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書き出し

Indirect interactions between two Anterhynchium species

辻井, 美咲 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

フタオビドロバチ属2種間の間接相互作用

辻井, 美咲
(Degree)
博士(農学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Date of Publication)
2025-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8662号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100482410
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

別紙様式 3 (博士論文審査等内規第 2条関係)

博士論文内容の要旨





専攻・講座

辻井美咲

生命機能科学専攻・応用機能生物学講座

論文題目(外国語の場合は,その和訳を併記すること。)

フタオビドロバチ属 2種間の間接相互作用

指導教員

杉浦真治

(氏名:

辻井美咲

NO. 1 )

侵入種は在来種や生態系に脅威をもたらす。侵入種と在来種が近縁である場合、前者は
後者を競争的に排除することもある。これまでの研究の多くは、外来の真社会性有剣類(ア
リ、スズメバチ、アシナガバチ、ハナバチ)による在来生物に対する負の影響に注目して
きた。単独性カリバチ類は多くの地域に侵入しているにもかかわらず、在来種に対する影
響を調べた研究はほとんどない。本研究では、兵庫県においてスズメバチ科ドロバチ亜科
フタオビドロバチ属のオオフタオビドロバチ(在来種)とオデコフタオビドロバチ(侵入
種)の間接相互作用について調査した。

2019年 6月から 1
0月に兵庫県高砂市の林縁に竹筒トラップを設置し、オオフタオビド
ロバチとオデコフタオビドロバチの営巣場所利用と獲物利用、そして捕食寄生者による寄

.
4%がオオフタオビドロバチに、 5
.
3%がオデコフ
生率を比較した。 950本の竹筒のうち、 7
タオビドロバチに営巣場所として利用されていた。調査期間中、オオフタオビドロバチは 2
回の営巣時期 (
6月下旬から 8月上旬、 9月上旬から 1
0月上旬)が、オデコフタオビドロ

7月中旬から 8月上旬)が確認された。オデコフタオビドロバ
バチは 1回のみの営巣時期 (
チはオオフタオビドロバチよりも 2 週間遅れて営巣を開始したが、オデコフタオビドロバ
チの営巣期間はオオフタオビドロバチの第 1営巣期間と重複していた。巣の構造は両種で
よく似ており、また利用した竹筒の内径は両種間で重複したため、営巣資源をめぐって潜
在的に競争していることが示唆された。オオフタオビドロバチはガ幼虫 1
4種(鱗翅目:ツ
トガ科、メイガ科、ハマキガ科)を幼虫の餌として利用していたが、オデコフタオビドロ
バチはトガリキノメイガ(鱗翅目:ツトガ科)幼虫のみを利用していた。獲物種は両種で
全く重複しておらず、これは餌資源を介した競争はないことを示している。捕食寄生者 3
種、ムモンオオハナノミ(鞘翅目:オオハナノミ科)、

ドロバチヤドリニクバエ(双翅目:

p
. (双翅目:ノミバ工科)が両種の未成熟個
ニクバ工科)、ノミバエ類の一種 Megasehas
体(卵、幼虫、前蛹)を利用していた。

ドロバチヤドリニクバエによる寄生率は在来種の

オオフタオビドロバチにおいて高かった。オデコフタオビドロバチはオオフタオビドロバ
チに対して共通する捕食寄生者を介して間接的に影響を与えている可能性がある。

2020年 6月から 1
1月に兵庫県高砂市の 4つの環境(農地内、竹林縁、竹林・雑木林境
界、雑木林内)に竹筒トラップを設置し、オオフタオビドロバチとオデコフタオビドロバ
チの営巣環境と獲物種の構成を調査した。オオフタオビドロバチは、農地内、竹林縁、竹
林・雑木林境界、雑木林内の 4 つの環境すべてで営巣していたが、オデコフタオビドロバ
チは農地内での営巣は全く確認されず、竹林縁、竹林・雑木林境界、雑木林内で営巣して
いた。オオフタオビドロバチの獲物種として合計 15種(農地内 7種、竹林縁 5種、竹林・
雑木林境界 8種、雑木林内 6種)のガ類(ツトガ科、メイガ科、ハマキガ科)幼虫を利用
していたが、オデコフタオビドロバチはいずれの環境でもトガリキノメイガ幼虫のみを利
用していた。以上のように、オオフタオビドロバチは様々な獲物種や営巣環境を利用でき
るジェネラリストであるが、オデコフタオビドロバチは特定の獲物種と森林環境のみを利

(氏名:

辻井美咲

NO. 2 )

用するスペシャリストであることが確認された。
オオフタオビドロバチとオデコフタオビドロバチの狩猟行動を実験室において観察した。
オオフタオビドロバチはオデコフタオビドロバチの獲物であるトガリキノメイガ幼虫に反
応せず、同様にオデコフタオビドロバチはオオフタオビドロバチの獲物であるワタノメイ
ガ幼虫にほとんど反応しなかった。また、両種の獲物種に対する狩猟行動はいくつかの点
で異なっていた。オオフタオビドロバチはシェルターに穴をあけてワタノメイガ幼虫を追
い立てるか、シェルターの開放部から侵入し、幼虫を捕獲していた。一方、オデコフタオ
ビドロバチは、糸を切ってシェルターを開き内部のトガリキノメイガ幼虫を捕獲していた。
オオフタオビドロバチとオデコフタオビドロバチではそれぞれの獲物種に対する狩猟成功
率に有意差はなかったが、獲物種のシェルターサイズと狩猟成功率の関係は異なっていた。
ワタノメイガ幼虫のシェルターサイズとオオフタオビドロバチの狩猟成功率に有意な関係
は検出されなかったが、

トガリキノメイガ幼虫のシェルターサイズが大きくなるとオデコ

フタオビドロバチの狩猟成功率が減少した。これは、オオフタオビドロバチの獲物対象で
あるワタノメイガ幼虫とオデコフタオビドロバチの獲物であるトガリキノメイガ幼虫では、
同じツトガ科であっても、シェルターの構造とそれに伴う被食防衛行動も異なっているこ
とと関係するかもしれない。ワタノメイガ幼虫のシェルターは 1枚の葉を丸めたシンプル
なものに対し、

トガリキノメイガ幼虫のシェルターは複数の細い葉を束ねた複雑なもので

あった。また、攻撃された時、ワタノメイガ幼虫はシェルターの開放部からシェルター外
に逃げるのに対し、

トガリキノメイガでは主にシェルターの内部で逃げるというように、

主要な逃避行動も異なっていた。つまり、ワタノメイガ幼虫ではシェルターサイズが大き
くても脱出口(つまり開放部)からの逃避行動は影響を受けないが、

トガリキノメイガで

はシェルターが大きいほど内部に隠れる場所が増え捕食から逃れる確率が上昇する可能性
がある。このように、

トガリキノメイガは、フタオビドロバチ類のような捕食者から身を

護るために複雑で大きなシェルターを進化させてきたのかもしれない。または、獲物種ご
とのシェルター構造と逃避行動に対応して、オオフタオビドロバチは追い立てることで獲
物を追い出す行動が、また、オデコフタオビドロバチはシェルターを分解していくことで
内部に潜むトガリキノメイガ幼虫を引きずり出すという行動が進化してきた可能性もある。
本研究によって、オオフタオビドロバチとオデコフタオビドロバチの間には餌資源をめ
ぐる競争はないと推定された。一方、オデコフタオビドロバチは営巣資源や天敵を介して
オオフタオビドロバチに間接的な影響を与えている可能性がある。また、各種の獲物選好
性や狩猟行動は、オデコフタオビドロバチがオオフタオビドロバチの生息地に侵入する以
前から有する性質であることが示唆された。つまり、オデコフタオビドロバチは侵入後、
在来のジェネラリストであるオオフタオビドロバチが利用していない空きニッチを埋めて
いる可能性が高い。

(別紙 1)

論文審査の結果の要旨

氏名

辻井美咲

論文
題目

フタオビドロバチ属 2種間の間接相互作用
区分

職名

主査

准教授

杉浦真治

教授

前藤薫

教授

森直樹

胃│

副査




副査







副査



副査






ある種がある地域に侵入することで、元々生息していた種と強い相互作用が生じうる。近年、
人間活動によって様々な生物種が多くの地域に持ち込まれ、直接的または間接的な相互作用を通
じて、在来種や生態系に大きな影響を与えてきた。特に、侵入してきた種(侵入種)と元々生息
していた種(在来種)が系統的に非常に近縁である時、資源や天敵が共通するため、侵入種は在
来種を競争的に排除したり、置換したりすることがある。本研究では、単独性カリバチ類の同属
2種(侵入種と在来種)に注目し、野外および実験室下で実験・観察を行うことで生活史を種間
で比較し、近縁な侵入種と在来種間の間接相互作用を解明している。

第 1章では、本研究の背景と目的が述べられている。
侵入種は在来種や生態系に背威をもたらすことがある。侵入種と在来種が近縁である場合、共
通する資源や天敵を通じて、前者は後者を競争的に排除しうる。これまでの研究の多くは、真社
会性の膜翅目(アリ類、スズメバチ類、ハナバチ類)の侵入による在来生物への影響に注視して
きた。単独性カリバチ類は、真社会性種に比べて種多様性が高く、一部の種が多くの地域に侵入
している。しかし、単独性カリバチ類の侵入種が在来種や生態系に及ぼす影轡を調べた研究はほ
とんどない。本研究では、新たな生息地に侵入した種が同属の在来種に及ぼす生態学的な影響を
明らかにするために、単独性カリバチ類であるフタオビドロバチ属(膜翅目:スズメバチ科:ド
ロバチ亜科)の 2種、オデコフタオビドロバチ(侵入種)とオオフタオビドロバチ(在来種)
の営巣習「生(巣の構造や性比)、餌種、天敵(捕食寄生者)、営巣環境を野外調査によって比較
することを目的としている。さらに、両者の餌種を介した相互作用の有無を検証するために、両
種の狩猟行動を実験室下で観察・比較した。

第2 章では、研究を行った調査地や環境、野外調査方法、飼育法、室内行動観察方法を詳し
<述べている。
調査地である兵庫県高砂市近郊において、オオフタオビドロバチは元々生息していたが、 2005
年から 2011年の間にオデコフタオビドロバチが同地域に侵入・定着したと推定されている。調
査地は、農地、竹林、雑木林で構成され、平地には農地が、丘陵地には雑木林が広がり、平地と
丘陵地の間には竹林がベルト状に観られる。オデコフタオビドロバチおよびオオフタオビドロバ
0月下旬に
チの営巣時期、巣の構造、餌種、捕食寄生者を比較するために、 2019年 6月上旬∼ 1
かけて、雑木林および竹林の林縁 700mにわたって竹筒トラップ(長さ 200mmの内径 5-16m m
の竹筒 1
2本)を合計 48基設置した。また、両種の営巣環境を明らかにするために、 2020年 6
月上旬∼ 1
1月上旬にかけて、 4つの環境(農地内、竹林縁、竹林・雑木林境界、雑木林内)に
2基ずつ設置した。さらに、オデコフタオビドロバチとオオフタオビド
竹筒トラップを各環境 1
ロバチの種間で餌が共通しているかどうかを明らかにするために、実験室下で両種の狩猟行動を
観察し、比較した。

氏名

I辻 井 美 咲
第 3章では、本研究の結果を詳しく述べている。

2019年に野外で竹筒トラップを設置した結果、設置した 950本の竹筒のうち、オデコフタオビ
ドロバチが 5
.
3%の竹筒に、オオフタオヒ‘‘ドロバチが 7
.
4
%に営巣していた。調査期間中、オデコフ
タオビドロバチの営巣時期は 7月中旬∼ 8月上旬の 1回のみだったが、オオフタオビドロバチは 6
月下旬∼ 8月中旬と 9月上旬∼ 1
0月上旬の 2回が確認された。オオフタオビドロバチはオデコフタ
オビドロバチよりも 2週間早く営巣を開始していたが、 7月中旬から 8月上旬にかけて両種間で営
巣期間は重複していた。営巣場所として利用していた竹筒の内径は両種間で有意差はなく、営巣資
源をめぐる競争が示唆される。オデコフタオビドロバチはトガリキノメイガ(鱗翅目:ツトガ科)
4種(ツトガ科、メ
の幼虫のみを餌として利用していたが、オオフタオビドロバチは鱗翅目幼虫 1
イガ科、ハマキガ科)を利用していた。両種間で獲物は重複しておらず、餌資源をめぐる競争がな
いことが示唆される。両種の未成熟個体を攻撃する天敵として、捕食寄生者 3種、ムモンオオハナ
ノミ(鞘翅目:オオハナノミ科)、 ドロバチヤドリニクバエ(双翅目:ニクバ工科)、ノミバエ類
の一種(双翅目:ノミバ工科)が確認された。つまり、共通する捕食寄生者を介して、オデコフタ
オビドロバチがオオフタオビドロバチに間接的な影響を及ぼしている可能性が示唆される。
2020年に竹筒トラップを 4つの環境(農地内、竹林縁、竹林・雑木林境界、雑木林内)に設置
した結果、オデコフタオビドロバチは農地内での営巣は全く確認されず、竹林の林縁、竹林・雑木
林境界、雑木林内で営巣していた。一方、オオフタオビドロバチは 4つ環境すべて営巣していた。
オデコフタオビドロバチはいずれの環境でもトガリキノメイガ幼虫のみを利用していたが、オオフ
5種の鱗翅目幼虫を利用しているのが確認された。つまり、オデコフタオ
タオビドロバチは合計 1
ビドロバチは特定の獲物種と森林のみを営巣場所として利用するスペシャリストであるが、オオフ
タオビドロバチは様々な獲物種や営巣環境を利用できるジェネラリストであることが示唆される。
狩猟行動を実験室において観察した結果、オデコフタオビドロバチはオオフタオビドロバチの獲
物種にほとんど反応せず、オオフタオビドロバチはオデコフタオビドロバチの獲物種には全く反応
しなかった。また、両種の獲物種に対する狩猟行動は異なっており、オデコフタオビドロバチは糸
を切ってシェルターを開き内部の獲物幼虫を捕獲していたが、オオフタオビドロバチはシェルター
に穴をあけて獲物幼虫を追い立てるか、シェルターの開放部から侵入し、幼虫を捕獲していた。さ
らに、獲物幼虫のシェルターサイズと狩猟成功率の関係が両種間で異なっていた。オデコフタオビ
ドロバチの狩猟成功率は獲物幼虫のシェルターサイズが大きくなるほど減少したが、オオフタオビ
ドロバチの狩猟成功率はそのような傾向は観られなかった。つまり、両種で獲物種や狩猟行動は完
全に異なっており、野外での竹筒トラップ調査との結果と完全に一致している。

第 4章では、本研究の結果に基づき総合的に考察している。
本研究によって、オデコフタオビドロバチとオオフタオビドロバチとの間には餌資源をめぐる競
争はないと考えられる。一方、オデコフタオビドロバチは営巣資源や天敵を介してオオフタオビド
ロバチに間接的な影響を与えている可能性がある。また、両種の獲物選好性や狩猟行動は、オデコ
フタオビドロバチがオオフタオビドロバチの生息地に侵入する以前から有している性質であるこ
とが示唆される。つまり、オデコフタオビドロバチは侵入後、在来のジェネラリストであるオオフ
タオビドロバチが利用していない空きニッチを埋めている可能性が高い。
本研究では、フタオビドロバチ属 2種の営巣習性や狩猟行動を野外および実験室下で調査するこ
とで、侵入種が同属の在来種に及ぶす間接的な影響を明らかにしている。オデコフタオビドロバチ
とオオフタオビドロバチは異なる餌資源を利用しているが、営巣資源や営巣環境、天敵(捕食寄生
者)が共通しているため、オデコフタオビドロバチの侵入によって元々生息していたオオフタオビ
ドロバチが負の影響を受けている可能性がある。このような資源をめぐる競争や、共通する天敵を
介した見かけの競争は、侵入種と在来種の様々な相互作用系で個別に示されてきた。しかし、資源
と天敵の両方を同時に評価した研究は少なく、本研究は貴重な研究事例である。また、膜翅目の中
でも、アリ類、ハナバチ類や寄生蜂といったグループで侵入種を扱った研究は多いが、本研究で対
象とした単独性カリバチ類の研究は新規性が高い。よって、学位申請者の辻井美咲は、博士(農学)
の学位を得る資格があると認める。

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