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大学・研究所にある論文を検索できる 「Impact of maternal odontogenic infection of Porphyromonas gingivalis on brain of mouse offspring」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Impact of maternal odontogenic infection of Porphyromonas gingivalis on brain of mouse offspring

石田 えり 広島大学

2022.03.23

概要

歯周炎は世界で最も罹患率の高い感染症で,歯周炎妊婦の早産率は健常妊婦より7倍高いとされる。早産児は脳の発達が未熟で,認知機能障害を伴い,後に自閉スペクトラム症や注意欠如多動症などの神経発達障害を合併することが知られている。早産の主な原因の1つは子宮内感染/炎症である。子宮内感染/炎症に暴露された胎児は脳神経障害をもつ危険性が2〜5倍高いとされる。これまでに,歯周病原細菌Porphyromonas gingivalis(P.g.)歯性感染妊娠マウスモデルを用い,P.g.感染胎盤で炎症細胞の増加と早産関連物質の産生上昇が起こり,早産が発症することが明らかにされている。その際,感染胎盤ではP.g.免疫局在が母体側の血管やトロフォブラストばかりでなく,胎児側の血管にも観察され,P.g.が胎盤を介して胎児に移行する可能性が示唆された。そこで本研究では,このマウスモデルを用い,母体のP.g.歯性感染が仔の行動や脳組織に与える影響について明らかにすることを目的とした。さらに近年,P.g.とその病原因子であるジンジパインがアルツハイマー病(AD)患者の脳内で検出され,認知機能に悪影響を及ぼすという報告がなされ,AD患者を対象にしたジンジパイン阻害薬投与の臨床治験も行われていることから,ジンジパイン阻害薬(GIX)がP.g.歯性感染による仔の行動や脳組織の異常に対する改善効果についても検討した。

実験1 母体のP.g.歯性感染が仔の行動/脳組織に与える影響
P.g.(108CFU)を5週齢雌性C57BL/6Jマウスの上顎両側第一臼歯歯髄から感染させ6週後,交配を開始し,産まれた仔マウスをP.g.群とし,非感染マウスから産まれた仔マウスを対照群とした。生後44,45日目に受動的回避試験を実施後,脳組織を回収した。脳のPLP固定パラフイン標本を作製し,Nissl染色および免疫組織化学染色にて組織学的評価を行った。なお,解析には在胎期間の脳発達への影響を排除するため,在胎日数20日程度の仔マウスを使用した。仔マウスの脳重量および体重に有意な差は認めなかった。
受動的回避試験の結果よりP.g.群では明室に留まる時間が有意に短く(p<0.05),恐怖体験の記憶異常が認められた。免疫組織化学的にP.g.群の脳内に.の免疫局在を確認した。P.g.群では海馬における錐体細胞数が有意に減少し,特にCA3領域では萎縮変性を示す錐体細胞が増加するとともに,細胞間には太く長い突起を有する活性化グリア繊維性酸性タンパク質(GFAP)陽性アストロサイトが侵入し,GFAP陽性面積が有意に増加した。また,記憶の形成に重要とされる転写因子,cAMP応答配列結合タンパク質(CREB)陽性細胞数はP.g.群で減少傾向を示し,CA3領域で有意に減少した。一方,群の大脳皮質では,イオン化カルシウム結合アダプター分子1(Ibal)陽性ミクログリアが有意に増加し,突起の短いマクロファージ様ミクログリアが多く観察された。
 以上P.g.歯性感染母親マウスから産まれた仔マウスはP.g.が脳に侵入し,海馬では錐体細胞が減少し,CREB発現細胞が減少する一方で,大脳皮質では軽微な神経炎症が起こることで認知機能が低下する可能性が示唆された。

実験2 GIXがP.g.歯性感染誘導性早産および仔の行動/脳組織に与える影響
 対照群,P.g.群およびGIXを投与したP.g.+GIX群の3群を作成した。P.g.感染から3週後より,対照群およびP.g.群の母親マウスにはPBS, P.g.+GIX群にはGIX(20mg/kg/day)を出産するまで毎日皮下注射にて投与した。実験1と同様に生後44,45日目で仔マウスの評価を行った。
 各群の在胎日数の平均は,対照群19.8日,P.g.群19.1日,P.g.+GIX群20.4日であり,GIX投与は.歯性感染による早産を有意に改善した。P.g.+GIX群の根尖部にはP.g.の供給源となる歯根肉芽腫が残存しており,原病巣の根治はGIX投与のみでは不十分であった。受動的回避試験では,P.g.群は明室に留まる時間が有意に短く,恐怖体験記憶に対する異常を認めたが,P.g.+GIX群で対照群と同程度まで改善された。免疫組織化学的にP.g.+GIX群の脳内にP.g.局在はほとんどみられなかった。また,P.g.群の海馬,特にCA3領域で錐体細胞数が有意に減少し,萎縮変性を示す錐体細胞が確認されたが,P.g.+GIX群でこれらの変化は軽減した。さらに,GIX投与はP.g.群でみられたGFAP陽性アストロサイト面積の増加傾向を対照群と同程度に減少させた。また,P.g.+GIX群はP.g.群のCA3領域で見られたCREB陽性細胞数の減少には影響しなかった。GIXによる影響が傾向に留まったのは,妊娠期間中毎日行った皮下注射のストレスが影響する可能性が考えられる。一方,大脳皮質においてP.g.群でIbal陽性ミクログリアが有意に多くなったが,P.g.+GIX群は対照群と同程度まで減少した。
 以上の結果から,母親マウスのP.g.歯性感染により仔マウスの脳にが侵入し,認知機能の低下を引き起こすことが明らかとなった。さらに,P.g.の病原因子の一つであるジンジパインがP.g.歯性感染誘導性早産や仔の脳神経障害に関わる主要な因子の一つであることが示唆された。

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