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大学・研究所にある論文を検索できる 「Identification and functional analysis of sleep-wake regulating residues in Ca2+/calmodulin dependent protein kinase IIβ(CaMKIIβ)」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Identification and functional analysis of sleep-wake regulating residues in Ca2+/calmodulin dependent protein kinase IIβ(CaMKIIβ)

張, 千惠 東京大学 DOI:10.15083/0002004977

2022.06.22

概要

睡眠は昆虫から哺乳類まで幅広い生物種で保存されている生理現象である。睡眠は生存に必須であり、睡眠量は恒常的に制御されている。これまでの睡眠研究において、睡眠覚醒の切り替えを担う神経回路や睡眠覚醒に関わる神経核の働きを修飾する脳内物質が明らかになってきた。しかしながら、未だに睡眠の恒常性維持機構については解明されていない。

 近年の研究から、睡眠覚醒制御に関与する重要な因子のひとつとしてカルシウム/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼIIβ(CaMKIIβ)が報告された。CaMKIIβはカルシウムシグナルに応答してさまざまな下流の標的分子をリン酸化するとともに、自己リン酸化を介して自身の活性を調節することが知られている。その後の研究により、脳タンパク質のリン酸化レベルが睡眠欲求の増加と共に上昇することが観察された。また、覚醒中にリン酸化が上昇する脳タンパク質の中にはCaMKIIβも報告されており、よく知られた活性化自己リン酸化残基の他にも複数の残基がリン酸化されることが報告されている。しかしながら、これらの残基のリン酸化がCaMKIIβの活性と睡眠の調節に対してどのように寄与するかは不明である。

 私は、睡眠覚醒制御に重要な役割を担うCaMKIIβ上のリン酸化残基があると仮定し、その残基を明らかにすることを目的とした。そのために、CaMKIIβ上でリン酸化の標的となりうる全てのセリン/スレオニン残基について擬似リン酸化変異体を作製し、それらをマウス脳に発現させて睡眠覚醒表現型を測定するin vivoスクリーニングを行った。これによって、CaMKIIβの睡眠覚醒制御に関与する残基を網羅的に同定し、CaMKIIβの分子状態が睡眠にどのように寄与するのかを明らかにすることを目指した。

 最初にCaMKIIβ上のセリン/スレオニン残基をそれぞれ負電荷の側鎖を持つアスパラギン酸に置換した一残基置換の擬似リン酸化変異体を用いて、in vivoスクリーニングを行った。その結果、睡眠時間を増加させる複数の新規変異体を同定した。次に、CaMKIIβの睡眠促進効果に対して抑制に働くリン酸化残基があると仮定し、その残基の同定を目指した。共同研究により、最も睡眠促進効果が高かったアスパラギン酸一残基置換変異に、他のCaMKIIβ上のセリン/スレオニン残基をアスパラギン酸に置換した二残基置換の擬似リン酸化変異体を用いてin vivoスクリーニングを行った。その結果、睡眠促進効果が抑制される複数の変異体を同定した。以上のスクリーニングによってCaMKIIβの睡眠促進に関わる残基と、睡眠促進効果の抑制に関わる残基両方を同定した。これは、CaMKIIβによって睡眠を正にも負にも制御することが可能であることを示唆する。

 最後に共同研究により、睡眠促進効果が最も強かった変異体を発現させたマウスと睡眠欲求が増加していることが期待される断眠処理をしたマウスについて、質量分析によって脳内におけるリン酸化プロテオミクス解析を行った。それにより、睡眠促進効果のある変異体を発現させたマウス脳内では、CaMKIIβ野生型を発現させたマウス脳内と比べ、タンパク質のリン酸化亢進が観察された。また、断眠処理をしたマウスでも、断眠処理なしのマウスと比べて脳内のタンパク質のリン酸化亢進が観察された。このことから、CaMKIIβ変異体の睡眠促進効果は睡眠欲求の増加と共通した機構に関与していることが示唆された。

 本研究では、睡眠覚醒制御に重要な役割を担うCaMKIIβ上のリン酸化残基があると仮定し、その残基を明らかにすることを目的として、擬似リン酸化変異体をマウス脳に発現させて睡眠測定を行う網羅的なin vivoスクリーニングを行った。その結果、睡眠促進効果を示す複数の新規残基、およびその睡眠促進効果を抑制する複数の新規残基を同定することに成功した。本研究は、睡眠覚醒制御に重要なCaMKIIβの残基を同定したことにより、CaMKIIβのリン酸化状態変化による睡眠の恒常性維持機構の解明につながることが期待される。

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