Effects of high-flow nasal cannula oxygen therapy on oral intake of do-not-intubate patients with respiratory diseases

概要

主論文の要旨

Effects of high-flow nasal cannula oxygen therapy
on oral intake of do-not-intubate patients
with respiratory diseases
Do-not-intubate 条件下の呼吸器疾患患者における
高流量鼻カニュラ酸素療法の経口摂取への影響

名古屋大学大学院医学系研究科
病態内科学講座

総合医学専攻

呼吸器内科学分野

（指導：石井 誠
柴田 寛史

教授）

【緒言】
高流量鼻カニュラ(high-flow nasal cannula: HFNC)酸素療法は、加温加湿した 30〜
60L/分の高流量の酸素空気混合ガスを鼻腔内に投与することで、呼吸不全の改善をは
かる治療法である。適応疾患としては、間質性肺炎、肺炎、敗血症、多発外傷、悪性
疾患などがあり、さまざまな疾患における呼吸不全に対して広く使用されている。さ
らに、終末期呼吸器疾患患者の呼吸困難や低酸素血症の緩和のために用いられること
がある。しかしながら、経口摂取を維持することに有用かどうかは不明確である。今
回我々は、do-not-resuscitate(DNR)、do-not-intubate(DNI)条件下の終末期呼吸器疾患患
者における HFNC 酸素療法の経口摂取への有用性について検討した。
【方法】
以下のような単施設の後方視的観察研究を行った。2013 年 8 月から 2016 年 12 月の
間に、刈谷豊田総合病院呼吸器・アレルギー内科において、DNR および DNI 条件下
で、死亡時に HFNC または RM 酸素療法が行われていた、終末期進行性呼吸器疾患の
患者を対象とした。HFNC または RM 酸素療法開始時に、既に経口摂取が困難であっ
た例は除外した。死亡時に使用していた酸素デバイスにより、RM 群と HFNC 群に分
けて比較検討した。電子カルテからデータを収集し、HFNC または RM 酸素療法開始
時からの生存期間、固形物の摂取期間、飲水期間について比較した。また、年齢、性
別、原疾患、血液検査データ、HFNC または RM 装着前の酸素デバイス、SpO2 、鎮静
薬の使用歴、入院期間についても比較検討した。
包含過程を示すフローチャートを Figure 1 に示した。死亡時に HFNC または RM が
使用されていた 60 名のうち、それぞれの酸素療法開始時に既に経口摂取困難であっ
た 17 名を除外し、43 名の患者データを解析した。RM は 36 名、HFNC は 7 名に適用
された。RM が使用された 36 名のうち、13 名は RM から HFNC に変更された。その
結果、死亡時の使用酸素デバイスは RM 23 名(RM 群)、HFNC 20 名(HFNC 群)となっ
ていた。
統計学的評価のために、t 検定、カイ二乗検定、Fisher の正確確率検定を用いた。
Kaplan-Meier プロットは、生存期間または経口摂取期間を比較するために使用した。
いずれも P <0.05 を統計的に有意とした。
【結果】
対象 43 名の背景を Table 1 に示した。年齢は、HFNC 群(70.4±11.6 歳, n=20)が RM
群(79.0±8.1 歳, n=23)より有意に低かった。性別は、両群とも男性が有意に多かった。
原疾患の内訳は、HFNC 群では、肺癌(n=10, 50%)、間質性肺疾患(n=9, 45%)、悪性リ
ンパ腫(n=1, 5%)、RM 群では、肺癌(n=13, 56.5%)、間質性肺疾患(n=9, 39.1%)、悪性
胸膜中皮腫(n=1, 4.4%)であった。HFNC または RM 装着前 24 時間以内に測定された
白血球数、血清 CRP、血清クレアチニンは、両群間に有意差はなかった。
HFNC 群では、13 名の患者が HFNC 装着前に 0-5 日間(中央値 1 日)RM を使用して

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いた。一方、一度 HFNC を装着した後に RM に変更することはなかった。HFNC の継
続 率 (20/20, 100%)は RM の 継 続 率(23/36, 63.9%)よ り 有 意 に 高 か っ た (P＝ 0.002)。
HFNC 群では、HFNC 装着後 30 分以内に測定した SpO 2 が HFNC 装着前に比べて有意
に高くなった(92.8±3.3% vs. 87.0±5.7%, P <0.001)。HFNC 群の死亡時における流量と
FiO 2 は、いずれも導入時より有意に高かった。
生 存 期 間 (8.9 日 vs. 3.1 日 , P=0.005)、 固 形 物 の 摂 取 可 能 期 間 (7.8 日 vs. 0.3 日 ,
P=0.002)、および飲水可能期間(7.8 日 vs. 0.3 日, P=0.002)において、いずれも HFNC
群の方が RM 群と比べて有意に長かった。HFNC または RM を装着してからの生存期
間、固形物の摂取あるいは飲水可能期間の Kaplan-Meier プロットを Figure 2 に示した。
すべてのプロットにおいて、HFNC 群の方が RM 群と比べ有意に長かった。
【考察】
本研究で得られた結果は、以下の通りであった。1）HFNC 群は、明らかな副作用は
なく、一時的に酸素化を改善した。2）HFNC 群は、RM 群より生存期間が有意に長か
った。3）HFNC 群は、RM 群より固形物の摂取および飲水可能期間が有意に長かった。
本研究において、DNR および DNI 条件下では、HFNC 酸素療法は RM 酸素療法より
も進行性呼吸器疾患患者における終末期の経口摂取期間を延ばすことが示唆された。
酸素療法は、肺癌や間質性肺疾患などの終末期呼吸器疾患の緩和ケアにおいて、極
めて重要な役割を果たしている。特に、HFNC 酸素療法は、簡易酸素マスクや鼻カニ
ュラを用いた酸素療法と比較して、解剖学的死腔にたまった呼気ガスの洗い出 しや
PEEP 効果などの作用があることが確立している。DNI 条件下の終末期間質性肺疾患
患者において、HFNC と非侵襲的陽圧換気の効果を比較した検討では、生存期間は同
等であるものの、忍容性については HFNC の方がより優れているとの報告もある。本
研究においても、HFNC を装着してから死亡に至る間の継続率は 100%と忍容性が高
かった。また、過去には、肺癌を含む進行癌患者において、HFNC の使用により、経
口摂取を妨げずに酸素化および呼吸困難強度が改善されたと報告されている。本研究
においても、HFNC 群では、SpO 2 は HFNC 非装着時に比べ有意に上昇し、生存および
経口摂取期間は RM 群と比べ有意な延長を認めた。この結果から、HFNC 酸素療法に
よる一時的な酸素化の改善は、生存および経口摂取期間を長くすることに寄与すると
推察される。
【結論】
DNR および DNI 条件下、終末期呼吸器疾患患者において、HFNC 酸素療法は、忍容
性が高く、経口摂取を維持することに有用であった。HFNC は、肺癌や間質性肺炎に
よる進行性呼吸不全の患者の緩和医療として、有益な酸素療法である。

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Table 1 Clinical characteristics of patients in HFNC and reservoir mask groups
HFNC

Reservoir mask

(n=20)

P value

(n=23)

Age, years

70.4 ± 11.6 (51-90)

79.0 ± 8.1 (63-93)

0.008*

Male/female

19/1

18/5

0.191

Cause of respiratory failure
Lung cancer

0.533
10 (50%)

13 (56.5%)

Interstitial lung disease

9 (45%)

9 (39.1%)

Malignant lymphoma

1 (5%)

0

Malignant pleural mesothelioma

0

1 (4.4%)

3

White blood cell, ×10 /μL†
Serum C-reactive protein, mg/dL†
Serum creatinine, mg/dL†
Admission, year 2013/2014/2015/2016

11.8 ± 4.1 (7.1-20.3)

10.3 ± 3.8 (3.4-15.4)

(n=15)

(n=11)

6.0 ± 6.1 (0.2-16.7)

10.9 ± 7.5 (0.8-22.6)

(n=15)

(n=11)

1.2 ± 1.4 (0.5-5.9)

0.7 ± 0.3 (0.3-1.1)

(n=15)

(n=11)

4/7/6/3

0/11/8/4

Data are given as mean ± SD (range) or number (%).
*Significantly different (P <0.05) between the groups.
Chi-square test, Fisher’s exact test, or unpaired t-test was used.
HFNC, high-flow nasal cannula.
†Data were collected within 24 hours prior to fitting HFNC or reservoir mask.

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0.362
0.100
0.171
0.162

Fig. 1 Flow diagram of participants
Flow of participants. DNR: do-not-resuscitate. DNI: do-not-intubate. HFNC: high-flow nasal cannula

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Fig. 2 Kaplan-Meier survival curves in HFNC group (n=20) and reservoir mask group (n=23)
A: Kaplan-Meier plots of the probability of survival from starting HFNC (HFNC group) or reservoir mask therapy
(reservoir mask group) to death. There was a significant difference in survival (P <0.001).
B/C: Kaplan-Meier plots of the probability of survival from starting HFNC or reservoir mask therapy to the point
when eating solids (Fig. 2B) or drinking liquids (Fig. 2C) stopped. There were significant differences in
durations of eating (P = 0.001) (Fig. 2B) and drinking (P <0.001) (Fig. 2C) between the groups.

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