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大学・研究所にある論文を検索できる 「O/Wエマルションからの香気放出挙動に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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O/Wエマルションからの香気放出挙動に関する研究

田丸, 峻次 TAMARU, Shunji タマル, シュンジ 九州大学

2020.03.23

概要

食品の香りは、その食品のおいしさに寄与しており、香りは消費者が食品を選択する際に重要な指標となる。食品内に含まれる香気成分は、主にその香気成分の分配係数によって各相内に含まれる量が決定する。そこで本研究では、脂質を含んだモデル食品である Oil-in-Water(O/W)エマルションに対して、複数の香気成分を添加し、それらの放出挙動と香気成分の分配係数との関係を調査することを目的とした。O/W エマルションからの香気成分の放出は、油相、水相、気相の3相が関係している現象であることから、本研究では、オクタノール-水分配係数(log Pow)、水-空気分配係数(log Pwa)、オクタノール-空気分配係数(log Poa)の3種類の分配係数と香気放出挙動の関係を検討した。

O/W エマルションは、連続相の 1.0 wt%デカグリセリンモノラウリン酸エステル水溶液に対して、分散相のキャノーラ油を分散相含有率 1, 5, 10, 20, 40 %(v/v)となるように混合し、プレミックス膜乳化法によって油滴が単分散となるように調製した。香気成分は Limonene、Ethyl hexanoate、 2-Methylpyrazine、Nonanal、Benzaldehyde、Ethyl benzoate、ɑ-Terpineol、Geraniol、Benzyl alcohol、Octanoic acid を終濃度が 100 ppm となるように添加してヘッドスペースがないようにバイアルに移し替え攪拌し、添加した香気成分を油水間で平衡化させた後使用した。

まず、気液平衡状態において気相に放出した香気成分をシリンジにより採取し、ガスクロマトグラフィーによって各香気成分の放出濃度を測定した。その結果、分散相含有率の増加に伴い、香気成分の放出濃度は減少した。各分配係数との関係を検討したところ、分散相含有率によらず log Pwaおよび log Poa と香気放出濃度との間に高い相関が認められた。このことから、気液平衡状態における O/W エマルションからの香気放出濃度の予測に log Pwa および log Poa のような2相間の分配係数が有効であることが示された。

次に、ヘッドスペースに窒素を通気することで非平衡状態を維持し、香気成分の放出速度と分配係数との関係を検討した。窒素通気時間に対する香気成分放出量の増加量を香気成分の放出速度と定義し、それぞれの香気成分で算出した。その結果、気液平衡状態の場合と同様に log Poa と放出速度の間に高い相関が認められた。このことから、気液平衡状態だけでなく、非平衡状態においても log Poa を用いることで香気放出挙動を予測できる可能性が示された。

最後に、Direct Analysis in Real Time Mass Spectrometry(DART-MS/MS)を用いて、O/Wエマルションからの放出直後の香気放出挙動を測定した。測定用バイアルに O/W エマルションを移し替えた直後 18 秒間の測定時間に対する検出イオンの増加率を放出直後の放出速度と定義し、分配係数との関係を調べた。その結果、これまでの傾向とは異なり log Poa とは相関が認められず、 log Pow と高い相関を示した。また、log Pow 値が低い香気成分ほど放出速度が減少していた。すなわち、放出直後に関しては香気成分の疎水性が O/W エマルションからの香気放出挙動に大きく影響を及ぼすことが示された。

以上より、本研究では、3種類の分配係数と、O/W エマルションからの香気放出挙動の関係を気液平衡時、非平衡時、気相への放出直後の3段階で検討した。その結果、香気成分を添加した O/Wエマルションを、測定用バイアルに移した直後は、水相に含まれる疎水度の高い香気成分がまず気相へと移行するため、log Pow 値が大きく放出速度に影響を及ぼすが、時間が経ち気液平衡状態に近づくにつれて O/W エマルション中の油滴への影響が大きくなり、log Poa 値によって放出挙動の予測が可能となることが示された。本論文は、O/W エマルションのような複数の相を持つ物質からの香気放出挙動を、二相間の分配係数を用いることでより簡便に予測し、効率的な加工食品の開発に応用できると考えられる。

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