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書き出し

遷移金属酸化物熱量効果材料の合成と評価

小杉, 佳久 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k24434

2023.03.23

概要

学位論文の要約
題目

遷移金属酸化物熱量効果材料の合成と評価

氏名

小杉

佳久

ペロブスカイト構造酸化物をはじめとする遷移金属酸化物は、絶縁体から半導体、金
属と幅広い電気伝導性を示すだけでなく、磁性や誘電性、光学特性など多彩な物性を示
すことから電子デバイス材料として広く材料開発と実用化が行われている。一方、この
物質群は、近年の高温超伝導やマルチフェロイクスなどの新しい物性の発見に見られる
ように、固体化学や物性物理学における基礎研究の対象としても非常に注目を集めてき
た。このような遷移金属酸化物において、新規物質や新規物性の開拓は新しい電子デバ
イス等への応用へと繋がる可能性もあり、科学的にも社会的にも大きな意義を持つもの
である。
このように遷移金属酸化物は、さまざまな基礎物性やそれを活用したデバイス開発研
究が行われてきたが、熱物性に関する研究はあまり進んでこなかった。特に外場による
熱変化現象である熱量効果は、次世代の冷却技術として近年急速にその重要性が高くな
ってきているが、熱量効果材料として遷移金属酸化物はそれほど注目されてこなかった。
本研究では、電荷-スピン-格子が相関した電荷相転移を示すペロブスカイト構造遷移金
属酸化物に着目し、巨大熱量効果が生じることを明らかにし、新規の熱量効果材料とし
て見出した。
第 1 章は、本研究の背景と注目したペロブスカイト構造と異常高原子価イオンによる電
荷相転移について述べている。また熱量効果の研究背景や課題について述べている。
第 2 章では、本研究で行った実験での試料合成法や試料評価法の原理および手法につい
て説明している。高圧合成に用いたキュービックアンビル型高圧発生装置と物性測定に用
いた粉末 X 線回折測定、磁化測定、電気抵抗測定、中性子回折測定、
、示差走査熱量測定、
比熱測定について詳しい解説を行っている。
第 3 章では、A サイト秩序型ペロブスカイト構造酸化物 NdCu3Fe4O12 の合成を行い、

合成した試料の試料評価と熱特性評価を行った結果について報告している。粉末試料は
高圧下の酸化雰囲気で合成を行った。得られた試料は粉末 X 線回折、磁化測定、電気
抵抗測定から、室温直上で 3Cu2+ + 4Fe3.75+ → 3Cu3+ + 4Fe3+で表わされるサイト間電荷
移動相転移を生じていることを確認した。示差走査熱量測定では、この電荷相転移で

25.5 kJ kg-1 (157 J cc-1)の巨大潜熱が観測された。これは氷の融解熱の約半分に相当する
大きさであり、無機固体材料が室温付近で示す潜熱としてはこれまでの報告されている
ものの最高値に匹敵する。この起源を探るため中性子回折を行い、Fe3+の磁気モーメン
トが電荷移動相転移で急激に G 型反強磁性秩序を形成していることを明らかにした。
電荷相転移によってもたらされる一次的な磁気エントロピー変化が巨大潜熱に寄与し
たと考えられる。さらに圧力熱量効果の測定を行ったところ、5.1 kbar の圧力印加で等
温エントロピー変化 65.1 J K-1 kg-1、断熱温度変化 13.7 K に達する巨大熱量効果を実証
した。この結果から、異常高原子価イオンによる電荷移動相転移を生じる物質が、新規
の熱量効果材料の候補物質となることを見出した。
第 4 章は、混合原子価 Cr3.75+を含む A サイト秩序型ペロブスカイト構造酸化物 BiCu3Cr4O12
の電荷不均化転移での熱量効果測定について述べている。多結晶試料は高温高圧合成で焼
成し、放射光 X 線回折による Rietveld 解析から、190 K で 2Cr3.75+ → Cr3.5+ + Cr4+で表わされ
る電荷不均化転移を確認した。この物質で示差走査熱量測定を行ったところ、電荷不均化
転移に伴う 5.23 kJ kg-1 (37.9 J cc-1)の大きな潜熱を観測した。さらに磁化測定から、電荷不均
化と同時に一次のフェリ磁性転移を観測し、電荷不均化転移が磁場誘起されることを発見
した。磁化測定から磁気熱量効果を測定したところ、50 kOe の磁場印加で磁気エントロピ
ー変化が 22.6 J K-1 kg-1、断熱温度変化は 3.9 K であることが得られた。また電荷不均化転移
では体積変化を伴うことから、NdCu3Fe4O12 と同様の圧力熱量効果も期待される。実際に圧
力下示差熱測定を行ったところ、4.9 kbar の圧力印加で等温エントロピー変化 27.2 J K-1 kg-1、
断熱温度変化 4.8 K の熱量効果が生じることを実証した。これらの結果と両外場下での転移
温度挙動から、圧力と磁場の複数の外場によるマルチ熱量効果が生じることを見出した。
これは電荷相転移において電荷-スピン-格子の自由度が強く相関していることで、転移に伴
う大きなエントロピー変化を複数の外場により誘起できるためである。以上の結果から、
電荷-スピン-格子が強く相関した電荷相転移においてマルチ熱量効果が実現することを示
した。
本研究では得られた一連の成果は、遷移金属酸化物の電荷相転移で巨大熱量効果を生じ
ることを実証したものである。特に、異常高原子価イオンによる電子状態の不安定性に起
因した電荷相転移は、電荷-スピン-格子の強い相関により巨大潜熱と巨大熱量効果を生じる
ことを見出した。さらに、このような物質群は、複数の外場に応答するため、マルチ熱量
効果材料としても期待できる。本研究で得られた知見は今後の新規熱量効果材料の設計指
針となる研究結果である。 ...

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