死亡していた。CI の 95.8%、ICH の 76.5%が発症後初回の RRT として IHD を施行しており、CHDF を施行した患者はそれぞれ CI で 2.8%、ICH で 4.4%のみであった。PD を施行した症例は認めなかった。発症後の初回透析は ICH で特に開始を遅らせる傾向にあり、前回透析から CI で 68.4(49.7-73.3)時間、ICH で 73.6(68.1-96.7)時間の間隔を空けて透析を行っていた(p<0.0001)。これはもともとの透析予定から CI で 1.7(0.4-11.9)時間、ICH で 19.9(1.5-26.2)時間、延期されていた(p<0.0001)。透析条件については抗凝固剤の変更や血流量の減量、透析効率の低い透析膜への変更などが行われていた。研究③: 全 31,482 例中、95.7%が初回 RRT として IHD を施行され、CHDF は 4.2%、PD は 0.1%でのみ施行されていた。施設毎の症例数の中央値は 8 年間で CI 11 例、ICH 4 例と少なく、上位 10%の施設に
限定しても CI 67 例、ICH 29 例であった。

【結論】 3 つの研究いずれの結果においても、実診療では CHDF、PD の実施が少なく、ガイドラインによる推奨と乖離が存在していると考えられ、これは本研究によって得られた重要な知見である。また研究①、②の結果から、急性期には発症から時間をおき、透析条件を変更して IHD が行われていることが判明した。研究②では一般人口での疫学データよりも死亡率が高く、入院後早期に透析を見合わせたまま死亡する症例が多かった。各施設における症例数は少なく、今後、急性期 RRT の最適化や標準化を図るためには、脳血管障害を発症した慢性維持透析患者の大規模なデータ集積を行う必要があると考える。

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