Mongolian Health Sector Strategic Master Plan (2006–2015): A foundation for achieving universal health coverage
概要
【はじめに】
ユニバーサル・ヘルス・カバーレッジの達成という目標は、2005年にWHOによって提唱され、 2015年には国連のSDGs(持続可能な開発目標)の一つとして掲げられ、達成されていない開発 途上の多くの国々において様々な取り組みが行われている。モンゴルにおいてもユニバーサル・ ヘルス・カバーレッジの達成を目指してコンゴル健康局マスタープランが2005年に策定された。 本研究では、モンゴル健康局マスタープラン(2005–2016)がユニバーサル・ヘルス・カバーレ ッジの基本原理に適合しているか、また、不足している項目がないかを分析し、次期マスタープ ラン策定にむけての提言を行うことを目的とした。
【方法】
モンゴル政府の健康局マスタープランおよびマスタープランの実行や期間内における医療資源に関する政府文書を収集した。マスタープランの7つのキー領域を横軸とし、WHOの掲げるユニバーサル・ヘルス・カバーレッジの7つの基本原則を縦軸として、マスタープランの7つのキー領域ごとに基本原則に適合しているかどうかについてフレームワーク分析を行った。
【結果】
マスタープランの7つのキー領域における戦略はすべてユニバーサル・ヘルス・カバーレッジの基本原理に基づいて裏打ちされ策定されていることが確認された。しかしながらいくつかの領域では戦略の実効性に問題がみられた。プライマリーケアに関しては都市部農村部とも無料で提供されているが、農村部では医療保健施設へのアクセスが難しいという現状が明らかとなった。また、医療の質の向上についても戦略は掲げられているが、その評価検証については不十分であった。
一方、マスタープランには、ユニバーサル・ヘルス・カバーレッジの基本理念には含まれていない項目が2つ含まれていた。1つは部局を超えた統括的なアプローチの推進戦略であり、もう一つは地域コミュニティの保健活動への参加についての戦略であった。
【考察】
問題点として挙げられた農村部における医療保健施設へのアクセスや医療の質の向上について は次期マスタープランでは重視されるべきと考えられた。また、マスタープランの独自項目とし て挙げられた部局を超えた統括的なアプローチの推進や地域コミュニティの保健活動への参加は、ユニバーサル・ヘルス・カバーレッジの基本理念には含まれていないものの、今後も、こうした 長所は次期マスタープランにおいても継続されるべきであると考えられた。
本研究では、フレームワーク分析の有用性が示され、その結果はモンゴルにおける次期マスタープランの策定において有用であるばかりでなく、今後、計画を策定しユニバーサル・ヘルス・カバーレッジを達成しようとする国々においても重要な提言となるものと考えられた。