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大学・研究所にある論文を検索できる 「サイトメガロウイルス虹彩毛様体炎に起因する続発緑内障に対して濾過手術が及ぼす有益な影響について」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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サイトメガロウイルス虹彩毛様体炎に起因する続発緑内障に対して濾過手術が及ぼす有益な影響について

村井, 佑輔 神戸大学

2022.03.25

概要

サイトメガロウイルスは、主に免疫力の低下している患者において虹彩毛細血管 炎、眼圧上昇、角膜内皮炎の原因となることが知られており、また、ポスナーシュロスマン症候群やフックス異色性虹彩毛様体炎の原因としても知られている。虹彩毛様体炎と眼圧上昇の治療には、それぞれステロイド点眼薬と眼圧下降点眼薬を用いる が、サイトメガロウイルスに対しては、ガンシクロビルの静脈内、経口、外用、眼内投与などの抗ウイルス治療が必要である。しかし、これらの薬物療法のみでは眼圧を下げることができず、緑内障手術が必要となる症例も多く存在する。サイトメガロウイルス虹彩毛様体炎続発緑内障に対して線維柱帯切開術か線維柱帯切除術のどちらがより適した外科的介入であるかを評価した報告はほとんどない。また、抗ウイルス剤に関しては長期間の全身投与により汎血球減少や肝機能障害が起こることがあるが、一方で抗ウイルス剤の休薬により炎症再発のリスクが高まることも危惧される。さらには、緑内障手術後に経済的に費用のかかる抗ウイルス療法を継続すべきかどうかについても、検討が必要である。我々は、サイトメガロウイルス虹彩毛様体炎続発緑内障を有する患者の臨床的特徴を評価し、特に緑内障手術が抗ウイルス療法の中断に与える影響について検討した。

本研究は 2012 年 6 月から 2019 年 7 月の間に神戸大学医学部附属病院で治療を受けたサイトメガロウイルス虹彩毛様体炎続発緑内障患者の臨床記録を後ろ向きに検討した。患者は、ポスナーシュロスマン症候群に類似した前房炎症と角膜沈着物を伴う片側性の急激な眼圧上昇、角膜内皮細胞密度の低下を伴う角膜内皮炎、またはフックス異色性虹彩毛様体炎などの虹彩低色素化を伴う前ぶどう膜炎を呈していた。サイトメガロウイルス網膜炎を併存する患者はいなかった。最終的な診断は、前房水中のPCRによるサイトメガロウイルス DNA の検出で決定され、DNA 量が 1.0×10² コピー数/mL 以上を有意とした。検討項目は性別、年齢、内眼手術の既往、抗ウイルス薬の使用有無、視力、眼圧、緑内障点眼スコア、角膜内皮細胞密度、初診時および緑内障手術前と 1 年後のハンフリー視野検査の平均偏差値とした。

22 名が本研究の対象となった。患者全員が抗ウイルス剤の内服または点眼療法を実施されていた。18 名の患者は、緑内障手術が必要であった。初回手術として線維柱帯切開術が 9 人と線維柱帯切除術 9 人がそれぞれ施行された。初回に線維柱帯切開術を受けた患者のうち 6 人、線維柱帯切除術を受けた患者のうち 2 人は、1 年以内に追加の線維柱帯切除術を必要とした。少なくとも 1 回の線維柱切除術を受けた 15 人の患者はそれぞれ、眼圧の変動と緑内障点眼スコアの減少を得ることができ、13 人の患者は抗ウイルス治療を中止できた。残りの 4 名については、眼圧と炎症は制御できていたものの、抗ウイルス剤を使用していた。

サイトメガロウイルス虹彩毛様体炎続発緑内障は一部で臨床症状がポスナーシュロスマン症候群と類似していると言われている。ポスナーシュロスマン症候群では高眼圧の割に視野障害を起こしにくいとされているが、本研究では約半数が後期緑内障として視野障害による重篤な視機能障害を呈した。既報でも緑内障進行のリスクが高いことが報告されており、本疾患における眼圧制御の重要性が示唆された。

サイトメガロウイルスは線維柱帯に感染し、房水流出抵抗を増加させることが報告されていたが、本研究では線維柱帯切開術の成績は悪く、線維柱帯以外に房水流出路も障害されている可能性が示唆された。

また、本研究では線維柱帯切開術に比べ線維柱帯切除術が優れた術後経過を示し た。サイトメガロウイルス虹彩毛様体炎では前房内のサイトメガロウイルス量が眼圧上昇や角膜内皮細胞密度の低下と関連することを示唆した既報があり、本研究では濾過手術である線維柱帯切除術が前房内のサイトメガロウイルスを排出し、眼圧を安定させ、角膜内皮細胞密度の減少を防ぐ可能性が示唆された。

さらに、本研究では線維柱帯切除術が抗ウイルス薬の休薬機会を得ることができる可能性を示した。線維柱帯切除術を施行した全員が術前に抗ウイルス薬治療を受けていたが、術後調査期間内ではバルガンシクロビルの経口投与を受けていた全員が線維柱帯切除術後に経口投与を中止、ガンシクロビル点眼を受けていた患者のほとんどが点眼を中止できている。サイトメガロウイルス虹彩毛様体炎では抗ウイルス薬の中止後再発が起きることが多いことが報告されている。本研究では線維柱帯切除術後には再発自体を抑制できている、もしくは再発が起きても房水が濾過できていることにより高眼圧の事象が抑制できている可能性が示唆された。

本研究では線維柱帯切除術後のサイトメガロウイルスDNA コピー数を調べることができなかったため、線維柱帯切除術がサイトメガロウイルスの増殖を抑制すると直接に示すことができなった。また、前房内炎症の評価としてフレアメーターを使用して定量化し評価することもできなかったため、今後のさらなる検討が必要である。

我々はサイトメガロウイルス虹彩毛様体炎続発緑内障の緑内障手術を含めた臨床経過を検討した。本研究結果からは急速に視機能障害が起きてしまう可能性のあるサイトメガロウイルス虹彩毛様体炎続発緑内障に対し、線維柱帯切除術が眼圧を低下させ安定させるだけでなく、抗ウイルス薬の休薬に貢献する可能性があることを示した。

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