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書き出し

経口胃管および経鼻胃管が未熟児の瓶哺乳時の吸啜圧に及ぼす影響

小松, 岳 神戸大学

2023.09.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Influences of Orogastric and Nasogastric Tubes
on Sucking Pressure during Bottle Feeding in
Immature Infants

小松, 岳
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-09-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8720号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100485904
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)
学 位 論 文 の 内 容 要 旨

Influences of Orogastric and Nasogastric Tubes on Sucking Pressure
during Bottle Feeding in Immature Infants

経口胃管および経鼻胃管が未熟児の瓶哺乳時の吸啜圧に及ぼす影響

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
耳鼻咽喉科頭頸部外科学
(指導教員:丹生 健一教授)
TAKESHI KOMATSU
小松 岳

【背

景】

早産児や低出生体重児は、未熟性や呼吸窮迫症候群により出生直後から経口哺乳が困難な場合が
多い。神経系や心肺機能の低下により吸啜能力は不十分なため、経管栄養を利用し徐々に成熟し
ていく。これらの乳児は、成熟するまでの間、経口胃管(OG)チューブと経鼻胃管(OG)チュー
ブとの 2 種類の経管栄養が用いられ、経管栄養を留置しつつ経口哺乳を練習することになる。こ
れまでに、乳児の経口哺乳の評価に吸啜圧を用いた研究がいくつか報告されているが、OG チュー
ブや NG チューブが吸啜圧に与える影響について検討した研究はみられない。そこで、本研究で
は、未熟な乳児に適切な経管栄養方法を選択するための新たなエビデンスを提供するため、吸啜
圧を測定することにより、
NG チューブおよび OG チューブが経口哺乳に及ぼす影響を検討した。
【方

法】

対象症例: 2019 年 4 月から 2020 年 11 月の間に、兵庫県立こども病院総合周産期母子医療セ
ンターの NICU または GCU で、OG チューブまたは NG チューブ挿入中の乳児を募集した。対
象となる乳児は、妊娠 34 週までに出生し、口腔、鼻腔、喉頭、食道、胃、腸の先天異常、手術を
要する心疾患、染色体異常、明らかな脳機能障害を有していなかった。病院の方針として、OG チ
ューブで経管栄養を開始し、乳児の呼吸状態が改善した時点で NG チューブに変更した。
測定方法: NICU や GCU で使用されている人工乳首(SofTouch™ Peristaltic PLUS SSS サイ
ズ)を使用した。人工乳首の先端の乳首穴から 1mm の位置に外径 2mm、内径 1mm のシリコン
チューブを取り付け、その先端に半導体圧力計を接続した。圧力はアンプで増幅し、データロガー
を用いて記録した。哺乳開始後 5 分間、吸啜圧とその間の哺乳量を測定し、測定した波形のうち、
-10mmHg 以下、10 秒以上、2 秒以上の休止がない連続波形を解析対象とした。同じミルクを使
い、同じ呼吸条件で、経管栄養方法変更時(1:OG チューブから NG チューブへ、2:NG チュー
ブから経口摂取(NG チューブ抜去)へ)の瓶哺乳時の吸啜圧を測定した。
吸啜圧の解析:

吸啜圧は、平均吸啜圧(mmHg)を算出し、経管栄養方法変更後の平均吸啜圧

を変更前の平均吸啜圧で除して吸啜圧比とした。吸啜面積は、吸啜開始時の圧力(mmHg・s)か
ら計算する面積 1 と、0mmHg(mmHg・s)から計算する面積 2 の 2 条件で算出した。経管栄養
方法変更後の平均面積を変更前の平均面積で割り、面積比とした。摂取量比率は、経管栄養方法変
更後の摂取量(mL)を変更前の摂取量(mL)で割って算出した。更に、出生体重により、体重
1000g 未満と 1000g 以上の乳児に経管栄養方法変更前後の平均吸啜圧、面積 1、面積 2、摂取量を
分析した。
【結

果】

14 名の早産児(OG-NG 群、NG-経口栄養(NG 抜去)群各 7 名)が参加した。OG-NG 群は平均
在胎週数 26.5±1.5 週、平均出生体重 993±252g であり、OG チューブから NG チューブへの変
更は日齢 69.2±17.5 日、修正週数 36.9±1.3 週、体重 2128±267g であった。NG-NG 抜去群は
平均在胎週数 26.8±3.6 週、平均出生体重 938±325g であり、NG チューブから経口栄養への変

更は日齢 78.1±20.5 日、修正週数 38.7±2.1 週、体重は 2271±275g であった。経管栄養方法を
OG チューブから NG チューブに変更すると、吸啜圧が有意に上昇した(p = 0.044)。また、統計
的有意差は認められなかったが、面積 1(p=0.066)、面積 2(p=0.078)、摂取量(p=0.091)も
OG チューブから NG チューブへ変更後に増加する傾向がみられた。一方、NG チューブから経口
摂取(NG チューブ抜去)に変更した前後では、吸啜圧、面積 1、面積 2、摂取量に有意差は認め
られなかった。体重 1000g 未満の乳児では、OG チューブから NG チューブへの変更時に面積 1
のみに有意差が認められた。体重 1000g 未満・1000g 以上の両群とも OG チューブから NG チュ
ーブへの授乳方法の変更後は吸啜圧、面積 1、面積 2、摂取量が増加する傾向にあった。一方、NG
チューブから経口摂取に変更する前後の吸啜圧、面積 1、面積 2、摂取量には、両群とも有意差は
みられなかった。
【考

察】

安全な哺乳には、吸啜・嚥下・呼吸の協調が重要であることはよく知られているが、これまで、早
産児における経管栄養が吸啜に及ぼす影響について検討した先行研究はない。本研究では、早産
児における経管栄養の選択に関するエビデンスを得るため、OG チューブと NG チューブが吸啜
に及ぼす影響を検討した。OG-NG 群では、OG(前)と NG(後)の間で吸啜圧に有意な差が認
められた一方、NG-経口栄養(NG 抜去)群では、吸啜圧に有意な差は見られなかった。また、体
重 1000g 未満の乳児と 1000g 以上の乳児を別々に分析したところ、両群において同様の結果が得
られ、OG チューブは吸啜機能に影響を与える可能性があるが、NG チューブは影響を与えないこ
とが示唆された。OG(前)と NG(後)で有意差が出たのは、OG チューブが口腔内にあるため、
唇と人工乳首の間に隙間ができ、十分な陰圧がかからなかったことが原因と考えられ、十分な吸
啜能力を持つ乳児でもミルクを摂取しきれず、吸啜能力の過小評価につながると思われる。これ
らの結果から、OG チューブが乳児の吸啜機能に影響を与える可能性があるため、経管栄養を行う
際には NG チューブを選択することが望ましいと考えられる。しかし、新生児は一般的に口腔で
はなく鼻腔で呼吸するため、特に未熟児では本研究のように OG チューブが第一選択として使用
されることが多い。OG チューブを最初に選択した場合でも、OG チューブを選択した適応理由が
解消された後は、直ちに NG チューブに変更することを推奨される。NG チューブは吸啜に影響
を及ぼさないため、十分に経口摂取が可能になるまで NG チューブを維持して経口哺乳練習を継
続することが許容されると考えられる。
【結

論】

未熟児は、経口摂取で十分な栄養が得られるようになるまで、経管栄養に頼りながら経口摂取を
行っているが、経管栄養が吸啜圧に及ぼす影響については、十分に検討されていない。そこで、
NG チューブと OG チューブが経口摂取に及ぼす影響を検討した。その結果、NG チューブは OG
チューブに比べ、吸啜圧の点で優れていることがわかった。

神戸大学大学院医学(
系)研究科(博士課程)

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
甲第 3
309号





受付番号

小松岳

I
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論文題目

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経口胃管および経鼻胃管が未熟児の瓶哺乳時の
吸啜圧に及ぼす影轡

王 査
審査委員

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副 査

Vi
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副 査

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exami
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叶 /rr-区
仄森枯}

峠摩鬱:

(要旨は 1
, 000字∼ 2, 000字程度)




景】

早産児や低出生体重児は、末熟性や呼吸窮迫症候群により出生直後から経口哺乳が困難な場合が多い。
神経系や心肺機能の低下により吸啜能力は不十分なため、経管栄贅を利用し徐々に成熟していく 。これ
らの乳児は、成熟するまでの間、経口胃管 (
OG
)チュープと経恥胃管 (
OG
)チュープとの 2種類の経
管栄獲が用いられ、経管栄蓑を留置しつつ経口哺乳を練習することになる。 これまでに、乳児の経口哺
乳の評価に吸啜圧を用いた研究がいくつか報告されているが、 OGチュープや NGチューブが吸啜圧に
与える影態について検討した研究はみられない。そこで、本研究では、未熟な乳児に適切な経管栄義方
法を選択するための新たなエビデンスを提供するため、吸啜圧を測定することにより、 NGチューブお
よび OGチューブが経口哺乳に及ぼす影響を検討した。

【方法】
対象症例:

2019年 4月から 2020年 1
1月の間に、兵庫県立こども病院総合周産期母子医療センター

、 OGチュープまたは NGチュープ挿入中の乳児を募集した。対象となる乳児
の NICUまたは GCUで

4週までに出生し、口腔、帥腔、喉頭、食道、胃 、腸の先天異常、手術を要する心疾患、染
は、妊娠 3
色体異常、明らかな脳機能障害を有していなかった。病院の方針として、 OGチューブで経管栄義を開
始し、乳児の呼吸状態が改善した時点で NGチューブに変更した。
測定方法:

NICU や GCU で使用されている人工乳 首 (SoITouch™ P
er
i
s
t
al
t
i
cPLUS888サイズ)を

、内径 1mmのシリコンチューブを取
使用した。人工乳首の先端の乳首穴から 1mmの位置に外径 2mm
り付け、その先端に半導体圧力計を接続した。圧力はアンプで増幅し、データロガーを用いて記録した。
g以下、 1
0秒以
哺乳開始後 5分間、吸啜圧 とその間の哺乳菫を測定し、測定した波形のうち、 ・lOmmH

、 2秒以上の休止がない連続波形を解析対象とした。同じミルクを使い、同じ呼吸条件で、経管栄養

:OGチュープから NGチュ ープヘ、 2:NGチュープから経口摂取 (NGチューブ抜去)
方法変更時( 1
へ)の瓶哺乳時の吸啜圧を測定した。
吸啜圧の解析:

吸啜圧は、平均吸啜圧 (mmH
g)を算出し、経管栄養方法変更後の平均吸啜圧を変更

mmH
g• s
) から計算する
前の平均吸啜圧で除して吸啜圧比とした。吸啜面積は、吸啜開始時の圧力 (
面積 1と
、 OmmH
g(
mmHg• s
) から計算する面積 2の 2条件で算出した。経管栄養方法変更後の平
均面積を変更前の平均面積で割り、面積比とした。摂取量比率は、経管栄養方法変更後の摂取戴 (
mL)
を変更前の摂取星 (
mL
)で割って算出した。更に、出生体重により、体重 1000g末満と 1
0
0
0
g以上の
乳児に経管栄養方法変更前後の平均吸啜圧、面租 1
、面和 2、摂取羹を分析した。
【結果】

1
4名の早産児 (
OG-NG群
、 NG
経 口栄蓑 (NG抜去)群各 7名
) が参加した。 OG-NG群は平均在胎
週数 2
6.
5土 1
.5週
、 平均出生体重 9
93土 252gであり、 OGチュープか ら NGチューブヘの変更は日齢

6
9
.
2士 1
7
.
5日、修正週数 3
6
.
9士1
.3週、体重 2
128士267gであった。NGNG抜去群は平均在胎週数 2
6
.
8
土3
.
6週、平均出生体重

938土 3
25
gであり、 NGチュープか ら経口栄挫への変更は 日齢 78
.
1士2
0
.5日


修正週数 3
8
.
7土 2
.
1週、体重は 2271土 275gであった。経管栄蓑方法を OGチューブから NGチューブ
に変更すると、吸啜圧が有意に上昇した(
p=0
.
0
4
4)
。また、統計的有意差は認められなかっだが、面
p=0
.
0
6
6)、面積 2 (
p=0
.
0
7
8)
、摂取最(
p=0
.
0
9
1) も OGチューブから NGチューブヘ変更後
積 1(
に増加する傾向がみられた。 一方
、 NGチューブから経口摂取 (NGチューブ抜去)に変更した前後で
、面積 2、摂取最に有意差は認められなかった。体重 1
000g末満の乳児では、 OG
は、吸啜圧、面積 1
チュープから NGチューブヘの変更時に面積 1のみに有意差が認められた。体重 1
000g未満・ 1000g
、面積 2、摂取
以上の両群とも OGチューブから NGチュープヘの授乳方法の変更後は吸啜圧、面租 1
、面租
最が増加する傾向にあった。一方
、 NGチューブから経口摂取に変更する前後の吸啜圧、面積 1

2、摂取贔には、両群とも有意差はみられなかった。
【考察】
安全な哺乳には、吸啜 • I
燕下 ・呼吸の協調が重要であることはよく知られているが、これまで、早産児

における経管栄養が吸啜に及ぼす影態について検討した先行研究はない。本研究では、早産児における
経管栄義の選択に関するエビデンスを得るため、 OGチュープと NGチュープが吸啜に及ぼす影態を検
、 NG経 ロ
討した。OG・NG群では、 OG (前)と NG (後)の間で吸啜圧に有意な差が認められた一方
栄蓑 (
NG抜去)群では、吸啜圧に有意な差は見られなかった。また 、体重 1000
g未満の乳児と 1
000g
以上の乳児を別々に分析したところ、両群において同様の結果が得られ、 OGチュープは吸啜機能に影


態を与える可能性があるが、 NGチューブは影態を与えないことが示唆された。 OG (前)と NG (
で有意差が出たのは、 OGチューブが口腔内にあるため、唇と人工乳首の間に隙間ができ 、十分な陰圧
がかからなかったことが原因と考えられ、十分な吸啜能力を持つ乳児でもミルクを摂取しきれず、吸啜
能力の過小評価につながると思われる 。 これらの結果から、 OGチュープが乳児の吸啜機能に影態を与
える可能性があるため、経管栄蓑を行う際には NGチューブを選択することが望ましいと考えられる 。
しかし、新生児は一般的に口腔ではなく昴腔で呼吸するため、特に末熟児では本研究のように OGチュ
ーブが第ー選択として使用されることが多い。 OGチューブを最初に選択した場合でも、 OGチューブ
を選択した適応理由が解消された後は、直ちに NGチューブに変更することを推奨される。NGチュー
ブは吸啜に影孵を及ぼさないため、十分に経口摂取が可能になるまで NGチュープを維持して経口哺乳
練習を継続することが許容されると考えられる。

末熟児は、経口摂取で十分な栄養が得られるようになる まで、経管栄養に頼りながら経口摂取を行っ
ているが、経管栄養が吸啜圧に及ぼす影孵については十分に検討されていなかった。本研究は、 NGチ
ュープと OGチュープが経口摂取に及ぼす影態を検討し、 NGチュープは OGチュ ーブに比べ、吸啜圧
の点で優れていることを明らかにした価値ある業績であると考える。よって本研究者は、博士(医学)

学位を得る賓格があると認める。

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