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大学・研究所にある論文を検索できる 「Molecular mechanism underlying the termination of the innate immune STING signalling」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Molecular mechanism underlying the termination of the innate immune STING signalling

Kuchitsu Yoshihiko 東北大学

2022.03.25

概要

【背景・目的】
図 1:本研究の着目点
「自然免疫」は、生まれながらにして我々の体に備わっている“異物”に対する応答機構である。小胞体に局在する膜タンパク質 STING は、ウイルスの感染などによって細胞内に出現した DNA に応答して、自然免疫応答を活性化する分子として同定された。STING は感染防御に重要である一方で、STING の恒常的な活性化は自己炎症性疾患などの難治性疾患を引き起こすことが相次いで報告され、STING の活性化制御機構に注目が集まっている(Kuchitsu et al., JSIAD J 2021)。STING は、細胞質 DNA の出現に応答して小胞体からゴルジ体へと速やかに局在を変え、自然免疫反応を活性化する。その後、STINGは最終的に細胞内分解の中心的な役割を果たす「リソソーム」と呼ばれる細胞小器官へと運搬され分解を受け、自然免疫反応は収束する。しかしながら、分泌経路にのっている STING が、どのようにリソソームに到達するのか、その分子メカニズムは不明であった。本研究では、超解像度顕微鏡・電子顕微鏡観察、STING 分解を指標にした遺伝子スクリーニングなどを駆使し、 STING のリソソーム分解を制御する分子機構の解明を行なった(図 1)。

【方法・結果】
図 2:STING の超解像ライブイメージング観察
図 3:STING のCLEM 法による観察
図 4 STING の分解を制御する vps 遺伝子の探索結果
I) リソソームによる STING の内包化・分解現象哺乳類におけるリソソームは約 500 nm の直径をもつ細胞小器官、一方、STING 膜は、リ ソソームよりも小さい構造体である。加えて、リソソーム、STING 膜ともに細胞内を活発に 動いているため、両者を正確にイメージング するためには、高速(0.2 秒以下/フレーム)かつ超高解像(x-y 分解能 200 nm 以下)の ライブイメージング技術が必須であった。超 解像度ライブセルイメージングにより、 STING とリソソームを観察すると、STING がリソソームに接近した後、約 30 秒で STING がリソソーム内に直接取り込まれ、約 80 秒で分解される現象を捉えた(図 2)。さらにこの内包化・分解機構を詳細に解析するためには、電子顕微鏡技術による観察が必須と考え、CLEM 法 (Correlative Light & Electron Microscopy:光-電子相関顕微鏡法)による観察を実施した。CLEM 法による観察の結果、直径 100nm 程度の STING 膜小胞が複数まとまってリソソーム内に取り込まれていくことがわかった(図 3)。以上の結果から、隔離膜を必要とするマクロオートファジーのメカニズムとは異なり、STING 膜がリソソームに直接取り込まれ、次いで分解を受けることが明らかになった。
II) ESCRT 複合体による内包化プロセスの制御リソソームが分解基質を直接内包化し、分解する現象はミクロオートファジーと呼ばれ、1960年代に電子顕微鏡による観察によってその存在が示唆されているが、哺乳類におけるその現象の実態は不明なままである。そこで、STING のミクロオートファジー分解を制御する分子メカニズムの同定を試みた。細胞質 DNA の出現に応答して、STING は、「小胞体→ゴルジ体→リサイクリングエンドソーム→リソソーム」と運搬され、最終的にリソソームで分解される。そこで、酵母において、「ゴルジ体→リソソーム」という輸送経路を制御する約 70 種類の vps 遺伝子(vacuolar protein sorting)に着目した。哺乳類に保存される約 80 種類の vps 遺伝子の発現抑 制スクリーニングを行い、STING のミクロオートファジー分解を制御する遺伝子の同定を行った。その結果、オルガネラ膜の変形に関与することが知られている ESCRT(endosomal sorting complexes required for transport)複合体によって、STING のミクロオートファジー分解(リ ソソームへの内包化プロセス)が制御されることが明らかになった。さらに、ESCRT 複合体の欠 損により、内包化プロセスを阻害すると、STING による自然免疫応答が顕著に増強されることが わかった。この結果から、ESCRT 複合体による STNG のリソソームへの内包化が STING 自然免 疫シグナルの収束に必要であることが明らかになった。

【結論・考察】
本研究において、STING がリソソームへ運搬されて分解される過程を詳細に観察した結果、直径 100 nm 程度の複数の STING 陽性小胞がまとまってリソソームによって直接内包化され、分解されていく現象(ミクロオートファジー)を明らかにすることができた。さらに本現象を制御する因子として ESCRT 複合体を同定し、このプロセスが炎症応答の収束に必要であることを示した。本研究により、哺乳細胞におけるリソソームミクロオートファジーの存在とその生理学的重要性がはじめて明らかになった。今後は、STING 以外の分解基質を同定することで、リソソームミクロオートファジーの細胞内分子代謝における重要性を明らかにしていきたい。

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