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大学・研究所にある論文を検索できる 「ダイズの開花・結莢制御機構に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ダイズの開花・結莢制御機構に関する研究

谷口, 琢紀 TANIGUCHI, Takatoshi タニグチ, タカトシ 九州大学

2022.03.23

概要

ダイズは食糧、油糧、飼糧として利用される世界的に非常に需要の高い穀類である。ダイズの収量は収量構成要素の内、莢数と最も密接に関係し、莢数は花数と結莢率によって決定される。そこで本研究は、ダイズの開花・結莢制御について詳細に調査した。

始めに、ダイズの莢数を決定する重要な要素の一つである結莢率に着目し、結莢率の異なる2品種を用いて、開花後の生育と結莢率の関係を調査した。結莢率の低い‘フクユタカ’では、 結莢率の高い‘カリユタカ’よりも開花後の植物生育速度(PGR)が有意に高く、この違いはジベレリン(GA)合成関連遺伝子の発現上昇に起因した。さらに、‘カリユタカ’に対して開花後に GA 処理を行ったところ、PGR は増加し、結莢率の減少が確認された。このことから。ダイズにおける結莢率は、GA合成を介した開花後の栄養成長によって制御されることが明らかとなった。

短日植物であるダイズの日長による開花制御機構は広く知られているが、結莢制御機構に関する知見は少ない。そこで、ダイズの日長と結莢の関係について調査した。その結果、開花後の短日処理によって結莢は促進され、短日処理期間と開花から結莢までの日数には負の相関が確認された。加えて、開花後の花の短日処理は結莢が促進されなかった一方、葉における短日処理は有意に結莢が促進された。さらに、茎の分岐点で維管束が接続していない Y 字個体における2本の茎の片側の葉における短日処理は、もう一方の個体での結莢を促進しなかった。以上のことから、ダイズにおける結莢シグナルは地下部を介さないことが示唆された。また、葉から茎頂への移動性を有し、ダイズの開花促進に関与する遺伝子である GmFT2a および GmFT5a は、短日処理、さらには結莢のタイミングでの発現上昇が見られたことから、開花後葉で合成される GmFTs は節へと移動し、量的に結莢を促進する可能性が考えられた。そこで、ダイズの結莢における GmFT2a および GmFT5a の役割を調査するため、栄養成長期から結莢期において両遺伝子の発現解析を葉位別に行ったところ、 GmFTs 遺伝子の発現レベルには葉位による大きな違いが確認された。また、シロイヌナズナにおける開花制御では、FT 遺伝子発現量の積算値、すなわち継時的な遺伝子発現の変化を考慮する必要性が示されていることから、GmFTs の時間・空間的な発現変化に着目し、ダイズの結莢との関連を調査した。その結果、葉位毎の開花から結莢までの GmFTs 遺伝子発現量の積算値はほぼ同量であったのに対し、播種期から開花期の GmFTs 遺伝子発現量の積算値は葉位によって大きく異なっていた。このことから、ダイズにおける結莢には GmFTs が関与しており、開花後の GmFTs 遺伝子発現量の積算値の同調によって、結莢タイミングが制御されている可能性が示唆された。

最後に、遺伝子発現が時間・空間的に変化することを考慮し、遺伝子の機能を新たな観点から考察する新規評価法である‘遺伝子発現量の時空間的解析法’を考案し、時空間的な GmFT2a および GmFT5a の発現と花・莢数および子実収量との関係について評価した。開花期までの個体あたりの GmFTs 積算値を品種毎に算出し、花数および開花日との関係を調査した結果、GmFT2a 積算値と開花時の花数には有意な正の相関がみられた一方、GmFT5a 積算値は品種の開花日に関わらず一定となる傾向がみられ、3 ヵ年の圃場試験において、GmFTs 積算値と開花形質には同様の相関関係が確認された。また、開花後の GmFTs 積算値は開花から結莢までの日数に比例して増加していたことから、結莢タイミングの制御といった早晩性への関与よりも、花・莢の形成に大きく関与することが考えられた。そこで、西南暖地で広く栽培されるダイズ3品種を用いて、GmFTs 積算値と収量性との関連を調査したところ、結莢期までの GmFT2a および GmFT5a の積算値は収量と最も密接な関係を持つ最終的な個体当たりの莢数と有意な正の相関を示した。以上のことから、開花期までは GmFT2a が花数、GmFT5a が開花タイミングをその積算値によって制御している一方、開花期から結莢期にかけては、両遺伝子ともに花・莢の形成に大きく関与している可能性が示唆された。また、 GmFTs 積算値の制御、特に開花期以降の GmFTs 積算値の上昇が、ダイズにおける莢数ひいては収量の増加をもたらす可能性が考えられた。

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