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大学・研究所にある論文を検索できる 「緩和ケアにおける患者報告アウトカムの臨床使用実態調査および実装科学研究の方法論を用いた患者報告アウトカムの臨床導入方法の開発と検証」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

緩和ケアにおける患者報告アウトカムの臨床使用実態調査および実装科学研究の方法論を用いた患者報告アウトカムの臨床導入方法の開発と検証

伊藤, 奈央 東北大学

2023.03.24

概要

(書式18)




位 論 文 要 約
A b s t r a c t )

博士論文題目 Title of dissertation
緩和ケアにおける患者報告アウトカムの臨床使用実態調査および実装科学研究の方法論を用いた
患者報告アウトカムの臨床導入方法の開発と検証

東北大学大学院医学系研究科保健学専攻
家族支援看護学講座緩和ケア看護学分野
氏名 Name

伊藤

奈央

【背景】患者報告アウトカム(Patient-reported outcomes:PRO)とは、医療者も含め、他者の解釈を介さず、
患者本人から直接得られた健康状態に関する報告であり、緩和ケアを受ける患者への使用が推奨されている。
しかし PRO の使用には、メリットだけでなくデメリットも報告されている。また PRO を臨床に取り入れる際に
は障壁があることが報告されており、日本の緩和ケア臨床では PRO の使用実態、PRO 導入方法について明らか
にされていない。緩和ケア臨床における PRO の使用実態を明らかにし、PRO の導入方法を開発・検証すること
は、日本の緩和ケア臨床での PRO 実装につながると考える。
【目的】本研究の目的は、緩和ケア臨床における PRO の使用実態を明らかにし、緩和ケア臨床における PRO
の導入方法を開発・検証することである。
研究 1:日本の専門的緩和ケアにおける日常的な PRO の使用実態、PRO 導入の障壁と工夫を明らかにする。
研究 2:専門的緩和ケアの臨床セッティングの中で緩和ケア病棟における PRO の導入方法を開発・検証する。
【方法】研究 1:全国のがん診療連携拠点病院、緩和ケア病棟、在宅ケア施設を対象として質問紙調査とイン
タビュー調査を行った。
研究 2:緩和ケア病棟において PRO 導入を進めるために開発フェーズと検証フェーズを設定し、6 つのステッ
プで研究を実施した。ステップ 1 は病棟アセスメント、ステップ 2 は PRO 導入計画の立案と実施、ステップ 3
は PRO 導入後の調査と PRO 活用状況の分析、ステップ 4 は PRO 実装プロセスの振り返り、ステップ 5 は緩和ケ
ア病棟での PRO 実装マニュアル作成、ステップ 6 はステップ 5 で作成したマニュアルの使用と検証とした。ス
テップ 1 の病棟アセスメントでは、実装研究のための統合フレームワーク(Consolidated Framework for
Implementation Research:CFIR)を用いて PRO 実装の障壁と促進要因を特定し、特定された障壁に対応でき
るようステップ 2 の PRO 導入計画を立案し実施した。
【結果】研究 1:質問紙調査に協力が得られた施設は 458 施設、インタビュー調査に協力が得られた施設は 24
施設だった。主な知見としては、
(1)緩和ケア臨床において日常的に PRO を使用している施設は 24%である
1

(書式18)
こと、
(2)緩和ケア臨床において最も日常的に使用されている PRO 評価尺度は「生活のしやすさに関する質問
票」であること、
(3)日常的に PRO を使用している施設では有用と感じていたが、PRO の導入と活用には障壁
があることが示された。PRO 導入の障壁としては患者の病状や認知機能による PRO の困難、PRO を活用しケア
につなげることの困難などがあげられた。
研究 2:緩和ケア病棟において開発フェーズ 3 施設、検証フェーズ 1 施設で PRO 導入をすすめた。ステップ 1
の病棟アセスメントでは、CFIR を用いて医療者インタビューを分析した結果、PRO 導入に対して【複雑性】は
《個別の対象患者の選定》

【患者のニーズと資源】は《高齢患者や認知機能低下がある》《自己評価を望まな
い患者の特性》

【文化】は《日常的な医療者による評価》《今までの評価方法に対する課題》、【実装風土】は
《変化を望まない風土》

【介入についての知識や信念】は《患者への聞き方の課題》
《医療者の主観による評
価になってしまう可能性》などのカテゴリが生成された。ステップ 2 ではステップ 1 で特定された障壁への対
応となるようチャンピオン(PRO 導入の責任者)と協働し、医療者への教育、対象患者の選定基準や PRO を活
用するフローを作成した。ステップ 3 の PRO 導入前後の医療者評価では、緩和ケアに関する「実践尺度」と「困
難感尺度」での有意差はみられなかった。PRO 導入前に医療者の障壁について「よく思う」
「非常によく思う」
と回答した医療者の割合は、
「患者に尋ねるタイミングや評価のタイミングが難しい」で 29%から 7%
(p=0.007)

「患者への症状などの尋ね方や評価方法がわからない」で 21%から 4%(p=0.028)と導入後に低
下し有意差がみとめられた。開発フェーズでは入院患者の 47%が PRO の対象となり、調査終了時には入院日
の対象患者の 100%に対して PRO による評価が使用され、評価結果は 60%以上でカンファレンスやケアに活用
された。実装アウトカムとして受容性、有効性、浸透度、持続可能性が示された。ステップ 4 のチャンピオン
の振り返りでは、
【病棟における課題の明確化と PRO 実装による目標設定】
【PRO の効果と困難の経験】
【PRO
の定着と活用への課題の表面化】
【PRO の活用によるカンファレンスやケアの変化】【PRO を取り入れることで
の病棟の変化】という PRO 導入におけるプロセスに対するカテゴリが生成された。ステップ 5 ではステップ 1
から 4 をふまえて緩和ケア病棟における PRO 実装マニュアルを作成し、ステップ 6 の検証フェーズで使用した。
検証フェーズにおいても、調査終了時には入院日の対象患者の 100%に対して PRO による評価が使用されてお
り、評価結果は 80%以上でカンファレンスやケアに活用された。実装アウトカムとしては開発フェーズと同
様に、受容性、有効性、浸透度、持続可能性が示された。
【結論】研究 1:日本における専門的緩和ケアでの PRO の日常的な使用状況を定量化し、PRO 導入の障壁と工
夫が明らかとなった。特に PRO の障壁としては患者の病状や認知機能によって PRO が難しいこと、PRO による
評価の時間的制約や PRO を活用しケアにつなげることの困難など医療者の負担があることが示された。研究 1
の結果を踏まえ、緩和ケア臨床において障壁を克服できるような PRO 導入方法を開発し検証する必要がある。
今後、患者・医療者双方の認識を評価する横断的な質問紙調査やインタビュー調査に加え、PRO の有効性を客
観的に評価する RCT などの研究が必要である。
研究 2:専門的緩和ケアの臨床セッティングの中で緩和ケア病棟における PRO の導入方法を開発し検証した。
2

(書式18)
このプロセスの中で PRO 導入前に病棟のアセスメントを行い導入の障壁に対応すること、丁寧な準備と医療者
の負担軽減を図ること、チャンピオンが医療者を支援することが重要であると示された。
本研究全体を通して、日本の緩和ケア臨床における日常的な PRO の使用は 24%、緩和ケア病棟での日常的
な使用は 11%であり、在宅ではほとんど使用されていないことが明らかとなった。日本の緩和ケア臨床にお
ける PRO 導入には先行研究と共通して患者の病状の重篤さや認知機能低下などの患者側の障壁、時間的制約や
PRO を活用しケアにつなげることが困難であること、教育の不足などの医療者側の障壁があることが明らかと
なった。緩和ケア病棟における PRO 導入には、病棟のアセスメントを行い導入における障壁が克服できるよう
対応すること、丁寧な準備と医療者の負担軽減が重要であること、チャンピオンによる医療者の支援が重要で
あることが示され、緩和ケア臨床での PRO の導入方法が開発・検証された。今後は緩和ケア臨床における PRO
実装をすすめ、効果を検証する必要がある。 ...

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