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書き出し

糞便細菌叢の異常を伴う初期の非アルコール性脂肪肝疾患において下部消化管の粘膜関連細菌叢は変化しない

朝治, 直紀 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Constitution of mucosa-associated microbiota in
the lower digestive tract does not change in
early stage of non-alcoholic fatty liver
disease with fecal dysbiosis

朝治, 直紀
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8496号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100482244
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)

学位論文の内容要旨

Constitution of mucosa-associated microbiota in the lower digestive
tract does not change in early stage of non-alcoholic fatty liver
disease with fecal dysbiosis

糞便細菌叢の異常を伴う初期の非アルコール性脂肪肝疾患において
下部消化管の粘膜関連細菌叢は変化しない

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
消化器内科学
(指導教員:児玉
朝治

裕三 教授)
直紀

【背景】
非アルコール性脂肪肝(NAFLD) は肝臓におけるメタボリックシンドロームの表現型で
あり、罹患率は近年世界中で増加の一途をたどっている。一方で腸内細菌叢は、メタボリッ
クシンドロームに関連する多くの疾患の病因に関与していると報告されている。腸内細菌
叢の異常は腸管透過性亢進を引き起こし、門脈循環を介した病原体関連分子パターン
(PAMPs)の肝臓への流入や酸化ストレスが NAFLD の病態の一つとして考えられている。
そのため、NAFLD で腸内細菌がどのように変化しているかを解明することは非常に重要で
ある。
腸内細菌叢は、腸管腔内細菌叢(糞便細菌叢)と粘膜表層のムチン層内に生息する粘膜関
連細菌(Mucosa-Associated Microbiota:MAM) で構成され、それぞれの菌叢構成は異な
ることが知られている。MAM は粘膜表層に存在し粘膜上皮のバリア機能や免疫系に直接的
な相互作用をきたしうるため、炎症性腸疾患などの腸疾患や原発性胆汁性胆管炎などの腸
外疾患など、多くの疾患の病因に関与していると報告されている。しかし、NAFLD におい
て、管腔内細菌叢である糞便細菌叢は幅広く研究されているが、MAM の特徴については研
究されておらず、NAFLD と MAM の関係は不明のままである。
【目的】
NAFLD 患者と健常者間で菌叢の構成や多様性を比較して MAM や糞便細菌叢による病
態関与を探索し、NAFLD における MAM の特徴を解析することが、本研究の目的である。
【方法】
2017 年 6 月 1 日から 2019 年 5 月 1 日までの期間に当該研究に参加した NAFLD 患者と
健常者から、傾向スコアマッチを用いて年齢と性別をマッチさせた 7 名ずつを抽出した。
NAFLD の診断は肝生検または画像検査(CT 検査または腹部超音波検査)で行った。対照群
と比較して NAFLD 群では BMI、AST、ALT、総蛋白が高値だった。肝線維化マーカーで
ある Fib-4 index は 2 群間で有意差を認めなかった。
全被検者に下部消化管内視鏡検査を施行し、回腸末端・盲腸・横行結腸・S状結腸・直腸
のそれぞれで細胞診ブラシを用いて愛護的に粘膜を擦過して、ブラシに付着した粘液を
PBS(1ml)に溶解することで粘液サンプル(MAM)を回収した。また、糞便サンプルとして検
査当日の最初の便を回収した。粘液・糞便サンプルは、いずれも-80 度に保存した。QIAamp
PowerFecal DNA Kit (Qiagen, Manchester, UK)のプロトコルに沿って DNA を抽出し、16S
rDNA の V3-V4 領域を標的に 2-step tailed PCR を行い、MiSeq™ system (Illumina, San
Diego, CA, USA)を用いてプロトコル通りにシーケンスを行った。シーケンス後の生データ
の読み取り、リードのトリミングや品質管理、operational taxonomic unit (OTU)定義や分
類学的割り当ては Qiime(version 1.9.0)で行った。菌叢の解析は、α多様性(群内多様性)と
β多様性(群間多様性)の 2 つを評価した。前者は Observed species、Shannon index、Chao1

index の 3 種 類 の 指 標 と 用 い て 対 象 群 内 に お け る 菌 種 の 豊 富 さ (Richness) や 均 等 度
(Evenness)を評価し、後者は Weighted と Unweighted UniFrac 解析を行い permutational
analysis of variance (PERMANOVA)で対象群間での菌叢構成の違いを統計解析した。

【結果】
1. NAFLD と健常者間では、糞便細菌叢の変化に比べ、MAM の変化は限定的であった
まず、全体の菌叢がどのように変化しているかを明らかにするために、NAFLD と健常者
の 2 群間でα多様性(菌種の豊富さと均等度)およびβ多様性(菌叢構成)の比較解析をおこ
なった。糞便細菌叢では、以前の報告と同様に、NAFLD 群でα多様性の減少と NAFLD・
コントロール 2 群間のβ多様性に有意差を認めた。しかし、MAM では、NAFLD 群の回腸
末端で Shannon index の低下とS状結腸で両群間に有意差を認めたが、その他の腸管部位
ではα多様性とβ多様性はいずれも両群間で有意差を認めなかった。
次に、2 群間の糞便において具体的に変化がある菌が、MAM で変化しているかどうかを
解析した。まず、Linear discriminant analysis (LDA) effect size (LEfSe)解析を用いて、
NAFLD 患者の糞便細菌叢で統計学的に有意差のある細菌を属レベルで抽出した。NAFLD
群の糞便では 6 種類(Unclassified Rikenellaceae, Oscillospira, Odoribacter, Coprobacillus,
unclassified clostridiales, Holdemania)の菌が有意に減少していた。これらの菌が MAM に
おいて 2 群間で差があるかを student-t 検定で解析したところ、Odoribacter 属を除く 5 種
類は NAFLD の MAM において減少が認められず保持されていた。
以上の結果から、NAFLD 患者では糞便細菌叢の多様性の低下および菌叢構成に変化が起
きているにも関わらず、下部腸管の MAM では変化が極めて限定的であることが示唆され
た。
2. NAFLD における、一個人内の各部位の MAM のα多様性および菌叢構成の解析
NAFLD の MAM の特徴をさらに明らかにするために、一個人内の各部位の MAM のα
多様性と菌叢構成を比較した。これまでの報告で、健常者は、同一個人内であれば、下部腸
管(回腸末端から直腸)の MAM は、解剖学的部位によらずα多様性および菌叢構成が類似
していることが明らかとなっている。一方で NAFLD では下部腸管の MAM 多様性や菌叢
構成について未だ報告されておらず、菌叢の分布や特徴が明らかになっていない。我々は、
同一個人内での各部位(回腸末端から直腸)における MAM のα多様性および菌叢構成を
NAFLD 群・コントロール群それぞれで比較解析した。上記と同様に、α多様性は Observed
species、Shannon index、Chao1 index の 3 種類の指標と用いて評価、菌叢構成の比較は
Weighted と Unweighted UniFrac 解析の指標を用いて PERMANOVA で菌叢構成の違いを
統計解析した。
各部位ごとに、各被検者の MAM のα多様性および菌叢構成を比較すると、コントロー

ル群と同様に、NAFLD 群でも、同一個人内では解剖学的部位によらず、各部位のα多様性
に有意差を認めず、また菌叢構成の違いを示すβ多様性でも各部位の差を認めなかった。ま
た、NAFLD および健常者ともに、個人内の各部位間の MAM より、個人間の同一部位 MAM
の方がα多様性・菌叢構成ともに差が大きかった。これらのことから NAFLD においても、
一個人内の回腸末端から直腸までの MAM で腸内細菌叢の多様性や分布が異ならないこと
が示され、健常者と同様の MAM の特徴を有することが示唆された。
【考察】
NAFLD では糞便細菌叢の構成が乱れることが報告されている。本研究でも、NAFLD 群
で糞便細菌叢のα多様性(菌種の豊富さや均等度)が低下しており、NAFLD・コントロール
群間とのβ多様性(菌叢構成)で有意差を認め、既報と合致することを確認した。腸内細菌叢
を含む腸内環境と肝臓との相互関係は腸-肝軸として広く知られており、腸内細菌叢の乱れ
に伴う腸粘膜バリア障害は腸-肝軸の恒常性に悪影響を及ぼす。一方で、MAM では糞便の
結果とは違い、ごく一部の例外を除けば、NAFLD 群でもα多様性は低下せず、NAFLD・
コントロール群間とのβ多様性でも有意差を認めなかった(本文の結果 1. に相当)。
これらの結果は、NAFLD 患者では糞便細菌叢と比べて MAM が相対的に安定している
可能性が考えられる。食生活の変化など、腸内環境に変化があった場合には糞便などの管腔
内細菌は容易に変化することが知られているが、MAM に関しては粘膜層で細菌を安定に保
持することを可能とする環境要因が存在する可能性がある。
MAM を安定化させる代表的な要因の一つとして、腸の表面へのグリカンの継続的な供給
が考えられる。日常的に変化する食事摂取による栄養素とは対照的に、粘液層からの宿主由
来のグリカンは、栄養源としてムチンを利用する微生物に安定した構成栄養素を継続的に
供給しているため、食事の変化からの影響を受けにくい可能性が考えられる。さらにもう一
つの要因として、粘液内へ分泌される免疫グロブリン A (IgA)の存在があげられる。分泌型
IgA は、腸管の粘液層に保持され、多数の微生物抗原に低親和性の多反応性結合を示し、粘
液中の腸内細菌のコロニー形成と同時に病原菌の排除にも重要である。
これらグリカンと IgA の継続的な供給により、MAM は安定してその菌叢を保持してい
る可能性が考えられる。実際、炎症性腸疾患や過敏性腸症候群などの疾患では、糞便微生物
叢と MAM の両方の変化が報告されており、ムチンレベルと分泌される IgA の質の変化が
報告されている。初期の NAFLD の病態生理学において、腸内細菌が粘膜に及ぼす影響と
しては、MAM の変化よりも管腔内微生物叢の異常(糞便で観察されるような)による代謝
産物の変化がより強く関与している可能性がある。
次に、NAFLD の MAM の特徴をさらに検証するために、腸管部位ごとの MAM の違い
を比較検証した。健常者では直腸から回腸までの MAM のα多様性または菌叢構成が均一
であることは既に報告されている。我々は、NAFLD 患者も MAM のα多様性や菌叢構成に
部位特異的な違いを認めないことを明らかにした(本文の結果 2. に相当)。すなわち、下部

腸管のα多様性や菌叢構成は部位特異的により異なるのではなく、個人間ごとの違い(個人
差)の影響が大きく、この特徴は健常者と同様の傾向が保持されていた。これらの結果から、
NAFLD では糞便中の腸内細菌叢が乱れても、MAM の腸内細菌叢は安定していることが示
唆された。
この研究にはいくつかの制限がある。まず、この研究ではサンプルサイズが限られている。
第二に、この研究に登録された NAFLD の症例は比較的初期段階であった (NAFLD 群の
平均 Fib4 指数は 2.29 だった)。我々の研究は、NAFLD 初期において MAM が糞便微生
物叢よりも比較的安定していることを明らかにしたが、進行期 NAFLD では腸管透過性の
亢進に伴い MAM に変化が見られる可能性があり、今後さらなる研究が求められる。
【結語】
我々の知る限り、本研究は内視鏡検査により採取した初期の NAFLD 患者の回腸末端か
ら直腸までのヒト MAM を分析した最初の研究であり、NAFLD の病態生理学における腸
内微生物叢の関与を明らかにするうえで、分析の結果は重要であると考えられる。

神 戸大学大学院医学(
系)
研 究 科 (博 士課程)
言合江文こ毛皆三繭ミク>糸吉 長艮 々 > 要 廷 旨示

論文題目

甲第

3240号



受 付 番号

朝治 直 紀



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糞便細苗叢の異常を伴う初期の非アルコ ール性脂肪肝疾患にお いて
下部消化管の粘膜関連細菌叢は変化 しな い





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(要旨は 1
, 000字∼ 2, 000字程度)




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背景 】
非アルコ ール性脂肪 肝 (
NAFLD)は肝臓におけるメ タボリックシン ドロームの表現型であり 、罹患率は近
年世界中で増加の 一途をたどっている。一方 、腸内細菌叢は、メタボリックシンドロ ー ムに関連する多くの
疾患の病因に関与する。腸内細菌叢の異常は腸管透過性充進を引き起こし 、門脈循環 を介 した病原体関連分
子パタ ー ン(PAMPs)の肝臓への流入や 酸化 ストレスが NAFLDの病態の 一つとして考えられている 。 そのた

、 NAFLDで腸内細菌がどのように変化 してい るかを解明するこ とは非常に重要である 。
腸 内 細 菌 叢 は 、腸 管 腔 内 細 菌 叢 ( 糞 便 細 菌 叢 ) と 粘 膜 表 層 の ム チ ン 恩 内 に 生 息 す る 粘 膜 関 連 細 菌
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MAM
) で構成され、それぞれの菌叢梱成は異なるこ とが知られている 。
MAMは粘膜表層に存在 し粘膜上皮のバリア機能や免疫系に直接的な相互作用を きた しうるため 、炎症性腸
疾患などの腸疾患や原発性胆汁性胆管炎などの腸外疾患など 、多くの疾患の病因に関与して い ると報告され
ている。 しか し、NAFLD にお いて、管腔内細菌叢である糞便細菌叢は幅広く研究 されて いるが 、M心 W の
特徴については研究されておらず、NAFLDと MAMの闊係は不明のままである 。
【目的 】
NAFLD患者と健常者間で菌叢の構成や多様性を比較して M紅 dや糞便細菌叢による病態関与を探索 し、
NAFLDにおける M心Wの特徴を解析することが 、本研究の目的である 。

方法 】
2017年 6月 1日から 2019年 5月 1日までの期間に当該研究に参加 した NAFLD患者と健常者から 、傾向
スコアマッチを用いて年齢と性別をマッチさせた 7名ずつを抽 出した。 NAFLDの診断は肝生検または画像
検査(CT検査または腹部超音波検査)
で行った。対照群と比較して NAFLD群では BMI、AST、ALT
、総蛋
白が高値だった。肝線維化マーカ ーである F
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xは 2群間で有意差を認めなかった。
全被検者に下部消化管内視鏡検査を施行し 、回腸末端・盲腸 ・横行結腸 .S状結腸 ・直腸のそれぞれで細
胞診ブラシを用 いて愛護的に粘膜を擦過して、ブラシに付着した粘液を P
BS(lml)に溶解することで粘液サ
ンプル(MAM)を回収 した。 また 、淡便サンプルとして検査 当 日の最初の便を回収した。粘液 ・糞便サンプル
は、いずれも 一8
0度に保存した。QIAampPower
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USA)を用いてプロトコル通りにシーケンスを行った。シーケンス後の生データの
読み取り 、リ ードのトリミングや品質管理、 o
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)で行った。菌叢の解析は、 a多様性(
群内多様性)と 3
f多様性(
群間多様性)
の 2つを評価
した。前者は Ob
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s、Shannoni
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x、Chaoli
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xの 3種類の指標と 用いて対象群内における
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)や均等度(
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)を評価し、後者は Weight
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OVA)で対象群間での菌叢構成の違いを統計解析した。

結 果】
1
.NAFLDと健常者間では、糞便細菌叢の変化に比べ、M心 Wの変化は限定的であった
全体の菌叢がどのように変化しているかを明らかにするために 、NAFLDと健常者の 2群間で a多様性(

種の豊富さと均等度)
および f
3多 様t
生(
菌叢構成)
の比較解析をおこなった。糞便細菌叢では 、以前の報告と同
様に 、NAFLD群 で a多様性の減少と NAFLD・コントロ ール 2群間の 3
f多様性に有意差 を認めた。 しかし、
MAMでは 、NAFLD群の回腸末端で Shannoni
n
d
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xの低下と S状結腸で両群間に有意差 を認めたが 、その
他の腸管部位では a多様性と 3
f多様性はいずれも両群間で有意差 を認めなかった。 次に 、2 群間の糞便にお
いて変化がある菌が 、MAMで変化 しているかどうかを解析した。まず、L
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解析を用いて、 NAFLD 患者の糞便細菌叢で統計学的に有意差のある 細菌を属レベルで抽
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出した。
NAFLD群の森便では 6種類 (
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t検定で解析したところ、 O
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r属を除く 5種類は NAFLDの MAMにおいて
減少が認められず保持されていた。以上の結果か ら、NAFLD患者では糞便細菌叢の多様性の低下および菌
叢構成に変化 が起きているにも関わらず、下部腸管の M心 dでは変化が極めて限定的と示唆された。
2
.NAFLDにおける、 一個人内の各部位の M紅 dの a多様性および菌叢構成の解析

NAFLDの MAMの特徴をさらに明らかにする ために、 一個人内の各部位の M心 W の a多様性と菌叢構成を
比較した。こ れまでの報告で、健常者 は、同一個人内であれば、下部腸管(
回腸末端から直腸)
の MAMは、

解剖学的部位によらず a多様性および菌叢構成が類似していることが明らかとなっている。一方で NAFLD
では下部腸管の M心 d多様性や菌叢構成について未だ報告されておらず、菌叢の分布や特徴が明らかになっ
ていない。我々は、同一個人内での各部位(
回腸末端から直腸)
における MAMの a多様性および菌叢構成を
NAFLD群 ・コントロール群それぞれで比較解析した。上記と同様に、a多様性は Observeds
p
e
c
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Shannon
index、Chaoli
n
d
e
xの 3種類の指標と用いて評価、菌叢構成の比較は Weightedと UnweightedUniFrac
解析の指標を用いて PERMANOVAで菌叢構成の違いを統計解析した。各部位ごとに、各被検者の MAMの
a多様性および菌叢構成を比較すると、コン トロール群と同様に、 NAFLD群でも 、同一個人内では解剖学
的部位によらず、各部位の a多様性に有意差を認めず、また菌叢構成の違いを示す 8多様性でも各部位の差
を認めなかった。 また、 NAFLDおよび健常者ともに、個人内の各部位間の MAMより 、個人間の同一部位
MAMの方が a多様性 ・菌叢構成ともに差が大きかった。 これらのことから NAFLDにおいても 、一個人内
の回腸末端から直腸までの M心 dで腸内細菌叢の多様性や分布が異ならないことが示 され、健常者と同様の
MAMの特徴を有することが示唆された。

考察】
NAFLDでは糞便細菌叢の描成が乱れる ことが報告されている。本研究でも 、NAFLD群で糞便細菌叢の
a多様性(
菌種の豊富さや均等度)
が低下しており 、NAFLD・コン トロール群間 との B多様性(
菌叢構成)
で有
意差 を認め、既報と合致することを確認した。腸内細菌叢を含む腸内環境と肝臓との相互関係は腸ー
肝軸とし
て広く知られており 、 腸内 細菌叢の乱れに伴う腸粘膜バリア障害は腸—肝軸 の恒常性に悪影態を 及 ぼす。一 方

で、MAM では糞便の結果とは違い、ごく 一部の例外 を除けば、NAFLD群でも a多様性は低下せず、
NAFLD・コントロール群間との 8多様性でも有意差を認めなかった(本文の結果 1
. に相当) 。
これらの結果は、NAFLD患者では糞便細菌叢と 比べて MAMが相対的に安定している可能性が考えられ
る。食生活の変化など、腸内環境に変化があった場合には糞便などの管腔内細菌は容易に変化することが知
られて い るが 、MAM に関しては粘膜層で細菌を安定に保持することを可能とする環境要因が存在する可能
性がある。
グリカンと IgAの継続的な供給により 、M心 W は安定 してその菌叢を保持している可能性が考えられる。
実際、炎症性腸疾患や過敏性腸症候群などの疾患では、糞便微生物叢と MAMの両方の変化が報告されてお
り、ムチンレベルと分泌される lgAの質の変化が報告されている。初期の NAFLDの病態生理学において、
腸内細菌が粘膜に及ぼす影態としては、M俎 d の変化 よりも管腔内微生物叢の異常(糞便で観察されるよう
な)による代謝産物の変化がより強く関与している可能性がある。
次に、NAFLDの MAMの特徴をさらに検証するために 、腸管部位ごとの MAMの違いを比較検証した。
健常者 では直腸から回腸までの MAMの a多様性または菌叢構成が均ーであることは既に報告されて いる。
我々は、 NAFLD患者 も MAMの a多 様性や菌叢描成に部位特異的な違いを認めない ことを明らかにした(本
文の結果 2
.に相当) 。すなわち、下部腸管の a多様性や薗叢構成は部位特異的により異なるのではなく 、個
人間ごとの違い(個人差)の影響が大きく 、この特徴は健常者と同様の傾向が保持されていた。 これらの結
果から、 NAFLDでは糞便中の腸内細苗叢が乱れても、 MAMの腸内細菌叢は安定していることが示唆され

結語】
我々の知る限り 、本研究は内視鏡検査により採取 した初期の NAFLD 患者の回腸末端から直腸までのヒト
MAMを分析した最初の研究であり 、NAFLDの病態生理学における腸内微生物叢の関与 を明らかにするう
えで、分析の結果は重要であると考えられる。
本研究は NAFLD患者における MAMの腸内細菌叢について研究したものであるが、従来ほ とんど解析され
ていなかった MAM腸内細苗叢の菌の特徴や安定性について重要な知見を得たものとして価値ある集積であ
ると認める。 よって、本研究者は、博士 (医学)の学位を得る資格があると認める。

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