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大学・研究所にある論文を検索できる 「Micro RNA-10a in pancreatic juice revealed to be a malignant marker for intraductal papillary mucinous neoplasms」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Micro RNA-10a in pancreatic juice revealed to be a malignant marker for intraductal papillary mucinous neoplasms

倉富 夏彦 山梨大学

2021.03.23

概要

(研究の目的)
膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)は膵管内で乳頭状に増殖し粘液を産生する腫瘍で、膵嚢胞性疾患の中で最も頻度が高い。近年、画像診断技術の向上によって偶然に発見されるIPMNが増加している。また IPMNは前癌病変として知られ、病理学的に腺腫であるLow-grade dysplasia(LGD)、上皮内癌である High-grade dysplasia(HGD)、浸潤癌であるIPMN with an associated invasive carcinoma(INV)と様々な悪性度を呈する。多くのIPMNは経過観察されるが、INVでリンパ節転移や遠隔転移を伴う場合は、通常の膵癌と同様に予後が悪いため、唯一の根治術である外科切除の治療時期を逸しないように注意する必要がある。現在の診療ではCT、MRI、超音波内視鏡などによる画像評価を主軸とした国際診療コンセンサスガイドラインに基づいて悪性IPMNのリスク評価を行っており、大規模な検証では感度90%以上、特異度30%未満と報告されている。低リスクと評価された症例の中に10%ほど悪性IPMNが存在し、また反対に、高リスクと評価された中に非悪性IPMNに対して膵切除という侵襲の大きな手術を行っていることが少なくなく、より適切なリスク評価を行うための新たな要素の同定は喫緊の課題である。 Micro RNAはmessenger RNAに作用してタンパク合成を調整している20塩基前後のnon-coding RNAであるが、種々の癌において特定のmicro RNAが高発現していることが知られ、短い塩基配列により生体内で比較的安定して存在するためバイオマーカーとして期待されている。今回私は、次世代シークエンサーによる網羅的な手法で、同一症例の腫瘍部と正常部をペアサンプルとすることで、安定したmicro RNA発現量の解析を行い、さらに腫瘍に最も近い体液である膵液を用いて検証することで、悪性IPMNの新規バイオマーカーの同定を目指した。

(方法)
外科切除を行い病理診断のされたIPMN40症例を対象として、切除組織のFFPE検体および術前の内視鏡検査時に採取した膵液を用いた。第一段階として、組織検体のIPMN腫瘍部と同一症例の正常膵腺房部から、それぞれ19サンプルをLaser capture microdissectionで切り出し、RNAを抽出し、次世代シークエンサーでmicro RNA sequencingを行った。Micro RNA発現量をサンプル間で比較検討するため、始めにシークエンスリードの正規化を行い、次に腫瘍部と同一症例の正常部の比を用いて解析している。

正規化は各サンプルにおいて、個々のmicro RNAのリード数を、総リード数で割ったパーセンテージを発現量としている。IPMNにおける各micro RNA発現量の検討および悪性IPMNに特徴的なmicro RNAの同定を行った。第二段階として、膵液18サンプルを用いて、RNA抽出、micro RNA sequencingを行い、組織検体の解析結果と比較検討を行った。

(結果)
2792種のmicro RNAに関してシークエンスを行い、解析可能な194種のmicro RNAについて、IPMNの腫瘍部と正常部とで比較をした。結果、腫瘍部で発現上昇している20種のmicro RNAおよび発現低下している17種のmicro RNAを同定した。さらにIPMNの悪性度別で比較を行い、LGDで発現が変化している11種(9種で発現上昇、2種で発現低下)、HGDで36種(19種で発現上昇、17種で発現低下)、INVで41種(15種で発現上昇、26種で発現低下)のmicro RNAを同定した。続けてこれら69種のmicro RNA(重複あり)に関して、3つの悪性度間で発現の差を解析した。LGDおよびHGDに対してINVで高発現したmiR-10a-5pとmiR-221-3p、低発現したmiR-148a-3pを見出した。次に膵液サンプルで行った解析では、LGDとHGDに対してINVで高発現した5種のmicro RNAを同定し、そのうちmiR-10a-5pが膵液においても再現されていた。

(考察)
今回同定された3種のmicro RNAは、膵癌を含む種々の癌で発現が変化していることが多数報告されている。しかしIPMNにおいてはmicro RNA自体の研究報告がまだ少なく、特にmiR-10aに関してはバイオマーカーとしての初めての報告となる。Micro RNAのバイオマーカー研究は報告によって結果が違うことがあり、その臨床上の有用性が確固たるものになっていない。その原因にはmicro RNAの発現自体に個人差があることや、解析の際、特定の内因性コントロールが確立されていないことが挙げられる。本研究においては、同一症例の腫瘍部と正常部をペアにして解析を行い、また網羅的なmicro RNA sequencingの結果から正規化を行っているため特定の内因性コントロールを設定する必要がないというメリットがある。MiR-10aは浸潤や転移など、より悪性度の高い病態で見出される報告が複数あり、今回の結果と合致する。PTENなど癌抑制遺伝子に抑制的に作用し腫瘍促進に働く“oncomir”と考えられており、だからこそ組織と膵液のいずれからも同定することが出来た確かなバイオマーカーであると考えている。悪性IPMNを術前に正しくリスク評価するための有用なツールになる可能性を示唆しており、今後は多数のサンプルを用いて、臨床情報を加えた検証を行い、現状のガイドラインがより良くなることを期待したい。

(結論)
IPMNにおいて浸潤癌で発現が変化している3種のmicro RNA(miR-10a, miR-221, miR-148a)を同定した。そのうちmiR-10aは膵液中にあっても高発現しており、悪性IPMNの新たなバイオマーカーになり得ると考えられた。

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