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大学・研究所にある論文を検索できる 「土壌微生物バイオマスカリウムの動態に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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土壌微生物バイオマスカリウムの動態に関する研究

床並, 佳季 名古屋大学

2022.07.28

概要

土壌微生物バイオマス (以下,バイオマス)は植物の養分の貯蔵源として多量のカリウム (K)を保持しているが,バイオマスを介した K のフラックスや土壌中の K の動態に関しては知見が不足していた。本研究では,水田土壌を対象にバイオマス K の代謝回転時間を推定し, K の供給源としてのバイオマスの意義を明らかにすることを目的とした。

1) 黄色土水田土壌 (以下,安城土壌)および灰色低地土水田土壌 2 種 (以下,大曲 E中 2 区および E 中 3 区土壌)を 0–10 cm 深より採取し, 実験へ供試した。湿潤土 10 gに CNP 源 (グルコース,NH4 Cl および NH4H2 PO4)を添加して最大容水量の 60%に水分含量を調整した後,無添加区とともに暗所 25ºC で 60 日間静置培養し, 経時的にクロロホルム燻蒸抽出法によりバイオマス K を定量した。バイオマス K 量は CNP 源添加後 5 日目で最大となり,無添加区のおよそ 2 倍 (51.4–71.2 mg K kg− 1 乾土)まで増加した後,無添加区の値 (25.2–44.0 mg K kg− 1 乾土)まで漸減した。これらの減少から推定したバイオマス K の代謝回転時間は 80.4–98.5 日の範囲であり, 稲の一作期間であるおよそ 100 日とほぼ一致した。この結果から,バイオマスは K の貯蔵源のみならず供給源としても水田土壌において重要な役割を果たす可能性が示唆された。

2 )クロロホルム燻蒸抽出法によりバイオマスルビジウム (Rb)を求めるために必要な k ファクター(溶出率; kRb) の値を算出した。安城水田土壌, 大曲 E 中 2 区および 3区水田土壌からそれぞれ培養した細菌および糸状菌を 0.15 M 塩化ナトリウム溶液で懸濁し, 菌体接種源とした。細菌または糸状菌懸濁液を湿潤土へ接種後クロロホルム燻蒸抽出法によって抽出定量した Rb と非燻蒸土壌中の Rb の抽出量の差分を,硝酸煮沸法によって測定した菌体 Rb 量で除することで細菌および糸状菌の k ファクター値 (kRbb 値および kRbf 値)を算出した。kRbb 値および kRbf 値から土壌中の細菌と糸状菌の存在比 0.35:0.65 を用いて kRb 値を算出した結果, 安城土壌, 大曲 E 中 2 区および 3 区土壌でそれぞれ 0.78,0.71,0.81 となり,バイオマス Rb の k ファクター値として平均値である 0.77 を提案した。なお,安城土壌の kRbb 値は kRbf 値より有意に高く(P < 0.05),この結果は同様に安城土壌から算出されたバイオマス K の k ファクター値が糸状菌より細菌で高かったことと一致した。これには安城土壌の微生物群集組成が反映されたものと考えられた。バイオマス Rb の k ファクター値を推定したのは本研究が初めてであり,水田土壌に限られている。圃場管理の異なる土壌においてバイオマス Rb を測定する場合は, 新たに kRb 値を算出する必要がある。

3) 定常状態におけるバイオマス K の代謝回転時間の解明に資するために, Rb を Kのトレーサーとして利用した推定を試みた。安城土壌 10 g に塩化ルビジウムおよび CNP 源を添加して最大容水量の 60%に水分含量を調整した後,無添加区とともに暗所 25ºC で 80 日間静置培養し,経時的にクロロホルム燻蒸抽出法によりバイオマス Rb および K を定量した。バイオマス Rb は RbCNP 源添加 5 日後に 0.73 mg Rb kg− 1 乾土まで増加し, 30 日間かけて漸減したが, 40 日目に 0.61 mg Rb kg− 1 乾土まで有意に増加し,再度減少した (P < 0.01)。バイオマス K は RbCNP 源添加 5 日後に 67.4 mg K kg− 1 乾土まで増加し, 80 日間かけて無添加区の値まで漸減した。培養 40 日目以降のバイオマス K には有意な減少は見られず,40 mg K kg− 1 乾土前後でほぼ一定であった。また,無添加土壌との間にも有意差は検出されなかった。このことから, 40 日目以降のバイオマス K は定常状態へ移行している可能性が示唆された。培養 30–60 日間のバイオマス Rb の有意な増減から,5–30 日間および 40–80 日間のバイオマス Rb の動態をそれぞれ第 1 相および第 2 相とみなすことができると考えられた。第 2 相の経時変化から推定されたバイオマス Rb の代謝回転時間は 121 日であった。Rb が K のトレーサーとしての挙動を示したとみなすと,第 2 相で示された代謝回転時間 121 日は培養 40 日以降の定常状態におけるバイオマス K の代謝回転時間を反映している可能性があると考えられた。以上より,定常状態のバイオマス K 量 (およそ 40 mg K kg− 1 乾土)は 121 日で代謝回転し, イネの一般的な K の吸収量 (130 kg K ha− 1 )のおよそ 30%に相当する Kを放出すると見積もられた。この値はいわば地力 K としてバイオマスが K の供給源として重要なはたらきを担っていることを示唆していると考えられた。

以上より, 養分添加後のバイオマス K の経時変化から推定した代謝回転時間は 80.4–98.5 日の範囲であった。また, バイオマス Rb の経時変化から解析した定常状態におけるバイオマス K の代謝回転時間は 121 日と推定された。本研究ではこれまで土壌中の K の主な存在形態と考えられていた無機質画分の K に新たな概念として生きた画分の K, すなわちバイオマス K を導入し,その機能を評価した。バイオマスの高い K 貯蔵機能に続き, 本研究では新たにバイオマス K の代謝回転時間を明らかにしたことでバイオマスからの K の供給量を把握することが初めて可能となった。

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