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Analyses for histopathology and PHF24-expression of Noda epileptic rat (NER)

沼倉 佑樹 大阪府立大学 DOI:info:doi/10.24729/00017862

2022.12.06

概要

Noda epileptic rat(NER)は、Crj: Wistar系コロニーにて見出された自然発症性の強直-間代性のてんかん発作を特徴とする遺伝性てんかんモデルラットである。てんかん発作は8週齢から発現し、その後おおよそ30時間おきにてんかん発作を引き起こすことが知られている。てんかん発作中の大脳皮質および海馬の脳波はヒトのてんかん時の脳波と類似しており、側脳性てんかんモデルとして分類されている。NERにおける脳の過興奮はGABA作動性神経の異常な活動により引き起こされている可能性が示唆されており、海馬のCA3領域の錐体細胞の過興奮はCa2+チャネルの機能不全と関連があることが報告されている。しかしながら、NERのてんかん発生の詳細なメカニズムはいまだ明らかとなっていない。複数の遺伝子がNERのてんかん発生に寄与していることが報告されている。中でもPHDfingerprotein24(Phf24)として知られる遺伝子の関与が高いことが報告されており、Phf24の発現低下がNERのてんかん発生に関係している可能性が報告されている。Phf24は末梢のGABABシグナルの重要な調節因子であることが知られているが、その詳細な機能については不明な点が多い。本研究では、NERのてんかん発生を明らかにすることを目的とし、NERの病理組織学的解析を実施した。NERの候補原因遺伝子であるPhf24の正常動物における蛋白発現を検討し、Phf24の特徴を踏まえた病理組織学的解析をNERにおいて行った。

第1章NERの病理組織学的特徴
第1節NERの脳の組織学的特徴
HE染色により、NERの大脳皮質、海馬ならびに扁桃体を評価した結果、大脳皮質において、小型の錐体細胞が見られた。その他の領域には、明らかな組織学的異常は見られなかった。

第2節NERの脳における各種免疫組織化学NERの脳においてIba-1(ミクログリア)、OLIG-2(オリゴデンドロサイト)およびGFAP(アストロサイト)に対する免疫組織化学を実施した結果、NERにおいて変化は見られなかった。また、増殖活性マーカーであるKi67、未熟な神経細胞マーカーであるTbr2、NestinおよびDCXに対する免疫組織化学を行った結果、NERにおいて変化はなかった。てんかん患者ならびにてんかんモデルラットでは海馬における苔状線維の異常発芽が生じることが知られているため、苔状線維マーカーであるmZnT3に対する免疫組織化学を行ったが、NERにおいて変化はなかった。

第3節NERの海馬におけるTimm染色苔状線維の異常発芽のさらなる評価を目的として、苔状線維が染色されるTimm染色を行ったが、NERの海馬CA3領域および歯状回において異常な線維は見られなかった。以上より、NERは大脳皮質の小型の錐体細胞を除き、明らかな形態学的異常を示さなかった。また、NERにおいててんかん発作による2次的な神経新生が顕著でなく、てんかん患者や他のてんかんモデルラットで知られている海馬における苔状線維の異常発芽や異所性の顆粒細胞も見られなかった。これらの結果は、NERの重要な病理組織学的な特徴であると考えられた。

第2章正常ラットの中枢神経におけるPHF24発現
第1節正常ラットおよびNERの中枢神経におけるPHF24発現NERはPhf24の第2イントロンに内在性レトロウイルス配列の挿入が認められている。Phf24の正常ラットの中枢神経における発現分布は知られていないため、NERの野生型ラットの中枢神経を対象にPHF24に対する免疫組織化学を実施した。加えて、NERの同部位に対するPHF24の免疫組織化学により配列挿入による蛋白発現への影響を評価した。PHF24に対する免疫組織化学を野生型ラットの中枢神経において実施した結果、嗅球、大脳皮質、延髄および脊髄等において発現が見られた。大脳皮質においては、神経網におけるびまん性の発現と特定の神経細胞の細胞質における発現が見られた。嗅球では傍糸球体細胞で発現が見られ、脊髄においては背角の第II層に限局した発現が見られた。ホモ型NERにおいてはこれらの発現は見られなかった。

第2節大脳皮質におけるPHF24の発現
大脳皮質で認められたびまん性のPHF24発現の詳細を検討するために、シナプス前終末マーカーであるsynaptophysinとの二重免疫組織化学を実施した。PHF24ならびにSynaptophysinは顆粒状の陽性像を示し、一部で共発現が見られたが、共発現しない領域が多く見られた。

第3節嗅球および脊髄におけるPHF24陽性細胞
嗅球ならびに脊髄におけるPHF24陽性神経の性質を明らかにするために、各種神経細胞マーカーとPHF24の二重蛍光免疫組織化学を行った。脊髄および嗅球において、PHF24は抑制性介在神経マーカーであるcalbindinおよびcalretininとの共発現を示した。一方で、PHF24またはこれらの抑制性神経細胞マーカーのどちらかのみを発現する細胞も見られた。嗅球ではPHF24はdopamine作動性神経マーカーであるtyrosine hydroxylase(TH)とほとんど共発現しなかった。

第4節PHF24の免疫電顕
PHF24に対する免疫電顕の結果、嗅球ならびに脊髄の神経網において、シナプス前および後終末におけるPHF24発現が確認された。特に嗅球においては、傍糸球体細胞の細胞質における発現が見られ、特定の細胞小器官における局在は見られなかった。

第5節嗅球および脊髄における抑制性介在神経数
PHF24は抑制性の介在神経に発現している可能性が明らかとなったため、NER、Phf24-nullラットならびに対照群の中枢神経における抑制性介在神経の数を評価した。NERおよびPhf24-nullラットにおいて、嗅球におけるcalbindin陽性細胞数が増加する傾向が見られた。

以上より、NERの候補原因遺伝子産物であるPHF24蛋白質は正常動物において、嗅球、大脳皮質、脊髄を始めとする複数の領域において発現する一方で、ホモ型NERでは発現が見られないことが明らかとなった。PHF24の発現パターンは、シナプス終末における発現を反映すると考えられる神経網のびまん性の発現と神経細胞の細胞質における発現に大別された。特に、嗅球ならびに脊髄において、PHF24は抑制性の介在神経に発現していることが明らかとなった。

第3章Phf24に着目したNERの病理組織学的な検討
第1節NERの大脳皮質における神経数
第1章において、NERの大脳皮質では、小型の錐体細胞が見られたため、大脳皮質の神経数を詳細に検討した。大脳皮質におけるNeu-N陽性細胞をカウントした結果、NERにおいて神経数が有意に減少していた。特に細胞面積が80-140μm2の神経細胞が減少しており、これらの細胞は大脳皮質II/IIIからIV層おいて主に存在していた。また、calbindin陽性細胞数がNERにおいて有意に増加していた。calbindinの発現は、介在神経および錐体細胞の細胞質に見られた。

第2節NERの中枢神経におけるシナプスマーカー発現
第2章において、Phf24の蛋白発現はシナプス終末に見られたことから、NERの中枢神経におけるシナプスマーカーの発現量を検討した。シナプス後終末マーカーであるPSD-95の陽性像は神経網におけるびまん性の発現と、神経細胞の細胞質内の顆粒状の強い発現に大別された。PSD95の染色強度は、NERの大脳皮質および扁桃体において減少傾向を示した。また、細胞質内の顆粒状の発現の発現強度に着目したところ、同様にNERにおいて減少傾向が見られた。

第3節NERの中枢神経におけるperineuronal nets
第2節より、NERではシナプス数の減少が示唆された。従って、シナプスの可塑性や恒常性維持に重要なperineuronal netsに着目し検討を行った。中枢神経におけるperineuronal netsマーカーであるWisteria floribunda Agglutinin (WFA)を用いてレクチン染色を行った。NERの大脳皮質、海馬CA3領域および扁桃体においてWFAに染色されるperineuronal netsの減少が見られた。

第4節NERの錐体神経のGolgi染色
最後にNERの大脳皮質の錐体細胞の詳細な形態をGolgi染色によって観察した。NERの大脳皮質第V層において、しばしば樹状突起上のシナプス後終末を形成する棘状の構造であるスパインが乏しい錐体細胞が観察された。

以上より、NERでは大脳皮質において神経細胞数が減少していることに加え、中枢神経においてシナプス数ならびにperineuronal netsが減少していることが示唆された。perineuronal netsの減少はシナプスの恒常性を破綻させることでてんかんを引き起こすことが、薬剤誘導性のてんかんモデル動物ならびにヒトで知られているため、NERにおけるてんかん発生に同様のメカニズムが関与している可能性が示唆された。また、これまでに遺伝性てんかんモデル動物において、perineuronal netsの異常が報告されたことはなく、本研究が初めての報告となる。

総括
本研究では、自然発生性の遺伝性てんかんモデルラットであるNERのてんかん発生メカニズムを明らかとするため、詳細な病理組織学的解析と、特に候補原因遺伝子であるPhf24の特徴に着目した解析を実施し、以下の結果を得た。

PHF24
・PHF24は中枢神経に広くに発現し、神経細胞質ならびに神経網においてびまん性に発現が見られた。一方でホモ型NERではこれらの発現が見られなかった。神経網のPHF24の発現はシナプス終末に一致していた。さらにPHF24は嗅球の傍糸球体細胞層、脊髄の背角第II層の抑制性介在神経に発現が見られた。

NER
・苔状線維の異常発芽や異所性の顆粒細胞を認めず、大脳皮質で小型の錐体細胞が見られた。
・大脳皮質第II/IIIからIV層にかけて、神経細胞数が減少し、calbindin陽性細胞は増加した。
・大脳皮質および扁桃体でシナプス終末マーカーであるPSD-95の発現が減少傾向にあった。
・海馬CA3領域、扁桃体および大脳皮質でWFAにより染色されるperineuronal netが減少した。
・大脳皮質の第V層において、スパインが少ない錐体細胞が観察された。

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