新型コロナウイルス感染症の診断における予測因子 (第137回成医会総会一般演題)
概要
【目的】
SARS-CoV-2感染による新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)は,2020年7月9日現在,本邦で20,000人以上の感染者が報告されている.東京慈恵会医科大学附属病院(以下,当院)では,2020年4月6日より発熱や咳嗽,倦怠感などを訴えて来院する患者の外来を1C 外来に限定し,COVID-19を疑い診療を行った.本研究ではCOVID-19の予測因子を明らかにするために,患者背景および検査結果を調査し検討した.
【方法】
2020年4月6日から同年5月31日までにCOVID-19の疑いあるいは診断で当院に受診した成人患者を対象とし,年齢,性別,基礎疾患,症状,血液検査,胸部CT 検査結果を調査し,SARS-CoV-2PCR 検査陽性者と非陽性者を比較検討した.
【結果】
期間中にCOVID-19の疑いあるいは診断で受診した成人患者は267人であった.このうち男性は128人(47.9%)で,年齢中央値は47歳(IQR34.5-65),SARS-CoV-2 PCR 検査を施行した222人中,COVID-19と診断された患者は27人(12.2%)であった.COVID-19と診断された患者では,COVID-19患者との濃厚接触,4日以上の発熱,嗅覚・味覚障害のある割合が非陽性者と比較して有意に高いことが認められた.また,血液検査,胸部CT 検査を施行した患者を対象とした検討では,COVID-19と診断された患者で白血球減少,両側肺炎を認める割合が高いことが示された.
【結論】
本研究により,4日以上の発熱,嗅覚・味覚障害を認める患者,さらに白血球減少,両側肺炎を認める患者では積極的にCOVID-19患者を疑う必要があることが示された.一方,これらの所見のない症例であってもCOVID-19を否定することは困難であり,特に流行期では常にCOVID-19に注意が必要である.