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乳用牛の前胃液pH連続測定を目的とする無線伝送式pHセンサー開発に関する研究

水口, 人史 筑波大学

2023.09.04

概要

乳用牛の前胃液 pH 連続測定を目的とする
無線伝送式 pH センサー開発に関する研究

2023年1月

水口 人史

乳 用 牛 の 前 胃 液 pH連 続 測 定 を 目 的 と す る
無 線 伝 送 式 pHセ ン サ ー 開 発 に 関 す る 研 究
(要約)

筑波大学大学院
理工情報生命学術院
生命地球科学研究群
農学学位プログラム
(NARO連 係 先 端 農 業 技 術 科 学 サ ブ プ ロ グ ラ ム )
博 士 (農 学 )

水口

学位論文

人史

目次

第 1 章

緒論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

第 2 章

無 線 伝 送 式 pH セ ン サ ー の 諸 元 検 討 と 設 計 試 作 、 お よ び 性 能 検 証

1節

無 線 伝 送 式 pH セ ン サ ー の 稼 働 期 間 に お け る pH 測 定 の 安 定 性
な ら び に 電 力 供 給 能 力 の 検 証 ・ ・ ・・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・・ 2

2節

無 線 伝 送 式 pH セ ン サ ー 、 受 信 機 、 お よ び 中 継 機 の 通 信 性 能
検証・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2

3節

乳 用 牛 生 体 内 に お け る 無 線 伝 送 式 pH セ ン サ ー と 市 販 pH 計 に よ る
前 胃 液 pH 測 定 値 お よ び 、 経 口 採 取 に よ る 前 胃 液 pH 測 定 値 の 比 較
検証・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3

第 3 章
1節

牛 の 生 体 内 に お け る 無 線 伝 送 式 pH セ ン サ ー の 測 定 能 力 検 証
無 線 伝 送 式 pH セ ン サ ー シ ス テ ム に よ る 乳 用 牛 前 胃 液 pH の 連 続
測定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4

2節

無 線 伝 送 式 pH セ ン サ ー シ ス テ ム に よ る 肉 用 牛 前 胃 液 pH の 連 続
測定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5

3節

無 線 伝 送 式 pH セ ン サ ー シ ス テ ム の 通 信 性 能 検 証 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 5

第 4 章

無 線 伝 送 式 pH セ ン サ ー シ ス テ ム の 実 用 性 検 証 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 7

第 5 章

総括・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8

第 1章

緒論

乳 用 牛 の 飼 養 で は 、高 泌 乳 化 に と も な う エ ネ ル ギ ー 要 求 の 充 足 を 主 な 目 的
と し て 、濃 厚 飼 料 の 多 給 が 行 わ れ て い る 。濃 厚 飼 料 は 、乳 産 生 量 の 増 大 や 飼
料作物の自給回避による作業量負担の軽減など生産性の向上に寄与する半
面 、過 剰 給 与 に よ り 前 胃 液 pH の 顕 著 か つ 頻 回 の 低 下 を 招 き 、 亜 急 性 ル ー メ
ン ア シ ド ー シ ス ( SARA) を 契 機 と す る 関 連 疾 病 に よ っ て 生 産 性 を 阻 害 す る
こ と が 指 摘 さ れ て い る 。既 往 の 研 究 で は SARA 対 策 と し て 、前 胃 液 pH の 正
確 な モ ニ タ リ ン グ と 管 理 の 必 要 性 が 示 唆 さ れ て い る が 、ル ー メ ン フ ィ ス テ ル
装 着 牛 な ど を 活 用 可 能 な 実 験 的 環 境 以 外 で は 、前 胃 液 の 連 続 採 取 お よ び 測 定
に適した有効かつ簡便な手段が乏しく、一般農場での実践は進んでいない。
そ こ で 、本 研 究 で は 、外 科 処 置 な く 前 胃 内 に 安 定 的 に 留 置 可 能 な 無 線 伝 送
式 pH セ ン サ ー を 開 発 し 、こ れ ま で 実 践 が 困 難 で あ っ た 一 般 農 場 に お け る 乳
用 牛 前 胃 液 pH の リ ア ル タ イ ム モ ニ タ リ ン グ を 実 現 し 、乳 用 牛 の 健 全 な 飼 養
と生産性を両立する飼養管理ツールの完成によって酪農産業の経営改善に
寄与することを目指した。

1

第 2章

1節

無 線 伝 送 式 pH セ ン サ ー の 諸 元 検 討 と 設 計 試 作 、 お よ び 性 能 検 証

無 線 伝 送 式 pH セ ン サ ー の 稼 働 期 間 に お け る pH 測 定 の 安 定 性 な ら び
に電力供給能力の検証

前 胃 液 pH の 連 続 測 定 が 3 か 月 間 可 能 な 無 線 伝 送 式 pH セ ン サ ー の 設 計 試
作 を 行 な い 、基 本 的 性 能 と し て pH 電 極 の 測 定 安 定 性 と 内 蔵 電 池 に よ る 電 力
供 給 能 力 を 検 証 し た 。 そ の 結 果 、 無 線 伝 送 式 pH セ ン サ ー に 搭 載 し た pH 電
極 は 3 か 月 間 無 校 正 で も 測 定 安 定 性 が 維 持 可 能 で あ る こ と 、内 蔵 電 池 に よ る
電力供給能力は稼働後 6 か月の時点でも回路の駆動に必要な最低電圧に対
して余裕を持つことを確認した。

2節

無 線 伝 送 式 pH セ ン サ ー 、 受 信 機 、 お よ び 中 継 機 の 通 信 性 能 検 証

安 定 し た 無 線 通 信 能 力 は 、デ ー タ の リ ア ル タ イ ム 監 視 に お い て 重 要 で あ る
こ と か ら 、無 線 伝 送 式 pH セ ン サ ー の 無 線 通 信 能 力 を 生 体 外 で 検 証 し た 。 無
線 通 信 可 能 距 離 は 、 無 線 pH セ ン サ ー と 受 信 機 間 で は 450m、 受 信 機 と 中 継
機 間 で は 1300m 以 上 で あ る こ と を 確 認 し た 。 ま た 、 そ れ ぞ れ の 通 信 可 能 距
離 に 450m と 1300m 以 上 と い う 差 が 生 じ た 要 因 と し て 、ア ン テ ナ の 地 上 高 お
よび形状よる伝搬特性の影響が考えられた。

2

3 節

乳 用 牛 生 体 内 に お け る 無 線 伝 送 式 pH セ ン サ ー と 市 販 pH 計 に よ る 前

胃 液 pH 測 定 値 お よ び 、 経 口 採 取 に よ る 前 胃 液 pH 測 定 値 の 比 較 検 証
既 存 法 に よ る 前 胃 液 の pH 測 定 に つ い て は 、手 技 ご と に 様 々 な 課 題 が あ り 、
開 発 し た 無 線 pH セ ン サ ー が こ れ ら の 諸 課 題 の 解 決 に 有 効 で あ る か 否 か は 、
既 存 法 に よ る 前 胃 液 pH の 測 定 性 能 と の 優 劣 を 比 較 検 証 に よ っ て 明 ら か に す
る こ と が 重 要 で あ る 。そ こ で 、市 販 の pH 計 を 用 い た フ ィ ス テ ル 法 に よ る 前
胃 液 pH の 測 定 、 経 口 採 取 法 に よ る 生 体 外 に お け る 前 胃 液 pH の 測 定 と 、 無
線 pH セ ン サ ー に よ る 前 胃 液 pH の 測 定 を 同 時 に 行 い そ の 結 果 を 比 較 す る と
と も に 、生 体 内 に 留 置 し た 無 線 pH セ ン サ ー と 生 体 外 の 受 信 機 と の 無 線 通 信
が、途絶等の支障無く可能であるかを検証した。
開 発 し た 無 線 伝 送 式 pH セ ン サ ー に よ る pH 測 定 値 は フ ィ ス テ ル 法 の 測 定
値と同等の測定性能を有することが明らかとなった。また、経口採取法は、
他 法 よ り も 測 定 値 が 高 値 と な る こ と が 示 唆 さ れ た 。 な お 、 生 体 内 の 無 線 pH
セ ン サ ー と 生 体 外 の 受 信 機 と の 通 信 に お い て は 、生 体 外 に お け る 通 信 検 証 結
果 に 比 べ 受 信 信 号 強 度 は 低 く 、電 波 が 腹 壁 を 透 過 す る 際 に 減 衰 す る こ と が 確
認されたが、通信の途絶などは生じなかった。

3

第 3章

1節

牛 の 生 体 内 に お け る 無 線 伝 送 式 pH セ ン サ ー の 測 定 能 力 検 証

無 線 伝 送 式 pH セ ン サ ー シ ス テ ム に よ る 乳 用 牛 前 胃 液 pH の 連 続 測 定

無 線 pH セ ン サ ー の 稼 働 期 間 は 3 か 月 に 設 定 し て お り 、こ の 期 間 に つ い て
前 胃 液 pH の 測 定 が 安 定 的 に 可 能 で あ る こ と が 必 要 で あ る 。 ま た 、 無 線 pH
セ ン サ ー の 経 口 投 入 が 、供 試 牛 に 悪 影 響 を 及 ぼ さ ず 、簡 便 か つ 安 全 に 実 施 可
能であるかについても明らかする必要がある。
そ こ で 、 無 線 伝 送 式 pH セ ン サ ー を 乳 用 牛 の 生 体 内 に 留 置 し て 稼 働 さ せ 、
短 期 お よ び 長 期 の 主 要 性 能 の 検 証 を 実 施 し た 。短 期 の 検 証 で は 、実 験 的 に 調
製 し た 高 粗 飼 料 構 成 の 飼 料 、お よ び 高 濃 厚 飼 料 構 成 の 飼 料 を 給 与 し 、そ れ ぞ
れ の 飼 料 給 与 下 に お け る 前 胃 液 pH の 24 時 間 の 変 動 を 測 定 し た 。 高 粗 飼 料
構 成 の 飼 料 給 与 時 に 比 べ 、高 濃 厚 飼 料 構 成 の 飼 料 給 与 時 に は 、飼 料 給 与 後 の
前 胃 液 pH は よ り 低 値 と な り 、 前 胃 液 pH の 日 内 変 動 は 個 体 に よ り 大 き な 差
が み ら れ た 。長 期 の 検 証 試 験 で は 、通 常 の 飼 養 条 件 下 に お い て 、乳 用 牛 の 前
胃 液 pH と 前 胃 液 温 度 を 3 か 月 間 連 続 で 測 定 し た 。 前 胃 液 pH お よ び 前 胃 液
温 度 は 安 定 的 に 測 定 可 能 で あ り 、無 線 伝 送 に よ る デ ー タ の 送 受 信 が 欠 測 な く
確 実 に 行 わ れ る こ と が 明 ら か と な っ た 。前 胃 液 温 度 は 、牛 の 飲 水 行 動 に よ り
短 時 間 低 温 度 を 示 す 状 態 が 認 め ら れ 、こ れ を 副 次 的 に 活 用 し た 飲 水 行 動 把 握
の 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。セ ン サ ー の 経 口 投 入 は 供 試 し た す べ て の 牛 で 簡 便 か
つ安全に実施可能であり、牛に健康上の影響を与えないと考えられた。
4

2節

無 線 伝 送 式 pH セ ン サ ー シ ス テ ム に よ る 肉 用 牛 前 胃 液 pH の 連 続 測 定

肉用牛の飼養では付加価値の高い牛肉生産を目的とした濃厚飼料の多給
が 行 わ れ て い る 。前 胃 発 酵 の 恒 常 性 は 乳 用 牛 と 同 様 に 重 要 と さ れ て い る こ と
か ら 、 無 線 伝 送 式 pH セ ン サ ー の 応 用 可 能 性 を 検 証 す る こ と を 目 的 と し て 、
市 販 配 合 飼 料 お よ び 市 販 配 合 飼 料 の 7.5%お よ び 15%を ク ラ フ ト パ ル プ (KP)
に 代 替 し た 3 種 の 飼 料 給 与 下 に お け る 肉 用 牛 の 前 胃 液 pH を 連 続 測 定 し 比 較
し た 。 KP の 代 替 に よ る 前 胃 液 pH へ の 明 確 な 影 響 は 認 め ら れ ず 、 肉 用 牛 に
お い て も 前 胃 液 pH の 連 続 測 定 は 可 能 で あ っ た 。 前 胃 液 pH の 日 内 変 動 に お
い て 、 pH の 最 低 値 は 乳 用 牛 よ り も 全 般 に 低 値 を 示 し た 。 こ れ ら の 違 い は 、
給 与 さ れ る 飼 料 成 分 の 違 い 、特 に 肥 育 中 期 の 肉 用 牛 で は 濃 厚 飼 料 の 給 与 割 合
が 多 い こ と に 起 因 す る も の と 推 定 さ れ 、肉 用 牛 の 前 胃 内 環 境 は 乳 用 牛 と 比 較
し て よ り 過 酷 な 条 件 で あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。こ の よ う な 条 件 の も と で 、無
線 pH セ ン サ ー は 7 週 間 に わ た っ て 連 続 で 稼 働 し 、す べ て の 供 試 牛 で 前 胃 液
pH の 測 定 が 可 能 で あ っ た こ と か ら 、 肉 用 牛 の 前 胃 環 境 に お い て も 無 線 伝 送
式 pH セ ン サ ー シ ス テ ム を 活 用 で き る 可 能 性 が あ る と 考 え ら れ た 。

3節

無 線 伝 送 式 pH セ ン サ ー シ ス テ ム の 通 信 性 能 検 証

酪 農 施 設 で は 、新 旧 様 々 な 工 法 で 建 設 さ れ た 建 物 の 混 在 や 、ノ イ ズ 対 策 が
不 十 分 な 電 源 環 境 、さ ら に は 半 世 紀 近 く も 前 の 酪 農 関 連 機 器 の 現 役 稼 働 と い
っ た 状 況 を 目 に す る こ と が あ り 、建 物 に よ る 電 波 の 遮 蔽 や 稼 働 中 の 機 器 か ら
5

発 す る ノ イ ズ 等 、無 線 通 信 環 境 へ の 影 響 が 懸 念 さ れ る 場 合 が あ る 。ま た 、牛
の 管 理 方 法 も フ リ ー ス ト ー ル 、タ イ ス ト ー ル 、お よ び 放 牧 な ど 多 様 で あ る こ
とから、複数条件下での通信性能の評価は極めて重要と考えられた。
そ こ で 、畜 舎 規 模 、構 造 の 異 な る タ イ ス ト ー ル お よ び フ リ ー ス ト ー ル 飼 養
形 態 の 農 場 に お い て 無 線 伝 送 式 pH セ ン サ ー シ ス テ ム を 稼 働 さ せ 、通 信 の 実
態 を 調 査 し た 。 信 号 の 定 時 受 信 率 (一 時 的 な 通 信 の 不 成 立 な く 、 即 時 に 通 信
が 成 立 し た 割 合 )と 、 直 接 受 信 率 (中 継 機 を 介 さ ず 、 受 信 機 と 無 線 pH セ ン サ
ー 間 で 直 接 通 信 が 行 わ れ た 割 合 )を 算 出 し 、 畜 舎 の 構 造 や 、 受 信 機 お よ び 中
継機の設置状況などが通信に与える影響を評価するとともに、無線伝送式
pH セ ン サ ー シ ス テ ム が い ず れ の 飼 養 形 態 に お い て も 安 定 的 な 通 信 が 可 能 で
あるかを検証した。
タ イ ス ト ー ル 条 件 下 で は 、す べ て の 供 試 牛 に お い て 未 受 信 デ ー タ は 確 認 さ
れ ず 、定 時 受 信 率 も 一 部 を 除 き 95%以 上 と 高 か っ た 。直 接 受 信 率 は 0.02 %~
7.93 %と 極 め て 低 値 で あ り 、ほ と ん ど の デ ー タ が 中 継 機 を 経 由 し て 受 信 さ れ
て い た 。フ リ ー ス ト ー ル 条 件 下 で は 、す べ て の 供 試 牛 に お い て 未 受 信 デ ー タ
は 確 認 さ れ ず 、定 時 受 信 率 は す べ て の 供 試 牛 で 90 % 以 上 と 高 か っ た が 、直
接 受 信 率 は す べ て の 供 試 牛 で 0 %で あ り 、全 デ ー タ が 中 継 機 1 ま た は 中 継 機
2 を 経 由 し て 受 信 さ れ て い た 。い ず れ の 条 件 に お い て も 極 め て 安 定 的 に 測 定
デ ー タ が 得 ら れ た こ と か ら 、シ ス テ ム と し て 目 標 と し た 安 定 的 な 実 用 通 信 性
能は確保されていると判断した。
6

第 4章

無 線 伝 送 式 pH セ ン サ ー シ ス テ ム の 実 用 性 検 証

試 作 し た 無 線 伝 送 式 pH セ ン サ ー の 実 用 性 検 証 と し て 、近 年 導 入 事 例 が 増
加 し て い る automatic milking system(AMS)を 用 い た 飼 養 体 系 に お い て 乳 用 牛
24 頭 を 供 試 し て 大 規 模 な 実 証 試 験 を 実 施 し た 。AMS を 用 い た 飼 養 体 系 で は 、
partly mixed ration (PMR)を 飼 槽 で 給 与 し 、 配 合 飼 料 は 牛 に 対 し て AMS へ の
自 発 的 訪 問 を 促 す た め 、 搾 乳 時 に AMS で 給 与 す る 方 式 が 採 用 さ れ て い る 。
AMS に お い て 給 与 す る 配 合 飼 料 の 成 分 や 給 与 量 に つ い て は 、 明 確 な 基 準 は
な く 、 既 往 の 研 究 で は 配 合 飼 料 中 の で ん ぷ ん 濃 度 を 高 め る こ と が SARA リ
ス ク 要 因 の 一 つ で あ る と の 指 摘 も な さ れ て い る 。 本 研 究 で は PMR を 共 通 飼
料 と し 、 AMS で 給 与 す る 配 合 飼 料 中 の で ん ぷ ん 濃 度 を 30%に 調 整 し た 飼 料
と 23.5%に 調 整 し た 飼 料 の 2 種 を 給 与 し た 条 件 下 で 、試 作 し た 無 線 伝 送 式 pH
セ ン サ ー を 活 用 し 、 SARA の 抑 制 効 果 の 有 無 、 前 胃 液 pH、 前 胃 発 酵 産 物 お
よ び 生 産 性 に つ い て 検 討 し た 。そ の 結 果 、前 胃 液 pH が 6.1 未 満 の 時 間 /日 は
い ず れ の 飼 料 給 与 下 で も SARA の 基 準 に 達 し て お り SARA の 抑 制 に は つ な
が ら な か っ た 。 前 胃 液 pH の 1 時 間 平 均 値 は 配 合 飼 料 よ り も PMR の 給 与 に
連 動 す る 傾 向 が あ り 、 前 胃 液 pH へ 与 え る 影 響 は 配 合 飼 料 よ り も PMR の ほ
う が 大 き い こ と が 示 唆 さ れ た 。前 胃 発 酵 産 物 お よ び 乳 量 、乳 成 分 は い ず れ の
飼 料 給 与 下 で も 差 が 認 め ら れ ず 、 配 合 飼 料 中 の で ん ぷ ん 濃 度 を 30% か ら
23.5%に 減 じ て も 、 生 産 性 は 同 等 に 保 た れ る こ と が 明 ら か と な っ た 。
7

第 5章

総括

研 究 成 果 の 社 会 実 装 に 向 け た 取 り 組 み と し て 、収 集 し た pH デ ー タ の 二 次
活 用 を 簡 便 に す る 専 用 統 計 処 理 ソ フ ト ウ ェ ア を 開 発 し た 。ま た 、本 研 究 で 試
作 し た 無 線 伝 送 式 pH セ ン サ ー を 基 に し た 製 品 を 開 発 し 、動 物 用 医 薬 品 メ ー
カ ー を 通 じ て 動 物 用 管 理 医 療 機 器 と し て 承 認 を 取 得 し た 。国 内 で は 唯 一 、前
胃 液 pH の 連 続 測 定 が 可 能 な 機 器 (薬 機 法 上 の 分 類 は そ の 他 内 臓 検 査 器 具 )と
し て 効 能 が 認 め ら れ た も の で あ る 。 無 線 伝 送 式 pH セ ン サ ー は 、 乳 用 牛 、 肉
用 牛 の 前 胃 液 pH の 詳 細 な 日 内 変 動 を 捉 え る こ と を 可 能 と し 、飼 料 の 違 い に
よ る 前 胃 液 pH 挙 動 へ の 影 響 や 関 連 性 に つ い て 新 た な 知 見 を 提 示 し た 。
ま た 、 AMS を 用 い た 飼 養 体 系 下 の 実 証 試 験 で は 配 合 飼 料 給 与 よ り も PMR
給 与 の ほ う が 前 胃 液 pH の 挙 動 に 与 え る 影 響 が 大 き い こ と を 明 ら か に し 、配
合飼料中のでんぷん濃度と生産性との関係についても新しい知見を示した。
こ れ ら の 知 見 は 、本 研 究 に お い て 開 発 し た 無 線 伝 送 式 pH セ ン サ ー の 活 用
に よ っ て 示 さ れ た も の で あ り 、学 術 的 新 規 性 の み な ら ず 、飼 料 設 計 や 日 常 的
な飼養管理においても活用可能である。
既に動物用管理医療機器として本研究の成果を応用した製品の上市が開
始 さ れ て お り 、今 後 、一 般 農 場 や 研 究 現 場 へ の 普 及 が 進 ん で 多 く の 知 見 が 蓄
積 さ れ る こ と に よ り 、酪 農 飼 養 管 理 技 術 の 高 度 化 と 精 度 の 向 上 が 図 ら れ 、酪
農産業の経営改善に寄与する成果となる。 ...

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