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大学・研究所にある論文を検索できる 「日本人新生児の生後早期の腸内細菌叢の変化および、それが末梢血免疫細胞の遺伝子発現に与える影響の検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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日本人新生児の生後早期の腸内細菌叢の変化および、それが末梢血免疫細胞の遺伝子発現に与える影響の検討

伊藤, 淳 東京大学 DOI:10.15083/0002007041

2023.03.24

概要

[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名 伊藤 淳
本研究は、多種の免疫関連疾患の発症に重要な役割を演じていると考えられているビフ
ィズス菌の早期保有が、短期的に血中遺伝子発現に及ぼす影響と、中長期的な児の予後に
及ぼす影響を将来的に明らかにするために行われた。そのための基礎データを得るため
に、適切な腸内細菌叢解析パイプラインを構築するところからはじまり、そののちに、当
院出生の児の生後早期の便検体と血液検体を収集、保存し、検体調整、解析を経て、下記
の結果を得ている。
1.16SrRNA 遺伝子増幅法をベースにした腸内細菌叢の解析パイプラインを新たに構築
し、Mock 細菌、Mock-DNA を用いた検証により、結果をゆがめるバイアスが最小限に保
たれていることを確認した。
2.上記パイプラインを用いて当院出生の 46 母子ペアから得られた計 135 の便検体(日
齢 4-5、月齢 1、母の便)を解析したところ、腸内細菌叢のα多様性は日齢により上昇す
ること、β多様性では月齢 1 が日齢 4-5 と成人便の中間に位置すること、分娩様式により
出生後早期の児の腸内細菌叢には明らかな違いがあるが、月齢 1 ではその差が明らかに縮
まっていることが示された。これらは既報と合致するものであった。
3.ビフィズス菌は日齢 4-5 における腸内細菌のリード数の 13%を占めるなど、メジャー
な構成要素の一つであり、かつ新生児期のみに激増する極めて特殊な菌種であることが確
認された。保有の閾値を 1%とした場合、ビフィズス菌保有者の割合は、日齢 4-5 から月
齢 1 にかけて、経膣分娩児では 40→70%へと増加し、帝王切開児では 17→64%へと増加
することが観察された。これらは既報と矛盾しない結果であった。
4.日齢 4-5 の段階で 28%の児が保有者であり、全例が月齢 1 においても引き続き保有し
ていたのに対して、日齢 4-5 で非保有であったもののうち半数が、月齢 1 においても引き
続き保有に至っていないことが確認された。
5.1 歳半における児の予後との解析において、月齢 1 においても非保有であったもの
は、保有するに至った児に比べて、ウィルス性疾患に罹患する頻度、重症度が有意に低い
という関連性が見られた。
6.日齢 4-5 の患者情報と同日の末梢血の遺伝子発現の情報を統合することにより、この
時期の末梢血遺伝子発現におおいに影響する背景因子として、妊娠前母体肥満、およびに
ビフィズス菌の保有、の 2 つが検出された。
7.妊娠前肥満母体から出生した児では、日齢 4-5 に至っても背景に炎症性の変化が存在

し、それが CD4/CD8T に細胞種非依存性の遺伝子発現変化(インターフェロン誘導遺伝
子の発現亢進)をもたらしていた。
8.ビフィズス菌保有者では、CD4T では有意な遺伝子発現の変化が見られない一方、
CD8T においては、HLADR, CD28, CD74, CD29 をはじめとする、cytotoxicity に関与す
る遺伝子の発現亢進や低下が見られ、上記 5 で得られた「ビフィズス菌保有者における上
気道炎罹患頻度低下」に少なくともある一定の度合い関わっている可能性が示唆された。

以上、本論文においては、新たに構築された腸内細菌解析パイプラインを用いること
で、ビフィズス菌の早期保有が生後 1 歳半におけるウィルス感染の頻度、重症度の低下と
有意な相関があること、ならびにビフィズス菌保有と血中 CD8T の特定の遺伝子発現の変
化が明らかにされた。これらのことから、健常新生児においても、生後早期にビフィズス
菌を保有することが児の免疫細胞に、そして児の長期予後に有意義な効果を有することが
示唆される。本研究は、将来の献上新生児に対する、ビフィズス菌早期保有を目的とする
大規模介入臨床試験の基盤になるものと考えられる。
よって本論文は博士(医学 )の学位請求論文として合格と認められる。

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