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大学・研究所にある論文を検索できる 「濃縮バイオ液肥の社会的受容に関する研究 : 消費者の農産物評価と生産者の利用意向」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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濃縮バイオ液肥の社会的受容に関する研究 : 消費者の農産物評価と生産者の利用意向

吴, 臻 WU, ZHEN ゴ, シン 九州大学

2022.09.22

概要

食品残渣等の有機性廃棄物を原料にメタン発酵処理した消化液は,農業生産の場で古くから肥料として活用されている。しかしながら,従来の消化液は一般化学肥料に比べ,①保管スペースの確保など維持管理が大変であること,②運搬・散布コストが割高であること,③臭気問題等の問題点を持っており,北海道等の一部地域で積極的に活用されているのを除き,全国的には高コストで浄化処理している地域が多いのが現状である。これらの問題点を技術的に解決するため,濃縮バイオ液肥(Bio-CLF:Bio-Concentrated Fertilizer)が開発された。この革新肥料の普及に伴い,有機性廃棄物の有効活用や環境配慮型の地域循環農業が推進されるだけでなく,有機性廃棄物の処理コスト削減にも貢献できると考えられる。しかしながら,如何に革新した肥料だとしても,Bio-CLFで生産された農産物を消費者が受容(購入)しなければ,農家はBio-CLFを一般化学肥料の代替品として利用することはないため,Bio-CLFで生産した農産物に対する消費者評価と農家のBio-CLF利用意向調査を行うことが重要である。

そこで,本博士論文では,まず,Bio-CLF関する情報を明示したうえで,消費者にBio-CLFで栽培したBio-CLF栽培米を提示し,選択実験(潜在クラスモデル)による消費者選好分析を行った。その結果,消費者の過去の有機米・特別栽培米の購入行動,有機肥料原材料に関する知識,革新技術への評価等の個人属性の差によって,Bio-CLF栽培米への評価も異なることが明らかにされた。564人の分析対象の中,31.6%の回答者がBio-CLF栽培米に対して,プラスの評価を与え,購買意欲があることを示した。

次に,Bio-CLF栽培米に対して低評価を与えた回答者を抽出し,回答者の中に内在する潜在変数(①消費者の自然志向,②Bio-CLF農産物に対するイメージ,③Bio-CLF農産物の購入難易度,④リスク)を因子分析から導出した。加えて,構造方程式モデリングを用いて上記4つの潜在変数とBio-CLF栽培米に対する抵抗感の関係性を分析した結果,消費者の中に内在するリスクが,Bio-CLF栽培米に対する抵抗感を生む主な要因であることを明らかにした。

さらに,Bio-CLF栽培米に対する消費者評価も地域差があると考え,大消費地である東京都と大阪府,Bio-CLF栽培米の生産地かつ消費地としての特性を持つ福岡県を対象に消費者評価を行った。その結果,東京の消費者と比べると,大阪の消費者は食品残渣,酒醸廃液,廃棄牛乳などを原材料としたBio-CLF栽培米であれば評価が高く,福岡の消費者は評価が低いことを明らかにした。一方で,福岡の消費者の(有機米・特別栽培米)購入経験の差によって,食品残渣と廃棄牛乳を原材料としたBio-CLF栽培米の評価にも影響を与えることを明らかにした。

最後に,Bio-CLFが一般化学肥料の代替品として普及することが可能であるかを検証するため,インターネット調査会社を通じて全国の農業従事者を対象に,Bio-CLFの利用意向調査を行った。調査を通じて得たデータを元にロジスティック分析を行った結果,①液肥利用歴のある農家,②SDGsに関する知識を持っている農家,③露地野菜農家,④大規模稲作農家,⑤大規模施設野菜農家,⑥高収入施設野菜農家であるほどBio-CLFの利用意向が高いことを明らかにした。

以上のことから,本博士論文では,一般化学肥料の代替財としての可能性を秘めているBio-CLFの社会的受容について,消費者と生産者の両面から定量分析を行い,Bio-CLFの普及・利用拡大につながる要因ないしは利用促進を阻害する抵抗要因を明らかにしてきた。本研究の成果は,今後SDGsに準拠した農業生産活動が求められる中で,国際的な需要が望まれるが新技術ゆえに消費者・利用者に認知されにくいBio-CLFの販売戦略に有益な示唆を与えるものでる。

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