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大学・研究所にある論文を検索できる 「日本人成人双生児を対象とした腸内細菌叢と栄養素」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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日本人成人双生児を対象とした腸内細菌叢と栄養素

冨澤, 理恵 大阪大学

2021.12.23

概要

ヒトの腸内細菌は、1000種以上の100兆を超える微生物で構成され、宿主であるヒトの免疫系や代謝機能の制御に関連しており、多くの病気との関連が報告されている。腸内細菌叢に影響を与える要因には食事、ストレス、身体活動、薬物摂取、飲酒、喫煙習慣など様々な変容可能な環境要因と、遺伝、遺伝的変異、出産(分娩)方法、地理的影響、年齢など調整しにくい要因が挙げられる。

単一遺伝疾患以外の病気の感受性、能力、性格などのすべての人間の表現型は遺伝と環境の双方が関与している。また、日本人腸内細菌叢の特徴には、生体に有益な機能が外国よりも多く含まれると示唆されていることから、遺伝の影響を統制して、日本人の腸内細菌叢と関連する環境要因の精度の高い解明のために、日本人双生児を対象に調査研究を行った。

成人一卵性双生児男性56名28ペアを対象に、ペア内差に着目して、環境因子の感受性を検討する分析法を考案した。ペア内差が小さい菌は環境因子による影響を受けにくいと考え、Lactobacillusの1属のみが抽出された。これは幼少期に定着する属と言われており、この結果の理由の一つと考えられる。また肥満やメタボリックシンドロームとの関係について複数報告があるが、その結果は一致しておらず、本分析対象者のBMIの平均が23.4であり、これらを検証する結果にはならなかった。一方、ペア内差が大きい菌は環境因子による影響を受けやすいと考え、12属が抽出され、さらに5大栄養素摂取量との相関分析を行った。12属中、環境因子との関連報告があったのは4属のみであった。例えば、 Bacteroidesは哺乳類の腸内共生菌の優勢菌である一方、日和見感染症の原因菌として作用する可能性が指摘されているが、生理機能は分かっていない。これは、難消化性のオリゴ糖を栄養分として分解し、フラクトオリゴ糖を食料資源として増殖を活性化することができるが、今回の結果では糖類摂取との関連は示されなかったものの、マウスを使った実験研究で報告されている通り、ビタミンA(本研究ではレチノール当量を用いた)と正の相関を示した。Bacteroides plebeius種は日本人の保有率が高いと言われ、海藻摂取との関連を示唆する報告があり、日本人を対象とした本研究結果の特徴となるかもしれない。また、 Lachnospira属はたんぱく質、ナトリウム、鉄、ビタミンD、ビタミンB12と優位な相関があり、栄養素の影響を受けやすいかもしれない。

また、高血圧不一致の成人一卵性双生児52名26ペアを対象に、高血圧関連菌を特定し、これらの細菌が摂取栄養素と関連があるのかを調べた。日本人一卵性双生児が対象であるため、年齢、性別が完全に一致する2群間比較のみならず、遺伝の影響を制御するためのペア内差に着目することで、日本人の高血圧関連細菌と考えられる15属を抽出した。例えば、先行研究と同様に高血圧群で優位な存在比であった Eubacterium rectale グループは、ナトリウムをはじめに複数の摂取栄養素との有意な相関が示され、本属は栄養素の影響を受ける可能性が示唆された。

日本人の一卵性双生児ペア内の差分に着目することで、遺伝的影響を考慮して、日本人のヒト腸内細菌やそれと生活環境の影響との関連が検討できた。この結果の再現性・メカニズムについては、コホート研究や実験研究で検討する必要がある。また、反対に、コホート研究や実験研究で得た結果を双生児コホートで確認する可能性も考えられた。

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