脂肪肝におけるホルモン感受性リパーゼの病態生理学意義 : 遺伝子改変マウスを用いた解析
概要
[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名李 騁騁
本研究は、肝臓内に脂質を蓄積させるダイエット(高コレステロール食、高炭水化物
食、高炭水化物+高コレステロール食など)を用いて、HSL、NCEH1、apoA-V の食事
性脂肪肝における意義を、それぞれの欠損マウス(Lipe-/-、Nceh1-/-、Lipe-/-;Nceh1-/-、
Apoa5-/-、Lipe-/-;Apoa5-/-)を用いて明らかにすることを目的とした。また、ヒトの HSL
欠損は脂肪肝、脂質異常症、インスリン抵抗性、糖尿病のリスクとなることが知られてい
るが、これらのモデルにおいて、脂肪肝に伴う糖脂質代謝異常についても、合わせて検討
した。結果として、以下のことが明らかになった。
1.
様々な脂肪肝を誘発するダイエットによる生理的な脂肪肝のモデルにおいて、HSL
欠損は肝臓内 CE 蓄積をもたらすことが明らかとなった。
2.
HSL が肝臓内 CE 含量の制御に必須な役割を果たすことのメカニズムとして、肝臓
遺伝子発現の検討から、HSL は、他の脂質代謝系遺伝子の発現変化を介してではな
く、HSL の CE 水解酵素活性を介して CE 含量を制御している可能性が高いことが
示唆された。
3.
NCEH1 欠損マウスでの検討から、食事性脂肪肝における CE 蓄積において、HSL
以外のリパーゼ(NCEH1)の寄与は少ないことが示唆された。
4.
apoA-V 欠損マウスでの検討から、食事性脂肪肝における肝臓内 CE 蓄積や、CE 蓄
積の HSL 欠損によるさらなる増加には、apoA-V に依存した肝臓への CM や
VLDL などの TRL 取り込みが必要である可能性が示唆された。
以上、食事性脂肪肝の生理的なモデルにおいて、HSL や apoA-V が、脂肪肝における
CE 蓄積に重要な役割を果たすことが、今回の研究から強く示唆された。本研究は、脂肪
肝の今後の更なるメカニズム解明、新たな治療標的同定において重要な貢献をなすと考え
られる。
よって本論文は博士( 医 学 )の学位請求論文として合格と認められる。