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大学・研究所にある論文を検索できる 「大規模なコホート調査・バイオバンク構築を行う研究における社会とのコミュニケーション」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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大規模なコホート調査・バイオバンク構築を行う研究における社会とのコミュニケーション

長神 風二 東北大学

2021.03.03

概要

本論文は、人を対象とした大規模な医学系プロジェクト、特にコホート調査・バイオバンク構築を行う研究を実施する際に発生する社会との接点をめぐる課題を抽出し、その解決について検討することを目的としている。東北大学が岩手医科大学の協力のもと東日本大震災の被害からの復興プロジェクトとして 2012 年から進められてきた東北メディカル・メガバンク計画での実践を主に扱った。ここで述べる社会とは、大学・プロジェクト外の多様な集団を指し、主に一般社会との接点を主題とする。東北メディカル・メガバンク計画の大きな特徴は、地域に在住する一般住民 15 万人を対象とする国内の医学系のプロジェクトとしては屈指の巨大な規模を持ち、人を対象とし、また、ゲノム情報や診療情報をはじめとした機微性の高いものを含む多様な情報を扱うことである。こうした特徴から、本プロジェクトへの参加を促す研究推進側から参加候補者である一般住民に向けての広報・コミュニケーションをはじめ、関係する多くのステークホルダーとの調整にかかるコミュニケーション活動、そして、多くの人々が納得してプロジェクトに参画してもらえるような倫理面の検討などが、社会との接点を構成する極めて重要な要素となる。本論文では、大規模な人対象のプロジェクトにおける社会との接点について、東北メディカル・メガバンク計画を例に、主に、広報活動と倫理面の検討の側面から論じた。

まず第 1 章では背景として、社会との接点をめぐる課題を扱う、その社会の定義について述べると共に、コホート調査・バイオバンク構築の具体的な事例として東北メディカル・メガバンク計画を扱うため、その立案・実施の経緯などを詳述した。第 2 章の方法では、多様な広報・コミュニケーション活動に用いた手法及びその分析に用いた手法、倫理的な課題を検討してきた方法を述べた。また第 3 章の結果では、広報・コミュニケーション活動がどのような成果を創出したのか、倫理的な課題の検討の結果導きだされた議論や制度について取り上げ、第 4 章でそれぞれを諸外国含めた先行事例などと比較もしながら考察した。

本論文では、東北メディカル・メガバンク計画における広報・コミュニケーション活動の主眼や対象、そしてそれに沿った戦略が、計画立案時から、計画を構成する根幹の事業であるコホート調査へのリクルートの進捗期、リクルートが完了後の事業の成熟期など、フェーズが移り変わることによって変化していくことについて、ステークホルダーの詳細な分析などを通じて明らかにした。

また、バイオバンク構築・コホート調査におけるコミュニケーション活動の基盤である倫理面についても検討した。既に膨大な先行研究の蓄積がある中で、筆者は特に、複雑なバイオバンクの倫理的課題の整理を行い、①インフォームド・コンセント(IC)、②プライバシー保護、③結果返却、④二次利用、⑤バンク運用(ガバナンス)に大別して包括的に論じた。その上で、特に、長期にわたる生体試料・情報の保管において、時間経過が生じさせる側面に焦点をあて、①~⑤のうちのいくつかが複合する例を示しながら、長期継続しているバイオバンクにおいて新規性の高い課題について特に検討した。それらは、主に、個人のゲノム解析の問題とバイオバンクが持つ課題、この二つが組み合わさった上で、近年の個人情報保護法制などの変遷などとも関係しながら複合的に起こることで生じた問題である。

本論文を通じて、社会との接点、コミュニケーションの視点から、広報活動と倫理課題の検討とを同時並行し て扱った。広報活動と倫理課題の検討はプロジェクトの正負の面をそれぞれ扱うことで相反するように見える。しかし、もともと異なる意思を持つ異なる複数のステークホルダーとの関係の中で進めていくプロジェクトに おいて、その両面を併せて検討して多方面との関係構築を進めるコミュニケーションの課題としては一つのも のと言える。コミュニケーションの課題として広報・倫理の課題を検討し、全体を通じて、人を対象とした大 規模な医学系プロジェクトにおいて発生する社会との接点をめぐる課題における、さまざまな態様のコミュニ ケーションとその課題を挙げ、一定の対応方法等を示した。特に大規模なプロジェクトの推進においては、プ ロジェクトそのものの進捗によるフェーズを勘案しながら対象とアプローチを検討し実践する方法論につい て実践の実例と共に新規のものを提示した。生命科学は、常に新たな技術が開発され新規の発見があり、それ によって課題が更新されていく分野である。常に浮上する新たな課題を抽出し、各層と共有する不断の努力が 必要であるが、本論文で詳述したような戦略や方法論が、大規模なプロジェクトを推進する中で今後の課題を 検討し解決していくよすがとなることを期待する。

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