書き出し
ピルビン酸代謝異常が初期卵胞発育に及ぼす影響
概要
胎仔卵巣生殖細胞はミトコンドリア代謝の亢進など特徴的なエネルギー代謝状態を示すが、初期卵胞発育における役割は分かっていない。今回、マウス胎仔卵巣器官培養においてUK5099を用いたミトコンドリアへのピルビン酸取り込み阻害が卵母細胞の生存、減数分裂に影響を与えることなく、初期卵胞発育を抑制することが分かった。さらに、UK5099添加による卵胞発育抑制はクエン酸回路の中間代謝物であるαケトグルタル酸とコハク酸により一部レスキューされ、クエン酸回路基質の重要性が示唆された。次に遺伝子発現について調査し、卵胞形成に重要であるTGF-β関連遺伝子であるGdf9およびBmp15がUK5099添加培養卵巣における生殖細胞で発現低下していること、リコンビナントGDF9を添加することでUK5099添加による卵胞発育抑制をレスキュー出来ることが示された。また、UK5099の標的であるミトコンドリアピルビン酸キャリアをコードするMpc2を生殖細胞特異的にノックアウトした卵巣においても、初期卵胞発育がUK5099存在下で培養した卵巣同様に抑制されていることが分かった。
以上から、ピルビン酸代謝阻害が卵母細胞におけるGdf9の発現を低下させ、初期卵胞発育抑制を引き起こすことが示唆された。また、ヒトにおいても同様なしくみが、卵胞発育不全を引き起こす可能性が示唆される。