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An ecological study of the gregarious wood-feeding cockroach Panesthia angustipennis spadica

Ito, Hiroki 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k24656

2023.03.23

概要

An ecological study of the gregarious wood-feeding cockroach Panesthia
angustipennis spadica
(食材性オオゴキブリの生態学的研究)
Hiroki ITO
(伊藤広記)

本研究では、食材性のオオゴキブリを対象とし、野外調査と室内実験により、本種の社会構造と資
源利用様式を調べた。
1 章 総合序論
朽木に穿孔する食材性昆虫は、朽木を餌また生息場所として利用し、森林内で粗大木質リター
(CWD)の分解に寄与している。食材性ゴキブリは、比較的大型の食材性昆虫であり、日本国内の
広い範囲に生息している。加えて、食材性ゴキブリの一部では、親が自身の子を世話する、亜社会
性の種が知られているが、社会性の程度は種によって異なると考えられており、各種の生態に関し
ては不明な点が多い。本章では、関連する先行研究を再検討し、森林内における CWD の分解や、
ゴキブリ目での社会性の発達を明らかにする上で、食材性ゴキブリの生態学的研究が必要である
ことを指摘した。
2 章 齢推定とコロニー構成
野外におけるコロニー構成を詳細に調べるため、京都市内でコロニー毎に採取した個体の体長・
生体重を測定し、飼育個体と比較することで、野外採取個体の齢を推定した。採取されたコロニー
の中には、雌雄 1 匹ずつの成虫と多数の若虫で構成された、家族のようなコロニーが発見された
一方、同性の成虫を複数含むコロニーや、若虫のみで構成されたコロニーも存在した。ほとんどの
個体が他個体と集合していたが、オオゴキブリのコロニー構成は多様であることが示された。推定
に用いたクラスター解析は、先行研究で用いられてきた単純な頻度分布図に比べ、客観的に齢を
区分することができ、齢数の多い節足動物の齢推定に有用である可能性が示唆された。
3 章 朽木選好性とコロニー構成
オオゴキブリが利用している朽木の特性を調べるため、野外調査を行った。熊本県天草下島の常
緑広葉樹林内にプロットを設置し、プロット内の林床にある朽木について、直径と腐朽度、オオゴキ
ブリの生息有無等を記録した。加えて、プロット外でもオオゴキブリをコロニー毎に採取して体サイ
ズを計測し、コロニー構成も調べた。その結果、オオゴキブリは直径が大きく、腐朽の進んだ朽木で
生息の割合が高かった。直径の大きな朽木は、資源量が大きく、水分等の環境が安定しているこ
とから、寿命が長く集合性を持つオオゴキブリにとって、好適と考えられた。また、本調査地ではコロ
ニーサイズが最大 7 で、ほとんどは親と同居していない若虫のみのグループだった。加えて、成虫
と共存していない若虫が、全ての体サイズクラスで見られたことから、本種の若虫は早期に親と離
れ、直接的な親の子に対する保護を必要としていないことが示唆された。

4 章 集合行動
野外で観察されるオオゴキブリの集団が、個体間の集合性によるものなのかを確かめるため、また
血縁を認識した集合を行うのか明らかにするため、室内実験を行った。実験に用いた 1 齢と 2 齢
の若虫は、いずれも集合性を示したことから、本種の 1,2 齢若虫は集合性を持ち、個体間の集合
性が、コロニー成立要因の 1 つであることが示唆された。一方で、血縁者と非血縁者を混ぜて行っ
た実験では、血縁者のみで行った結果と差がなく、同一生息地内では、血縁を区別せずに集合し
ていると考えられた。
5 章 生存と成長に対する集合の効果
親や同胞との集合が、若虫の生存・成長に与える影響を調べるため、室内飼育実験を行った。野外
採取した雌成虫とその産仔虫を用い、雌親と若虫複数、若虫複数、若虫単独の 3 つのカテゴリに
分けて飼育し、開始 90 日後に若虫の生存数、前胸幅、体重、齢級を記録した。カテゴリ間で若虫
の生存率に有意な差は見られなかったが、若虫単独で飼育したものが最も成長が良く、雌親と若
虫複数で飼育したものが最も成長が遅かった。これらの結果から、オオゴキブリでは給餌等の親の
子に対する保護はないと考えられた。集合性のゴキブリ類では、単独飼育で成長速度が低下する
集合効果が知られているが、オオゴキブリでは、兄弟姉妹個体との共存で成長遅延が生じている
ことが示唆された。オオゴキブリでは、集合しても成長速度の利得はなく、他種からの捕食率の低
減や、環境の条件付けのために、集合していると推測された。
6 章 総合考察
オオゴキブリが、直径が大きく腐朽の進んだ朽木で生息の割合が高かったことから、本種は朽木
に対する選好性を持ち、森林内で特定の特性を持った朽木の分解を促進する可能性が示唆され
た。加えて、集合性をもち、多数の個体が集合したコロニーを形成することから、集合先の朽木で集
中的な摂食・穿孔が発生すると考えられ、材の分解に一定の役割を果たしていると推測された。
 集合性について、野外調査では、ほとんどの個体が集合していたが、一方で単独や少数の個体
で構成されたコロニーもみられ、オオゴキブリの社会構造は多様であった。さらに、室内実験におい
て、若齢若虫は集合性を示したが、単独で飼育された若虫が、親や同胞と集合した状態で飼育さ
れたものより成長が良いことが示された。これらの結果から、オオゴキブリの集合性は、捕食率の
低下や環境の条件付け等のメリットと、成長遅延等のデメリットの、トレードオフの関係にあり、その
バランスは環境条件によって変化すると推測された。
 オオゴキブリの生息割合が高い、直径が大きく腐朽の進んだ柔らかい朽木は、餌・生息場所と
しての資源量が大きく集合するのに好適で、親から離れた若虫にとって生育に適していると推測さ
れた。また、亜社会性を持たないオオゴキブリでは、同一の朽木で長期間コロニーを維持する必要
がないと推測された。これらの結果から、集合性を持ち若虫が親と離れ分散するというオオゴキブ
リの社会性が、利用する資源の特性に影響を与え、直径が大きく腐朽の進んだ朽木を利用する割
合を高めている可能性が示唆された。 ...

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