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大学・研究所にある論文を検索できる 「Development of a novel stroma-rich tumor-bearing mouse model using adipose-derived mesenchymal stem cells (AD-MSCs) and understanding the characteristics of cancer-associated fibroblasts (CAFs) in pancreatic cancer」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Development of a novel stroma-rich tumor-bearing mouse model using adipose-derived mesenchymal stem cells (AD-MSCs) and understanding the characteristics of cancer-associated fibroblasts (CAFs) in pancreatic cancer

宮﨑, 貴寛 筑波大学

2021.08.03

概要

目的:
(Purpose)
脂肪由来の間葉系幹細胞 (AD-MSCs) が癌関連線維芽細胞 (CAF) に分化するか、特に AD-MSCs が myoblastic CAF (myCAF)、inflammatory CAF (iCAF)、antigen-presenting CAF (apCAF) に代表される、複数の CAF サブタイプに分化できるかを明らかにする。CAF 解析のための新規動物モデルを作製し、臨床膵癌の CAF の特徴を理解し間質標的治療の開発へとつなげる。

対象と方法:
(Material and Method)
(i) 細胞と培養条件
本研究では、ヒト不死化 AD-MSC 細胞株 ASC52telo(ATCC SCRC-4000)とヒト膵臓癌細胞株 Capan-1(ATCC HTB-79)、MIAPaCa-2(CRL-1420)、SUIT-2(JCRB1094)を用いた。AD-MSCs は緑色蛍光タンパク質(GFP)で、Capan-1は赤色蛍光タンパク質(RFP)で標識し、使用した。また、膵癌 (PDAC) 患者から CAF を分離し、利用した。

(ii) in vitro 共培養実験
AD-MSC と Capan-1 を直接共培養および間接トランズウェル共培養という 2つの異なる条件で培養した。7 日間の共培養後、形態学的解析、定量的リアルタイム PCR (qPCR)、RNA シーケンシング (RNA-seq) を行った。

(iii) マウスモデルと in vivo 実験
AD-MSCs と Capan-1 を免疫不全マウスの皮下に共同移植することにより、臨床膵癌の間質の特性をもつモデルマウスを作製した (以下、Stroma-rich cell linederived xenograft, Sr-CDX とする)。初めに、臨床膵癌で観察される特徴であるdesmoplasia、化学療法抵抗性、CAF の不均一性 (CAF heterogeneity)、を再現できているかという点に着目し、Capan-1 だけを移植する従来のマウスモデル
(CDX) と比較し、この Sr-CDX モデルの妥当性を評価した。第二に、代表的なCAF サブタイプである、myCAF、iCAF および apCAF の存在を、免疫組織化学および RNA シークエンス(RNA-seq)によって検証した。次に、単細胞 RNAseq により AD-MSC 由来の Sr-CDX CAF を単細胞レベルで検証した。

結果:
(Result)
(i) in vitro 共培養実験
AD-MSC と Capan-1 をペトリディッシュで直接共培養したところ、得られた形態は、癌細胞が形成する腺管構造の周囲に豊富な間質細胞が取り囲むといいう、典型的な臨床膵癌の組織像と類似していた。直接共培養と間接共培養のタイムラプス記録により、AD-MSC は異なる培養条件下で異なる形態変化を示すことがわかった。qPCR による遺伝子発現解析では、間接トランズウェル共培養では iCAF マーカー遺伝子 (CXCL1、IL6、LIF) で発現量増加を認めたが、myCAF マーカー遺伝子 (ACTA2、CTGF、TPM1)の発現増加は認めなかった。一方、直接共培養では myCAF マーカー遺伝子と iCAF マーカー遺伝子の両方の発現量増加を認めた。これらは RNA-seq 解析でも同様の結果であった。

(ii) マウスモデルと in vivo 実験
AD-MSC と Capan-1 を共同移植する Sr-CDX は、Capan-1 だけを移植する従来のマウスモデル (CDX) よりも高い腫瘍増殖と化学療法抵抗性が誘導され、ヒト PDAC の組織学的特徴である desmoplasia が再現されることを確認した。GFP抗体を用いた免疫組織染色により、この desmoplasia はマウス由来の細胞ではなく、移植した AD-MSC から構成されることを確認した。また、Sr-CDX 腫瘍の
AD-MSC 由来の GFP 陽性 CAF (Sr-CDX CAF) の RNA-seq 解析により、遺伝子発現パターンは myCAF、iCAF、apCAF マーカーの発現や、共通 CAF マーカー(COL1A1) といった既知の CAF 関連遺伝子プロファイルを示した。移植前のAD-MSC と Sr-CDX CAF の scRNA-seq 解析により、もともと myCAF 様の特徴を示す AD-MSC が、myCAF、iCAF、apCAF、共通 CAF マーカーを含む複数のCAF サブタイプに分化していることが判明した。また myCAF、iCAF 両方の特徴を示す CAF が存在していた。

考察:
(Discussion)
本研究では、膵癌の CAF を研究するためのマウスモデル (Sr-CDX) を開発し、その CAF の解析により、AD-MSC が myCAF, iCAF, apCAF といった既知の CAFサブタイプに分化することを明らかにした。

膵腺癌 (PDAC) は間質が豊富であることが大きな特徴であり、悪い予後や化学療法抵抗性の原因になっている。細胞株由来異種移植マウス (CDX)、患者組織由来異種移植マウス (PDX) といった従来のマウスモデルは間質が乏しく、癌組織の構成細胞の不一致 (癌細胞はヒト細胞由来、間質はマウス細胞由来) という点から CAF の解析、特に癌細胞との相互作用の解析には不向きである。そこでヒト膵癌の CAF を解析するために、ヒト膵癌細胞とヒト間葉系幹細胞を用いたSr-CDX を作製した。CAF の起源としては、膵星細胞、骨髄由来 MSC、脂肪由来MSC、上皮間質転換した癌細胞など複数報告されているが、本研究では入手が比較的容易で多分化能をもつ AD-MSC を CAF の前駆細胞として用いた。また、前述のように CAF の起源は複数報告されているが、臨床膵癌の CAF が1つの起源から構成されるか、複数の起源から構成されるかはわかっていなかった。

本研究で、CAF 研究のためのモデルマウス (Sr-CDX) を開発し、その CAF の解析により、AD-MSC が myCAF, iCAF, apCAF といった既知の CAF サブタイプに分化することを明らかにした。また、新たなサブタイプが存在する可能性を見出すことができた。この新たなサブタイプは免疫組織染色により臨床膵癌にも存在することを確認した。

本研究では間質標的治療の開発までには至らなかったが、この新しい Sr-CDXモデルは、CAF heterogeneity に関するより詳細な解析、PDAC の発生と進行、および間質標的治療の開発に貢献すると考えられる。

結論:
(Conclusion)
膵癌の CAF を解析するための新しいマウスモデルである Sr-CDX を作製した。また、AD-MSC が臨床膵癌を構成する heterogeneous な CAF に分化することを示した。

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