甲状腺腫瘍の201Tl/99mTcシンチグラフィによる良悪鑑別診断能の検討 (第137回成医会総会一般演題)
概要
【目的】
東京慈恵会医科大学附属病院で甲状腺腫瘍の術前に201Tl/99mTc シンチグラフィを施行した患者をレトロスペクティブに評価し,術前の超音波検査および術後の病理所見との対比を行い,201Tl/99m Tc シンチグラフィの良悪鑑別診断能を検討する.
【方法】
術前6 ヵ月以内に超音波検査,201Tl/99m Tc シンチグラフィの両者を施行した甲状腺腫瘍の症例を対象とした.99mTc シンチグラフは腫瘍の局在診断に用い,201Tl シンチグラフィは早期相,後期相を撮影し,腫瘍の集積を周囲の甲状腺実質と比較してlow/iso/high の3段階で核医学専門医1人が評価した.後期相でhigh となった症例を悪性腫瘍と術前に診断し,術後病理所見との対比を行い,正診率,感度,特異度,陽性適中率,陰性的中率を算出した.
【結果】
悪性腫瘍105例,良性腫瘍28例が本研究の対象となった.201Tl/99m Tc シンチグラフィの診断能は2㎝以下の腫瘍で正診率61.7%,感度67.6%,特異度39.3%,陽性的中率80.7%,陰性的中率24.4%となった.一方で,2㎝より大きい腫瘍では正診率63.4%,感度77.8%,特異度38.5%,陽性的中率68.6%,陰性的中率50.0%となった.良性腫瘍28例のうち17例が後期相でhigh を示し,特異度の低下につながった.また後期相でhigh となった17例のうち,14例は早期相でもhigh となり,これらは腫瘍径が大きく超音波検査で豊富な血流を認めた.
【結論】
201Tl/99mTc シンチグラフィは,2㎝以下の腫瘍では陽性適中率が高く,良悪性の鑑別診断に有用と考えられるが,腫瘍径が大きく血流豊富な良性腫瘍は偽陽性となり得るため留意する必要がある.