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大学・研究所にある論文を検索できる 「初発裂孔原性網膜剥離に対する27ゲージ経毛様体扁平部硝子体手術後の前房フレア値に寄与する臨床的因子」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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初発裂孔原性網膜剥離に対する27ゲージ経毛様体扁平部硝子体手術後の前房フレア値に寄与する臨床的因子

Tetsumoto, Akira 神戸大学

2021.03.25

概要

裂孔原性網膜剥離は重篤な視機能障害をきたす疾患である。裂孔原性網膜剥離に対して近年施行される術式には経毛様体扁平部硝子体手術と強膜輪状締結術がある。硝子体手術がその進歩に伴い、より小切開で創の自己閉鎖も可能な低侵襲手術となったため、術後の炎症や乱視の少なさ、患者の快適さ、より早期の視機能改善といった利点が挙げられるようになり、現在では広角観察システムを用いた経毛様体扁平部硝子体手術が裂孔原性網膜剥離に対する第一選択となってきている。裂孔原性網膜剥離に対する広角観察システムを用いた経毛様体扁平部硝子体手術の初回網膜復位率は 25 ゲージで 85%から 93.8%、27 ゲージで 90%から 96.7%と報告されており、残念ながら初回網膜復位率は現在でも 100%ではなく、網膜再剥離が合併症の1つとして報告される。網膜再剥離の原因としては、同定できなかった網膜裂孔の存在、古い網膜裂孔痕の再開放、新規網膜裂孔の形成、増殖性網膜硝子体症の発生が挙げられる。この中で特に増殖性網膜硝子体症が重篤な視機能障害をきたす合併症であり、増殖性網膜硝子体症の発症には周術期の眼内炎症が関与することが報告されている。そのため経毛様体扁平部硝子体手術後の眼内炎症に関与する周術期因子を解明することは重要である。

本研究では初発裂孔原性網膜剥離に対して 27 ゲージ経毛様体扁平部硝子体手術を施行し、術後の前房フレア値に寄与する臨床的因子を検討した。

2016 年から 2017 年の間に神戸大学医学部附属病院で初発裂孔原性網膜剥離に対して 27 ゲージ経毛様体扁平部硝子体手術を施行し、術後 12 ヶ月間経過を追うことのできた症例を対象として後ろ向きに検討した。巨大網膜裂孔や増殖性網膜硝子体症、アトピー性皮膚炎の症例は除外した。

検討項目は性別、年齢、網膜裂孔の数、網膜裂孔の位置、剥離網膜の象限数、黄斑剥離の有無、水晶体の状態、術前最高矯正視力、術前眼圧、周術期前房フレア値、網膜光凝固数、術中強膜圧迫の有無、術後消炎治療強化の有無、手術時間、初回網膜復位率、最終網膜復位率とし、前房フレア値は術前、術後 1 週間、術後 1 ヶ月、術後 3 ヶ月、術後 6 ヶ月、術後 12 ヶ月の時点で測定した。

47 眼が本研究の対象となった。前房フレア値は術後 1 週間時点でピークを迎え、その後経時的に減少したが、術後 6 ヶ月時点までは術前より有意な高値を保っていた。多変量解析の結果、術後 1 週間時点の前房フレア値に寄与する因子は網膜光凝固数、術前眼圧、
術後消炎治療強化の有無、術後 1 ヶ月時点の前房フレア値に寄与する因子は網膜光凝固数、術中強膜圧迫の有無、術後 3 ヶ月時点の前房フレア値に寄与する因子は網膜光凝固数と術中強膜圧迫の有無、術後消炎治療強化の有無であった。他の因子はどの時点の前房フレア値にも寄与しなかった。

裂孔原性網膜剥離に対して 20 ゲージ経毛様体扁平部硝子体手術を施行し術後の前房フレア値を検討した既報では、前房フレア値は術後 1 週間時点でピークを迎え、術後 12 ヶ月時点まで健常な僚眼より有意な高値を保っていたことが報告されている。前房フレア値増加の機序としては、前房流速の減少、裂孔原性網膜剥離および手術侵襲による血液網膜関門の破綻、網膜下蛋白の硝子体および前房への散布が示唆されている。20 ゲージでの研究における前房フレア値の経時的変化は本研究と類似しており、広角観察システムを用いた 27 ゲージ経毛様体扁平部硝子体手術という低侵襲手術であっても前述の前房フレア値増加の機序が影響していることが示唆される。

術後の前房フレア値に寄与する因子の検討のため多変量解析を行った結果、網膜光凝固数、強膜圧迫の有無、術前眼圧が正の相関、術後消炎治療強化の有無が負の相関を示した。特に網膜光凝固数が最も強い相関を示しており、これは 20 ゲージでの既報と同様であった。網膜光凝固は血液房水関門と血液網膜関門を破綻させ、障害された血液網膜関門は炎症性サイトカイン産生を引き起こすことが知られている。また、血液網膜関門の障害は増殖性網膜硝子体症の病因でもあることも知られている。術後眼内炎症を減らすために術中網膜光凝固数を減らす効果的な手法を検討することは今後の重要な課題である。

本研究では強膜圧迫も術後の前房フレア値に寄与することを示した。過剰な強膜圧迫は眼球 の変形と急激な眼圧の変化によって毛様体の炎症を惹起し、術後眼内炎症に関与することが信じ られているが、強膜圧迫の有無と術後眼内炎症について検討した研究は無い。なぜなら 20 ゲージ の時代には周辺部網膜の観察のために強膜圧迫は必須の手技であったからである。広角観察シス テムを用いた硝子体手術下における強膜圧迫が術後眼内炎症を惹起するか否かも分かっておらず、本研究が強膜圧迫の有無が実際に眼内炎症に寄与することを示した初めての報告であると思われ る。術者は広角観察システムを用いた 27 ゲージ経毛様体扁平部硝子体手術であっても過剰な強膜 圧迫を避けるよう心掛けることが重要であると思われる。

高容量ステロイドを用いた術後消炎治療強化が術後の前房フレア値を有意に減少させることも示した。既報では非増殖糖尿病網膜症に対して汎網膜光凝固術を施行する前にテノン嚢下トリアムシノロンアセトニド注射を施行することで術後の前房フレア値が減少することが報告されている。トリアムシノロンアセトニドは網膜光凝固後の VEGF やインターロイキン 6、ICAM1、 MCP1 といった炎症性サイトカインを抑制することが知られている。硝子体出血を伴う増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術の終了時にトリアムシノロンアセトニドの硝子体内投与を施行することで術後の前房フレア値が減少することも報告されている。これらの結果から、高容量ステロイドを用いた術後の消炎治療強化は、裂孔原性網膜剥離に対する硝子体手術後に対しても、より術後眼内炎症を減少させる一助となることが示唆される。

我々は裂孔原性網膜剥離に対する 27 ゲージ経毛様体扁平部硝子体手術後の前房フレア値の経時的変化と前房フレア値に寄与する臨床的因子を検討した。本研究の結果は、術者は広角観察システムを用いた 27 ゲージ経毛様体扁平部硝子体手術であっても術後眼内炎症をより小さくするために、網膜光凝固数に関する危険性および有益性を勘案することおよび可能な限り強膜圧迫を避けることが重要である可能性を示した。

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