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大学・研究所にある論文を検索できる 「低比重リポ蛋白コレステロール値55mg/dL未満の非糖尿病症例及び2型糖尿病症例における冠動脈プラーク性状に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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低比重リポ蛋白コレステロール値55mg/dL未満の非糖尿病症例及び2型糖尿病症例における冠動脈プラーク性状に関する研究

岩井, 雄大 東北大学

2023.03.24

概要

博⼠論⽂

低⽐重リポ蛋⽩コレステロール値 55mg/dL 未満の
⾮糖尿病症例及び 2 型糖尿病症例における
冠動脈プラーク性状に関する研究

東北⼤学⼤学院医学系研究科医科学専攻
先進循環器医学講座先進循環器内科学分野
岩井 雄⼤

Iwai T.

1

⽬次

ページ
I

要約

3

II

略語

6

III

研究背景

8

IV

研究目的

10

V

研究方法

10

1.

対象症例

10

2.

NIRS-IVUS による標的病変の描出・画像データ収集

11

3.

標的病変の解析方法

12

(1)

標的病変内脂質評価

12

(2)

標的病変内石灰化評価

13

4.

定量的冠動脈造影法(QCA:quantitative coronary angiography)
による標的病変解析

14

5.

血清脂質項目の測定

14

6.

LDL-C 低下療法

14

7.

主要評価指標の設定

15

8.

本研究の解析症例における併存疾患の診断・定義

15

9.

統計解析方法

16

VI
1.

研究結果

非糖尿病・2 型糖尿病症例の臨床背景

17
17

(1)

LDL-C 値 55mg/dL 未満の非糖尿病症例の特徴

17

(2)

LDL-C 値 55mg/dL 未満の 2 型糖尿病症例の特徴

18

2.

LDL-C 値と標的病変内脂質の関係

18

3.

LDL-C 値と標的病変内石灰化の関係

20

Iwai T.

(1)

CaI の比較

20

(2)

Spotty calcification ならびに Sheet calcification の割合

20

4.
VII

LDL-C 値 55mg/dL 未満を示した 2 型糖尿病症例における
標的病変の maxLCBI4mm が低値となる因子の解析
考察

21
22

1.

非糖尿病症例の標的病変内脂質と LDL-C 値

22

2.

2 型糖尿病症例の標的病変内脂質と LDL-C 値

23

3.

2 型糖尿病患者の動脈硬化性心血管疾患リスク低減を
目指した薬物治療

25

4.

LDL-C 低下療法と石灰化の関係

28

5.

本研究の限界

31

VIII

結論

32

IX

謝辞

34

X

文献

35

XI

図の説明

45

XII



58

XIII



78

2

Iwai T.

I 要約
背景:2 型糖尿病は⼼筋梗塞などの動脈硬化性⼼⾎管疾患発症リスクが⾼い病態であ

る。本邦の治療ガイドラインでは、動脈硬化性⼼⾎管疾患を有する 2 型糖尿病症例
に対し低⽐重リポ蛋⽩コレステロール (LDL-C: low density lipoprotein cholesterol)を
70mg/dL 未満に管理することが推奨されている。⼀⽅、欧州⼼臓病学会の治療ガイ
ドラインは、動脈硬化性⼼⾎管疾患を合併した 2 型糖尿病症例に対しさらに厳格な
LDL-C 管理 (55mg/dL 未満)を推奨している。LDL-C 低下療法は、動脈硬化性プラー
ク内の脂質の減少や⽯灰化形成を促進させ、⼼筋梗塞などの⼼⾎管疾患発症予防に
有効であると考えられている。しかしながら、2 型糖尿病症例においては、従来推奨
されてきた LDL-C 低下療法によるプラーク安定化効果は減弱しているとの報告もあ
り、LDL-C 低下療法下でも 2 型糖尿病症例の⼼⾎管疾患発症リスクも依然として⾼
いことが報告されている。故に、2 型糖尿病症例に対する LDL-C 値 55mg/dL 未満の
有効性も乏しい可能性が推察される。本研究は LDL-C 値 55mg/dL 未満を⽰した冠動
脈疾患合併 2 型糖尿病症例ならびに⾮糖尿病症例の冠動脈プラークの特徴を明らか
にすることを⽬的とする。
⽅法と結果:2015 年 8 ⽉ 1 ⽇から 2020 年1⽉ 31 ⽇までに本邦で実施されている多

施設前向き登録研究 REASSURE-NIRS (NCT04864171)に登録された経⽪的冠動脈形
成術 (PCI: percutaneous coronary intervention)を施⾏された冠動脈疾患症例の中から、
近⾚外線スペクトロスコピー・⾎管内超⾳波装置 (NIRS-IVUS: near-infrared

3

Iwai T.

spectroscopy - intravascular ultrasound )を⽤いて冠動脈プラークを観察した 523 名(557
病変)を解析した。⾮糖尿病症例 277 名(293 病変)、2 型糖尿病症例 246 名(264 病変)
を LDL-C 値 (55mg/dL 未満、55-70 mg/dL、70mg/dL 以上)を基にそれぞれ 3 群に分類
し、PCI を施⾏した標的病変における最⼤標的病変内脂質指数(maxLCBI4mm:
maximum 4-mm-lipid-core burden-index)及び⽯灰化指数(CaI: calcium index)を⽐較し
た。⾮糖尿病症例の 6.4%、2 型糖尿病症例の 13.0%は LDL-C 値 55mg/dL 未満であっ
た。⾮糖尿病症例では、LDL-C 値 55mg/dL 未満の症例は LDL-C 値 55-70 mg/dL、
LDL-C 値 70mg/dL 以上の症例と⽐較して maxLCBI4mm は有意に低値であった(LDL-C
<55mg/dL vs LDL-C 55-70mg/dL; p=0.04, LDL-C <55mg/dL vs LDL-C >70mg/dL;
p<0.001, p<0.001 for trend)。⼀⽅、2 型糖尿病症例は LDL-C 値 55mg/dL 未満の症例の
maxLCBI4mm は LDL-C 値 55-70 mg/dL、LDL-C 値 70mg/dL 以上の症例と⽐較して有
意差を認めなかった(LDL-C <55mg/dL vs LDL-C 55-70mg/dL; p=0.65, LDL-C <55mg/dL
vs LDL-C >70mg/dL; p=0.24, p=0.10 for trend)。更に、LDL-C 値 55mg/dL 未満の 2 型糖
尿病症例の maxLCBI4mm は 415 ± 210 であり、⼼⾎管イベント発症リスクを予測する
カットオフ値 400 を超える⾼値を⽰していた。標的病変の CaI においても、低い
LDL-C 値を⽰す⾮糖尿病症例の CaI は有意に⼤きかったが (p=0.001 for trend)、2 型
糖尿病症例では、LDL-C 値が低値であっても CaI は必ずしも⾼値ではなかった
(p=0.34 for trend)。

4

Iwai T.

結論:LDL-C 値 55mg/dL 未満を⽰す⾮糖尿病症例は LDL-C 値 55-70 mg/dL、

70mg/dL 以上の症例に⽐して冠動脈プラークの脂質が少なく⽯灰化が多い安定プラ
ークの特徴を有していた。⼀⽅、2 型糖尿病症例では LDL-C 値 55mg/dL 未満の症例
は冠動脈プラークの脂質や⽯灰化は、LDL-C 値 55-70 mg/dL、70mg/dL 以上の症例と
差は認めなかった。2 型糖尿病症例のプラークを修飾しうる更なる有効な治療介⼊の
必要性が⽰唆された。

5

Iwai T.

II 略語
・%DS (percent diameter stenosis; 狭窄率)

・CaI (calcium index; ⽯灰化指数)
・eGFR (estimated glomerular filtration rate; 推算⽷球体濾過量)
・EPA (eicosapentaenoic acid; イコサペント酸エチル)
・GLP-1 (glucagon-like peptide-1)
・HDL-C (high-density lipoprotein cholesterol; 低⽐重リポ蛋⽩コレステロール)
・IQR (interquartile range; 四分位値)
・IVUS (intravascular ultrasound; ⾎管内超⾳波装置)
・LCBI (lipid core burden index; 標的病変内脂質指数)
・LDL-C (low density lipoprotein cholesterol; 低⽐重リポ蛋⽩コレステロール)

・maxLCBI4mm (max-4mm segment lipid core burden index; 最⼤標的病変内脂質指数)
・MLD (minimal lumen diameter; 最⼩内腔径)
・NIRS-IVUS (near-infrared spectroscopy - intravascular ultrasound; 近⾚外線スペクトロ

スコピー・⾎管内超⾳波装置)
・PCI (percutaneous coronary intervention; 経⽪的冠動脈形成術)

・PCSK9 (proprotein convertase subxilisin/kexin type 9)
・PPARα(Peroxisome proliferator-activated receptor-alpha)
・QCA (quantitative coronary angiography; 定量的冠動脈造影法)

6

Iwai T.

・RD (reference diameter; 対象⾎管径)
・REASSURE-NIRS (REvelation of PAthophySiological PhenotypeS of VUlneRable Lipid-

Rich PlaquE on Near-InfraRed Spectroscopy)
・SD (standard deviation; 標準偏差)

7

Iwai T.

III 研究背景
2 型糖尿病症例は、⾮糖尿病症例に⽐して動脈硬化性リスク因⼦が集簇し、⼼筋梗塞
などの⼼⾎管疾患発症リスクが⾼い病態である。故に、2 型糖尿病症例が有するリス
ク因⼦に対する治療介⼊を⾏い、⼼⾎管疾患の発症を予防することは重要である 1-4)。
これまでに発表された⼤規模臨床研究結果からは、低⽐重リポ蛋⽩コレステロール
(LDL-C: low density lipoprotein cholesterol) 低下療法による動脈硬化性⼼⾎管疾患の発
症予防効果が証明されてきた 5)(図 1)。このような LDL-C 低下療法の有効性を⽰した
研究成果を踏まえ、近年の本邦

6,7)

ならびに海外のガイドラインでは LDL-C 値を

70mg/dL 未満に低下させることが推奨されている。LDL-C 低下療法による⼼⾎管疾患
発症予防効果の機序として、⼼筋梗塞発症の原因となる冠動脈プラーク内脂質の縮⼩
や⾎管炎症の抑制に伴う⽯灰化形成が促進され 8,9)(図 2)、冠動脈プラークを安定化し
⼼筋梗塞などの動脈硬化性⼼⾎管疾患の発症リスクを低減させる効果が想定されて
いる。しかしながら、LDL-C 低下療法による⼼⾎管疾患発症予防効果や冠動脈プラー
ク修飾効果は 2 型糖尿病症例において減弱することも報告されており

10-13)

(図 3、図

4)、2 型糖尿病症例の動脈硬化性⼼⾎管疾患の発症リスク低減に有効な治療を確⽴す
ることが重要である。
近年、欧州⼼臓病学会は 2 型糖尿病症例において従来の LDL-C の管理⽬標値
(70mg/dL 未満)よりもさらに低値である LDL-C 値 55mg/dL 未満を⽬標とすること

8

Iwai T.

を推奨している 14)。しかしながら、2 型糖尿病症例における LDL-C 値 55mg/dL 未満
の冠動脈プラークへの効果については⼗分に検証されていない。
2016 年より本邦において使⽤可能となった近⾚外線スペクトロスコピー・⾎管内
超⾳波装置 (NIRS-IVUS: near-infrared spectroscopy - intravascular ultrasound)は、冠動脈
プラーク内の脂質および⽯灰化の評価が可能な装置である。本装置はプラークを構成
する組織の近⾚外線吸収パターンを基に、標的病変内の脂質プラークの存在を検出す
る。検出された脂質プラークの広がりは、標的病変内脂質指数(LCBI:lipid core burden
index)として⾃動的に定量化される。更に、冠動脈内において⻑軸⽅向 4mm のセグメ
ントにおける最⼤の LCBI 値を最⼤標的病変内脂質指数 (maxLCBI4mm :max-4mm
segment lipid core burden index)として検出することも可能である 15,16)。これまでの報告
では、⼼筋梗塞の責任病変は maxLCBI4mm400 以上を⽰すこと

17)

(図 5)や、

maxLCBI4mm400 以上を⽰す冠動脈プラークは将来の⼼⾎管イベント発⽣を予測する
こと 18)が報告されている(図 6)。
REASSURE-NIRS (REvelation of PAthophySiological PhenotypeS of VUlneRable LipidRich PlaquE on Near-InfraRed Spectroscopy)(NCT04864171)は NIRS-IVUS を⽤いて経⽪
的冠動脈形成術 (PCI:percutaneous coronary intervention)を施⾏された症例を登録する
国内多施設レジストリー研究である。本レジストリー研究は主要⼼⾎管イベントの発
⽣を主要評価項⽬としており、LDL-C 値 55mg/dL 未満の管理下における⼼⾎管イベ
ント発⽣を副次評価項⽬としている。本学位論⽂著者 岩井は、スタチンを⽤いた

9

Iwai T.

LDL-C 管理下における⾮糖尿病症例ならびに 2 型糖尿病症例の冠動脈プラーク解析
研 究 に 携 わ り ( 平 均 LDL-C 値 =77mg/dL) 、 2 型 糖 尿 病 症 例 の 46.6% の 症 例 は
maxLCBI4mm400 以上を⽰す不安定プラークが存在することを報告した

19)

。本研究成

果から、LDL-C 値 55mg/dL 未満を⽰す 2 型糖尿病症例における冠動脈プラークの特
徴の解明を⾏う着想に⾄った。

IV 研究⽬的
本研究は、NIRS-IVUS を⽤いて LDL-C 値 55mg/dL 未満を⽰す⾮糖尿病症例ならびに
2 型糖尿病症例の冠動脈プラーク内脂質の定量的指標である最⼤標的病変内脂質指
数:maxLCBI4mm および⽯灰化の定量的指標である⽯灰化指数(CaI: calcium index) の
特徴を明らかにすることを⽬的とする。

V 研究⽅法
1.

対象症例

本研究は、2015 年 8 ⽉ 1 ⽇から 2020 年 1 ⽉ 31 ⽇の期間において多施設レジストリ
ー研究 REASSURE-NIRS (NCT04864171)に登録された 582 例(620 病変)の PCI を施⾏
された冠動脈疾患患者より解析対象症例を抽出した。582 例の中から、ステント内再
狭窄病変に対する PCI 施⾏症例 33 例(36 病変)、冠動脈バイパスグラフト病変に対す
る PCI 施⾏症例 5 例(5 病変)、画像の質が不良であるために解析が困難な症例 21 例(22
病変)を除外し、最終的に NIRS-IVUS を⽤いて PCI を施⾏した 523 例(557 病変)を解

10

Iwai T.

析対象とした。解析対象を⾮糖尿病症例 277 例(293 病変)と 2 型糖尿病症例 246 例(264
病変)に分類し解析を⾏った(図 7)。2 型糖尿病は⽇本糖尿病学会が発表している糖尿
病診療ガイドライン 2019 の診断基準に基づき診断した

20)

。尚、上記のレジストリー

には、本研究期間において1型糖尿病を有する冠動脈疾患症例は登録されていなかっ
た。本研究は国⽴循環器病研究センター(M30-084-4)及び宮﨑市群医師会病院(2020-43)
の倫理委員会の承認を得て実施した。

2.

NIRS-IVUS による標的病変の描出・画像データ収集

本研究は、PCI を施⾏した標的病変を解析対象とした。PCI 施⾏前に、NIRS-IVUS を
⽤いて標的病変の冠動脈プラーク評価を⾏なった。NIRS-IVUS カテーテルは直径約
0.9mm の⾎管内イメージングカテーテルであり、先端部分より近⾚外線・超⾳波が照
射され、冠動脈プラークの描出が可能な装置である。本研究では、ニトログリセリン
(100-300ug)を冠動脈内投与した後に NIRS-IVUS カテーテル (TVC InsightTM または
DualproTM, Infraredx, Bedford, MA, USA)を冠動脈内に挿⼊し、0.5mm/秒 (TVC InsightTM)
もしくは 2.0mm/秒 (DualproTM)の速度にて冠動脈遠位部より近位部までプルバックを
⾏い標的病変を観察した。NIRS-IVUS カテーテルのプルバックにより収集された標的
病変の画像データは、患者情報を匿名化した後に画像解析ソフト Makoto® system
(Infraredx, Bedford, MA, USA)・QIvus® (Medis, Leiden, the Netherlands)を⽤いて解析を⾏
った。

11

Iwai T.

3.

標的病変の解析⽅法

(1)

標的病変内脂質評価

標的病変内の脂質プラーク評価は、NIRS-IVUS イメージングカテーテルが照射する近
⾚外線スペクトロスコピーを⽤いて解析を⾏った。近⾚外線スペクトロスコピーは冠
動脈プラークを構成する組織の近⾚外線吸収パターンを基に脂質プラークを同定し
ケモグラムと呼ばれる冠動脈をカーペット状に展開した画像において、脂質プラーク
が存在する領域が⻩⾊で表⽰され、標的病変に存在する脂質成分の広がりを評価する
ことができる。NIRS で検出される⻩⾊シグナルは冠動脈病理組織との⽐較において
も⾼い類似性を認めることが確認されている 17)(図 8)。更に、標的病変を関⼼領域と
して設定することにより総ピクセル数に対する脂質ピクセル数の割合を標的病変内
脂質指数:LCBI として定量的に計測が可能である(図 9)。

𝐿𝐶𝐵𝐼 =

関⼼領域内の⻩⾊ピクセル
関⼼領域内の全ピクセル

× 1000

更に、冠動脈内において⻑軸⽅向 4mm のセグメントにおける最⼤の LCBI 値が⾃動
的に検出され、最⼤標的病変内脂質指数:maxLCBI4mm として測定される。PCI の標的
病変はステント留置もしくはバルーン拡張が⾏われた部位と定義し、標的病変におけ
る maxLCBI4mm を評価した。また、標的病変全体の LCBI 値を entire LCBI と定義した。

12

Iwai T.

(2)

標的病変内⽯灰化評価

⽯灰化の評価は、NIRS-IVUS イメージングカテーテルが照射する超⾳波を⽤いて解析
した。⽯灰化は、⾎管内超⾳波装置 (IVUS:intravascular Ultrasound)の冠動脈プラーク
断⾯像において⾼輝度かつ⾳響陰影を伴う特徴を⽰す。標的病変の maxLCBI4mm が検
出された 4mm のセグメントにおいて、1mm 間隔の IVUS 短軸画像を解析し(計 5 断
⾯)⽯灰化の評価を⾏った(図 10)。各短軸画像における⽯灰化⾓度を⽯灰化グレード
として以下のようにスコア化した: 0 = ⽯灰化なし, 1 = ⽯灰化⾓度 <90°, 2 = ⽯灰化
⾓度 ≥90° - <180°, 3 = ⽯灰化⾓度 ≥180° - <270°, 4 = ⽯灰化⾓度 ≥270°。標的病変に
おける⽯灰化評価は、過去の論⽂において発表されたプラーク内⽯灰化指数 :CaI を
以下の計算式を⽤いて⾏った 8)。

𝐶𝑎𝐼 =

⽯灰化が存在する断⾯数
解析された断⾯の総数

×

最⼤の⽯灰化グレード


CaI を⽤いた⽯灰化評価の他に、⽯灰化の性状に関しても解析した。微⼩⽯灰化
(spotty calcification)は、⽯灰化⾓度<90°未満かつ⻑軸⽅向の⻑さが 4mm 以下のもの
と定義した。 Spotty calcification の定義を満たさない⽯灰化は、粗⼤⽯灰化 (sheet
calcification)と定義した 21) (図 11)。

13

Iwai T.

4.

定量的冠動脈造影法(QCA: Quantitative coronary angiography)による標的病変

解析

PCI を施⾏した標的病変において、定量的冠動脈造影法 (QCA:quantitative coronary
angiography)を⽤いた解析を実施した[使⽤ソフトウェア: QAngio® XA( Medis, Leiden,
the Netherlands)]。本ソフトウエアは冠動脈造影画像で⽰される標的病変を⾃動的に
計測することが可能であり、対象⾎管径 (RD: reference diameter)、最⼩内腔径
(MLD: minimal lumen diameter)、狭窄率 (%DS: percent diameter stenosis)を解析した。

5.

⾎清脂質項⽬の測定

本研究では、PCI 施⾏前の⾎清脂質値を測定した。空腹時中性脂肪値及び低⽐重リ
ポ蛋⽩コレステロール (HDL-C:high-density lipoprotein cholesterol) 値は分析器
(Hitachi Labospect 008; Hitachi-Hitec, Tokyo, Japan)を⽤いて酵素法 (Sekisui Medical,
Tokyo, Japan)により測定した。LDL-C 値は、空腹時中性脂肪値が 400mg/dL より⾼い
場合を除きフリードワルドの式 22)を⽤いて計算した。中性脂肪値が 400mg/dL 以上
を⽰す場合は酵素法を⽤いた直接法により測定した。

6.

LDL-C 低下療法

解析対象症例に対して実施された LDL-C 低下薬剤の使⽤有無 (スタチン、エゼチミ
ブ)を調査した。スタチン使⽤症例においては、強化スタチンの有無も調査した。強

14

Iwai T.

化スタチンはアトルバスタチン 20 mg 以上、ロスバスタチン 10 mg 以上、 ピタバ
スタチン 4 mg 以上と定義した 23)。

7.

主要評価指標の設定

本 研 究 の 主 要 評 価 指 標 は 、 NIRS-IVUS に よ り 測 定 さ れ た 標 的 病 変 に お け る
maxLCBI4mm、及び IVUS で検出された CaI とした。副次評価指標は、標的病変におけ
る entire LCBI 及び IVUS によって描出される微⼩⽯灰化 (spotty calcification)・粗⼤⽯
灰化 (sheet calcification)の割合とした。

8. ...

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