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大学・研究所にある論文を検索できる 「若齢肥育牛における地方病性牛白血病発症機序解明に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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若齢肥育牛における地方病性牛白血病発症機序解明に関する研究

前澤, 誠希 岐阜大学

2020.09.18

概要

地方病性牛白血病(enzootic bovine leukosis,以下 EBL)は,牛白血病ウイルス(bovine leukemia virus,以下 BLV)の感染により引き起こされる B 細胞性のリンパ腫であり,一般的に 3 歳以上の感染牛で発症するとされている。しかし近年,3 歳未満の肥育牛における EBL の多発が報告されており,その原因はわかっていない。そこで本研究では,3 歳未満の肥育牛における EBL 発症機序の解明を目的として,宿主ゲノム中の BLV プロウイルス組込み部位および骨形成タンパク質-6(以下,BMP-6)遺伝子のメチル化の解析を行った。

本研究において,EBL の迅速かつ正確な診断法が必要であったため,まず第 1 章では,クローナリティ解析を用いた EBL の診断について検討した。第 1 節では,PCR による免疫グロブリン重鎖(以下 IgH)遺伝子のクローナリティ解析を検討した。材料には,B 細胞性リンパ腫 108 頭,T 細胞性リンパ腫 13 頭,リンパ腫以外の腫瘍性疾患 5 頭,炎症性疾患 35頭,非炎症性疾患 11 頭,および健常牛 30 頭を用いた。その結果,IgH 遺伝子のクローナリティ解析の感度は 74.1%,特異度は 100%であり,牛の B 細胞性リンパ腫の補助的な診断法として有用であると考えられた。また,第 2 節では inverse-PCR 法の EBL の診断への応用について検討した。検体には第 1 節で用いたもののうち,BLV への感染が確認されたもの,すなわち B 細胞性リンパ腫 98 頭,T 細胞性リンパ腫 5 頭,リンパ腫以外の腫瘍性疾患 4 頭,炎症性疾患 20 頭,非炎症性疾患 5 頭,健常牛 20 頭を用いた。感度は 72.4%,特異度は 100%であり,明瞭なバンドが確認された検体は BLV プロウイルス量が高値の B 細胞性リンパ腫であったことから,inverse-PCR 法はEBL の診断法として有用であると考えられた。

第 3 節では,EBL が疑われた 3 歳未満の疾患牛 3 頭に対して IgH 遺伝子のクローナリティ解析および inverse-PCR を行い,3 頭とも EBL と確定診断することが可能であった。このことから,クローナリティ解析により EBL 発症を迅速かつ正確に診断できることが示された。

次に第 2 章では,3 歳未満での EBL 発症の要因の 1 つとして,BLV プロウイルスの組み込み部位を解析した。材料には,第 1 章 2 節で inverse-PCR によりバンドが確認された,3歳未満の EBL 牛 34 頭,および 3 歳以上の EBL 発症牛 30 頭を用いた。その結果,3 歳未満の EBL 発症牛は,3 歳以上の EBL 発症牛に比べて,CpG island 近傍およびレトロトランスポゾンである LINEs への組込みが有意に多かった。しかしながら,3 歳未満の EBL 発症牛を肥育牛と乳用牛に分けて比較したところ,組込み部位に有意差は認められなかった。これらの結果から,3 歳未満の牛での EBL の発症に BLV プロウイルスの組込み部位が関与している可能性が示されたが,肥育牛において多発している理由は明らかにできなかった。

第 3 章では,肥育牛と乳用牛の違いがエピジェネティックな変異を引き起こす可能性に 着目し,リンパ球の増殖,分化およびアポトーシスの調整に関与している BMP-6 遺伝子のプロモーター領域の CpG island のメチル化を解析した。また,BMP-6 遺伝子のメチル化の状態と遺伝子発現の関係を調べた。材料には,3 歳未満の肥育 EBL 発症牛 32 頭,3 歳未満の乳用 EBL 発症牛 10 頭,3 歳以上の乳用 EBL 発症牛 25 頭,3 歳未満の肥育健常牛 20 頭,3歳未満の乳用健常牛 15 頭,3 歳以上の乳用健常牛 15 頭を用い,バイサルファイトシーケンス解析によりメチル化したシトシンの割合を求め,各群を比較した。その結果,3 歳未満の肥育 EBL 発症牛のメチル化割合の中央値は 8.9%であり,その他の牛群に比べて有意に高かった。さらに,メチル化割合に依存的な BMP-6 遺伝子の発現抑制が認められた。これらの結果から,3 歳未満の肥育牛の EBL 発症に,BMP-6 遺伝子プロモーター領域のメチル化とそれに伴う遺伝子発現の抑制が関与する可能性が示された。

以上の結果から,クローナリティ解析の EBL 診断における有用性が示され,また BLV プロウイルスの組込み部位の違いが 3 歳未満の牛における EBL 発症に関係する可能性が示された。さらに,BMP-6 遺伝子プロモーター領域のメチル化による BMP-6 遺伝子の発現抑制が,3 歳未満の肥育牛での EBL の多発に関与している可能性が示された。

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