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大学・研究所にある論文を検索できる 「骨格筋におけるNRF2の活性化がもたらす運動機能改善効果の解明」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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骨格筋におけるNRF2の活性化がもたらす運動機能改善効果の解明

大野木 孝嘉 東北大学

2021.03.25

概要

骨格筋は身体の活動に必要な運動器において重要な役割を果たしており、高齢化社会が進む中で加齢による骨格筋の減少、機能障害を呈するサルコペニアやフレイルといった病態の治療は重要な課題と言える。Kelch-like ECH-associated protein 1(KEAP1)-Nuclear factor(erythroidderived2)-like 2(NRF2)制御系は生体の酸化ストレス応答において重要な役割を担っており、通常状態ではNRF2はKEAP1により抑制性の制御を受ける。活性酸素種(Reactive oxygen species: ROS)などの酸化ストレスが生じるとKEAP1の活性が低下することでNRF2が活性化し、転写因子としてDNA上の抗酸化応答配列に結合して下流にある生体防御に働く酵素を誘導する。これまでに過度な運動により過剰なROSが発生して細胞障害を生じることや、運動で発生した酸化ストレス対してNRF2が活性化し防御的に働くことが報告されており、NRF2の骨格筋における有益な作用について検討した。

 遺伝的に全身でKeap1をノックダウンしたマウスでは、骨格筋でNRF2が活性化しており、野生型マウスと比較し持久力が向上していた。詳細なメカニズムを調べるために骨格筋で特異的にKeap1を欠損させたKeap1F/F: Mlc1f-Cre(MK)マウスを作成し、対照群のKeap1F/F(Cntl)マウスと比較した。筋肉の重量に変化はなかったが、タンパク質の解析から雌のヒラメ筋において遅筋線維の割合が増大していると考えられ、雌マウスを用いて解析を進めた。雌マウスの骨格筋ではミトコンドリアの量に変化はなかったが、Succinate dehydrogenase(SDH)染色でMKマウスの骨格筋が濃く染まりミトコンドリアのエネルギー産生が亢進していると考えられた。MKマウスとCntlマウスのヒラメ筋を用いたメタボローム解析を行ったが、解糖系やTCA回路などの中心代謝経路に大きな変化はなかった。一方でMKマウスのヒラメ筋のATP量は減少しており、これはSDH活性が亢進していたことを考慮すると、ミトコンドリアにおけるATP産生の脱共役が亢進、運動時のATP消費が過剰、ATPがPhosphocreatineなどの他のエネルギー源として変換されている可能性などが考えられた。エネルギーが適切に産生・利用されているのかを検証するために運動機能を測定した。その結果、MKマウスでは持久力が向上しておりエネルギーの産生は増大していると考えられた。また血漿を用いたメタボローム解析ではMKマウスでは運動による血中乳酸濃度の上昇が抑制されており、嫌気性代謝以外の経路でエネルギー産生が増加していることが示唆された。血漿を用いたリピドーム解析では、MKマウスで運動による脂肪酸濃度の増加が強く誘導されており、3-Hydroxybutyric acidが上昇していたことから、NRF2の活性化でβ酸化が亢進していると考えられた。そのメカニズムの解明のために、運動負荷による骨格筋の遺伝子発現の変化をRNAシーケンス(RNA-Seq)で観察したが、脂肪酸の動員やβ酸化を亢進する因子を抽出することはできなかった。加齢に伴う変化をみるために12〜14ヶ月齢のマウスで運動機能を測定したが、MKマウスの持久力の向上は保持されており、老化してもNRF2の活性化は運動機能の改善に有効であると考えられた。以上より、骨格筋におけるNRF2の活性化は脂肪のエネルギー基質としての利用を促進し、ミトコンドリアにおけるエネルギー産生の増加をもたらしていると考えられた。加齢によってもその効果は保たれており、フレイルなどの老化による骨格筋の機能障害の改善にNRF2の活性化が有効である可能性が示唆された。

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