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大学・研究所にある論文を検索できる 「包括熱伝導率を用いた防耐火試験時の遮熱性予測」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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包括熱伝導率を用いた防耐火試験時の遮熱性予測

吉谷 公江 島根大学

2020.09.20

概要

防耐火性能は、建築基準法・告示の他に国土交通大臣の防耐火個別認定により確保する必要がある。その際、企業は予備試験を繰り返し実施して仕様を検討し、第三者機関による防耐火試験を経て認定を取得することとなる。防耐火試験は一度の試験において試験体が完全に破壊されるため、些細な変更においてもその都度試験体の製作・加熱試験を繰返す必要があり、予備試験を含めると企業が実施する試験回数は膨大となる。また、試験体の構成や試験時間によっては、試験体が燃焼している最中に試験炉から試験体を外すことがあり、発熱・発煙による人体への危険性は極めて高い。そのため、数値計算を用いて遮熱性予測により試験回数を削減できれば、試験の実施に必要となる費用や期間を削減できるだけでなく、人体への影響回避につながると考えられる。

防耐火試験時に材料内部を熱が伝わる過程においては、材料の熱物性値(熱伝導率・比熱・密度)に変化が生じるほか、水分の移動や蒸発も生じる。すなわち、材料が加熱されることで材料自体にクラックが生じ、加熱面からの距離によって材料内部の水分量にも偏りが生じる結果として、場所ごとに熱の伝わりやすさが異なる環境となっていると考えられる。本研究ではこの違いに着目し、防耐火試験時の実用的な遮熱性予測手法の確立を目的として、高温下での水分移動を含む材料内部の場所ごとの熱の伝わりやすさを考慮した熱物性値(包括熱伝導率)の推定と遮熱性予測手法を提案し、それらの有用性を明らかにするものとする。

本論文は 8 章により構成され、以下にその概要を示す。

1 章では、序章として、本研究の背景及び目的について述べるとともに、防耐火性能予測手法及び熱物性値測定・予測手法についての既往の研究についてまとめている。

第 2 章では、ALC 単体、せっこうボード単体、窯業系サイディング・せっこうボードの 2 層構成、窯業系サイディング・グラスウールボード・せっこうボードの 3 層構成について、標準加熱温度における小型加熱試験を実施した結果を述べている。これらの結果から、試験体内部に熱電対を設置することで、加熱側から非加熱側への熱伝導を実験データとして得られることを示した。また、X 線 CT を用いて加熱試験後の ALC を測定し、独立気泡がクラックによりつながることを確認し、加熱温度ごとの熱の伝わりやすさの変化についても言及している。さらに、加熱試験後のせっこうボードについては、クラックの入り方について確認し、せっこうボードの脱落しやすい温度域及びその要因を探ったうえで、X 線 CT の結果をもとに包括熱伝導率の分布及び温度依存性について検討を行っている。

第 3 章では、包括熱伝導率を用いた耐火試験時の遮熱性予測手法を提案している。水分を含む材料が片側から加熱されることで、クラックや水分挙動等の影響が場所ごとに異なると考えられるため、実験結果から推定する「材料の変化に起因する熱の伝わりやすさを全て包含した『包括熱伝導率』」を推定し、その包括熱伝導率を用いれば厚さを変化させた場合の遮熱性予測が可能となるという仮説を立て、非定常熱伝導方程式をもとにした 1 次元の解析モデルを構築した。さらに、材料単体、2 層構成、3 層構成のそれぞれについて包括熱伝導率の推定方法を提案し、材料厚さが増減する場合のそれぞれについて包括熱伝導率の割り当て方法についても示している。

第 4 章では、ALC 単体の加熱試験結果を用いて、遮熱性予測を行っている。まず厚さ 50 mmの ALC について包括熱伝導率の推定を行い、材料厚さを厚くして予測する場合の包括熱伝導率の割り当て方法及び遮熱性予測を行い、妥当性について検討している。その結果、ALC 単体では 100 mm に厚さを増した場合でも精度よく裏面温度予測ができることが示された。

第 5 章では、せっこうボード単体の加熱試験結果を用いて遮熱性予測を行っている。最も厚い 15 mm について包括熱伝導率の推定を行い、材料厚さを薄くして予測する場合の包括熱伝導率の割り当て及び遮熱性予測を行い、妥当性について検討した結果、せっこうボード単体では、15mmから 9mm まで薄くした場合においても精度よく裏面温度予測ができた。

第 6 章では、2 層構成(窯業系サイディング+せっこうボード)の加熱試験結果を用いて、遮熱性予測を行った。窯業系サイディング及びせっこうボードのそれぞれの包括熱伝導率を推定し、第 5 章と同様に、せっこうボードの厚さが薄くなる場合の包括熱伝導率の割り当て及び遮熱性予測を行い、妥当性について検討した。その結果、第 5 章とは異なる包括熱伝導率の推定値となったが、この値を用いれば精度よく裏面温度予測ができることが示唆された。

第 7 章では、3 層構成(窯業系サイディング+グラスウールボード+せっこうボード) の加熱試験結果を用いて、遮熱性予測を行っている。試験体の層構成が増すと包括熱伝導率の推定も煩雑となるため、少ない層構成で推定した包括熱伝導率を多層構成においても用いることができれば、包括熱伝導率を用いた遮熱性予測は実用性が増すと考えられる。したがって、1 層目の窯業系サイディング及び 3 層目のせっこうボードのそれぞれの包括熱伝導率は第 6 章(2 層構成)で推定した値を用い、2 層目のグラスウールボードの包括熱伝導率を推定した。さらに、せっこうボードの厚さを薄くする場合の包括熱伝導率の割り当て及び遮熱性予測を行い、妥当性についての検討を行った。その結果、この場合においても高い精度で裏面温度予測ができることが確認され、少ない層構成から得られた包括熱伝導率を多層構成の遮熱性予測に用いることが可能であると示唆された。

第 8 章は結論であり、本論文で得られた成果について要約している。

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