Temporal changes in left ventricular ejection fraction and their prognostic impacts in patients with Stage B heart failure - comparison with Stage C/D-
概要
研究目的:東北大学循環器内科では過去に左室駆出率(Left ventricular ejection fraction, LVEF)の経時的変化が心不全発症既往のある患者(ステージ C/D)の予後に影響することを既に明らかにした。しかし、心不全発症リスクが高い心血管疾患患者(ステージ B)においても同様に LVEF の経時的変化が予後に影響するかは不明である。
方法:心不全患者の多施設前向き疫学研究である第二次東北慢性心不全登録研究(Chronic Heart failure Analysis and Registry in the Tohoku district -2, CHART-2 研究)(N = 10,219)に登録された米国心臓病学会/米国心臓病学会ガイドラインの 3,979 人のステージ B 患者を抽出し、LVEF(Left ventricular ejection fraction, LVEF)によって以下の 3 群に分けた:preserved EF(pEF、LVEF≥50%、N = 3,546)、borderline EF(bEF、 LVEF41-49%、N = 272)、および reduced EF(rEF、LVEF≤40%、N = 161)。3 群間で LVEF の経時的変化の予後の影響を 4,479 人のステージ C/D 患者と比較して検討した。
結果:ステージ B 患者は、ステージ C/D 患者と比較して、臨床像は軽症であり、良好な予後を特徴とした。登録時 bEF および rEF であるステージ B 患者は 1 年間で約半数が他の群に経時的に移行したが、pEF のステージ B 患者は他の群へ移行は少なかった。具体的には 1 年で bEF の 43%が pEF へ、13%が rEF へ移行し、 rEF の 23%が pEF、29%が bEF へ移行した。一方 pEF では僅かに 2.8%が bEF、0.6%が rEF へ移行した。ステージ B の pEF 群の LVEF の低下はステージ C/D の pEF 群と同様に全死亡と正の関連を認めたが、LVEFの経時的変化に関連する因子はステージ間で異なっていた。また、ステージ C/D の rEF 群と比較して、ステージ B の rEF 群では、左室拡張末期径と LVEF の変化との負の関連が顕著であった。
結論:ステージ B 患者では、ステージ C/D 患者と同様に、LVEF は経時的に変化し、その変化は予後と関連した。しかしながら、LVEF の経時的変化に関連する因子はステージ B とステージ C/D では異なる可能性が示唆された。