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大学・研究所にある論文を検索できる 「政府開発援助(ODA)における保健事業評価者のセオリー評価概念モデルの生成」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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政府開発援助(ODA)における保健事業評価者のセオリー評価概念モデルの生成

中野 久美子 東北大学

2021.03.25

概要

<目的>
開発途上国においては、予防可能、治療可能な疾患で依然多くの人々が命を落としている。かかる状況下、 日本政府開発援助(ODA: Official Development Assistance; 以下 ODA)を拠出し、国際貢献を理念として JICA 国際協力機構(JICA: Japan International Cooperation Agency; 以下 JICA)を中心に保健分野の技術協力プロジェクト(以下保健事業)を展開してきている。近年、国内外の諸問題の複雑化などから、ODAへの予算配分は年々減少傾向にある。ODA 事業の効率化が一層求められ、事業の有効な見直しを促す ODA事業評価の意義が再確認されている。

ODA 事業評価は、発注者や国民への説明責任を果たすことを目的とする総括的評価に偏り、評価の第一義的な目的である事業・社会の改善を目指す形成的評価は後回しになることが多い。事業のロジックを確認し、無駄な投入や活動の見直しをはかるための実用的評価の手法としてセオリー評価が注目されている。しかし、現場で活用できるセオリー評価の実践的なモデルは存在せず、評価者がどのようにセオリー評価を行っているか、その実態は明らかではない。

本研究の目的は、日本の ODA 保健事業における評価者のセオリー評価概念モデルを生成することである。

<方法>
Yin(2011)の Case study 法、Multiple-case designs を用いた。セオリー評価の理論枠組みを基盤に、日本の ODA 保健事業の評価者をケースとおき、15 名に半構造化インタビューを行いデータ収集した。インタビュー結果とケースの担当評価事業の資料をデータとして加え、質的にケース内・ケース間分析の上、概念モデルを導出した。本研究は、東北大学医学系研究科倫理委員会の承認を得た。

<結果>
研究参加者は 15 名(女性 11 名、男性 4 名)、平均 ODA 事業評価経験年数は 14 年であった。評価経験年数が 5〜10 年間の者は 15 名中 5 名、10〜15 年は 5 名、15 年以上は 5 名であった。研究参加者の所属は、民間コンサルティング法人 11 名、公益財団法人 3 名、JICA 国際協力機構 1 名であった。15 名の研究参加者のうち、JICA 本部・JICA 現地事務所における勤務経験者は 5 名、現地の ODA 事業実施の経験者は 12 名であった。

セオリー評価概念モデルは、22 個のサブカテゴリ、7 個のカテゴリ、2 個の主要概念『活動の実施可能性の向上と活動の継続』と『自立発展を促す活動と仕組みの発見と温存』から生成された。活動領域のロジックを示すプロセスセオリーの実践として【ロジックモデルは仮説であり続けるという認識を持つ】、【定量化できない情報の有用性・重要性を認識する】、【どのように活動から効果、成果が発現したかを確認する】、【活動・活動量の適正化により活動の推進・有効化をはかる】のカテゴリが抽出され、これらから『活動の実施可能性の向上と活動の継続』の主要概念が生成された。

ニーズと目標間のロジックを示すインパクトセオリーの実践として【保健医療サービス提供と行政・仕組みを分けて考え確認する】、【評価対象外の効果的な PDM 外の活動・結果に着目する】、【上位目標の明確化を行い社会的インパクトのための活動を表出させる】のカテゴリが抽出され、これらから『自立発展を促す活動と仕組みの発見と温存』の主要概念が生成された。

<考察>
本研究で明らかになった評価者のセオリー評価の実践は、被援助国社会の好転への指向を起点とする、活動の実施可能性の向上と継続、自立発展を促す活動と仕組みの探究であった。評価者は PDM に未記載の事項、数値化が困難な定性的情報を重要視して情報収集し、活動量の適正化など事業のより良い運営につなげることを試みていた。また、社会的インパクトをはかる上位目標を明確化し、保健医療サービス継続のための、行政の仕組みづくりにつながる活動・効果やその発現メカニズムを複眼的視点から探究していた。これらのことからプロセスセオリーとインパクトセオリーの評価項目間をまたぐ相互補完的なセオリー評価の実践が示唆された。

<結論>
評価者は、事業の自立と被援助国社会の好転を第一義的な目的として形成的評価を実践していた。本研究で生成されたセオリー評価概念モデルを事業関係者が事業評価や事業進捗管理で参照することにより、事業の有効化を促し、事業関係者の評価的思考の涵養、被援助国の社会の暮らしの好転のために在る本来の事業ビジョンへの回帰の機会となることが期待できた。

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