リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「Phase Separation Behavior of Aqueous Solutions of Thermoresponsive Polymers」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

Phase Separation Behavior of Aqueous Solutions of Thermoresponsive Polymers

韓, 佳運 大阪大学

2022.03.24

概要

【緒言】
 ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)は、最もよく研究されている感熱応答性高分子の代表例で、その水溶液やヒドロゲルは様々なスマートマテリアル、生体医療材料などへの応用が期待されている。このPNIPAM水溶液は、約30℃以上に昇温すると相分離して白濁するが巨視的な相分離は起こさず、昇温時と降温時で濁度に温度履歴が観察され、通常の高分子溶液とは異なる相分離挙動がこれまでに多数報告されている。同水溶液・ヒドロゲルを様々な分野で応用する際に、その相分離挙動を理解しておくことは重要である。そこで本研究では、高温で相分離しているPNIPAM水溶液中で希薄相と共存している濃厚相コロイド液滴の分散状態を小角X線散乱法(SAXS)および静的・動的光散乱法(SLS・DLS)により特性化し、その相分離挙動の特異性について調査した。
 さらに、PNIPAMの構造異性体であるポリ(2-n-プロピル-2-オキサゾリン)(PnPOx)は、最近その水溶液が示差走査熱量測定でPNIPAM水溶液と同様の鋭い吸熱ピークを示し、また水-メタノール混合系ではPNIPAMと同様の共貧溶媒効果を持っていることが報告された。これらの結果は、水溶液中でのPnPOxの脱水和挙動がPNIPAMと非常に似ていることを示唆している。しかしながら、Figure 1 に示すようにPnPOxの水溶液では巨視的な二相分離が観察され、2つの水溶液の液―液相分離挙動は非常に異なっている。従って、本研究では、PnPOx水溶液に対し同様のSAXSおよび光散乱実験を行い、その結果をPNIPAM水溶液の相分離現象と比較し、コロイド濃厚相液滴の分散状態の相違を調べた。

【実験】
 AIBNを開始剤としてラジカル重合された市販のPNIPAM試料(Mw =124,000)、およびWinnikらがメチルトリフラートを開始剤としてカチオン開環重合で得たPnPOx試料(Mw =18,900)を測定に用いた。両試料を、それぞれ室温および7℃で純水に溶解して濃度が0.1~2 wt%の測定溶液を調製し、温度ジャンプあるいは温度スキャンさせながらSPring-8のBL40B2ビームライン(λ =0.1nm)にてSAXS測定を行った。さらに、SAXS測定と同濃度の水溶液を温度ジャンプさせたのち、温度を一定に保ったまま水で0.005 wt%程度まで希釈してSLS・DLS測定を行った。また、0.003~2.5 wt%測定溶液を幅広く温度範囲でSLS・DLS測定を行った。PnPOx水溶液については、光学顕微鏡観察、濁度観察、および相分離実験により相図を作成した。

【結果と考察】
 PNIPAM水溶液中で形成された濃厚相液滴の平均サイズは、温度スキャン実験では昇温とともに増加したが、35℃以上ではほぼ一定値を保った。他方、35℃以上への温度ジャンプ実験では、濃厚相液滴の平均サイズは温度の減少関数となった。これは、昇温したPNIPAM水溶液中で生じた濃厚相液滴は35℃付近以上で成長が止まり、より高温に温度ジャンプすると成長できる時間がより短くなり、平均サイズが小さい値にとどまったと考えられる。
 また、Figure 2に示すように、同じ昇温条件で得たPNIPAM水溶液に対する広い散乱波数領域のSAXSとSLSの散乱関数を、濃厚相液滴(多分散球)と単一鎖成分が共存するモデル散乱関数でフィットし、濃厚相液滴の重量平均モル質量・モル質量分布、および内部濃度を決定した。得られた内部濃度は約0.8 g/cm3で、Afrozeらが濁度及び熱測定により決定した相図と矛盾しない結果となった(Figure 3参照)。Afrozeらは、高分子溶液に対するFlory-Huggins理論の中の相互作用パラメータに適当な濃度・温度依存性を導入し、PNIPAM水溶液に対する相図を再現したが(Figure 3中の青の実線)、本研究において散乱実験より得た相図の結果も、彼らの計算した理論相図と一致した。PnPOxについては、温度上昇に伴い、水溶液中で分子鎖は収縮し、PNIPAMと同様に水が貧溶媒になるが、水中でのPnPOxのθ温度は約17°Cであり、PNIPAMのそれ(約30°C)よりもかなり低い。PnPOx水溶液の相分離領域での光散乱の結果は、濃厚相の液滴の沈降に起因する時間依存性を示し、液滴の平均サイズは同じ濃度のPNIPAM水溶液中での濃厚相液滴より大きく、最終的には巨視的相分離が達成される。ただし、相分離したPnPOx水溶液中での濃厚相液滴が大きくなりすぎるため、SAXSとSLSの結果を組み合わせた散乱関数からは濃厚相液滴の内部濃度を決定することはできなかった。
 光学顕微鏡観察、濁度観察、および相分離実験により作成したPnPOx水溶液の相図を、PNIPAM水溶液の結果とともにFigure 3に示す。データ点は多少ばらついているが、臨界点付近では平坦で、高温になると急激に立ち上がったPNIPAM水溶液の相境界曲線と似ている。
 Afrozeらと同様に、相互作用パラメータに適当な濃度・温度依存性を導入してFlory-Huggins理論よりPnPOx水溶液に対する相境界曲線を計算し、Figure 3中の赤の曲線を得た。この曲線は実験結果をほぼ再現している。通常の非極性高分子+有機貧溶媒系の相図と比較して、臨界点がかなり高濃度側にあり、臨界点付近の相境界曲線が非常に平坦であり、本研究で扱った二種類の感熱応答性高分子の水溶液系は、Type IIに分類される相図を持つことが判明した。
 最後に、PNIPAM水溶液が二相領域においても巨視的相分離を起こさない原因を考察した。一般に、希薄溶液中での液-液相分離により形成された濃厚相液滴の成長は、液滴の合一とOstwald熟成過程により進行する。前者の合一過程は、研究したPNIPAMとPnPOxの両水溶液とも高温で濃厚相濃度が高いため、液滴が弾性球のように振舞い、液滴が衝突しても融合しないことが判明した。後者のOstwald熟成過程では、液滴の成長速度は共存する希薄相の濃度に比例するが、PNIPAM水溶液の高温における希薄相濃度はFigure 3の青の実線で示したFlory-Huggins理論から非常に低濃度であることが示された。これに対して、同図の赤の実線で示したPnPOx水溶液における共存する希薄相濃度の温度依存性は、PNIPAM水溶液に比べると緩やかであり、高温でもPNIPAM水溶液ほど低濃度にはならず、液滴の成長速度もそれほど低下しない。この相違が、両水溶液の相分離挙動の違いに反映されていると結論付けた。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る