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大学・研究所にある論文を検索できる 「膵腺癌切除後の肺再発の臨床病理学的特徴とリスク因子」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

膵腺癌切除後の肺再発の臨床病理学的特徴とリスク因子

朝倉, 悠 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Clinicopathological variables and risk factors
for lung recurrence after resection of
pancreatic ductal adenocarcinoma

朝倉, 悠
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8598号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100482346
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

学位論文の内容要旨

Clinicopathological variables and risk factors for lung recurrence after resection
of pancreatic ductal adenocarcinoma

膵腺癌切除後の肺再発の臨床病理学的特徴とリスク因子

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
肝胆膵外科学
(指導教員:福本 巧 教授)
朝倉 悠

【緒言】
膵癌は最も予後不良な悪性腫瘍のうちの1つであり、全病期をあわせた 5 年生存率
は約 9%である。唯一の根治的治療は切除であるが、切除後の再発率は約 70%と非常
に高く、切除症例においても 5 年生存率は 12%から 27%にとどまると報告されてい
る。切除後の再発形式は、局所再発、血行性転移、リンパ行性転移、腹膜転移など多
岐にわたり、肺転移再発は肝転移再発、局所再発に続き3番目に多く、再発率は約 322%と報告されている。
近年、膵癌切除後において、再発形式や再発部位によって臨床経過や予後が異なると
の報告がある。遠隔転移の中でも肝転移再発、腹膜播種再発は特に予後が不良であり、
肺転移再発はそれらに比べ予後が良好であるという報告や、肺転移再発に対して切除
により予後が改善したという報告が散見される。したがって肺転移再発の臨床病理学
的特徴やメカニズムは他の遠隔転移とは異なる可能性があるが、詳細な解析はなされ
ておらず明らかでない。今回我々は、膵癌切除後の肺再発の臨床病理学的特徴を解析
し、他部位再発との比較とリスク因子を明らかにすることを目的とした。
【対象と方法】
2008 年 1 月から 2016 年 12 月まで神戸大学医学部附属病院において、膵癌に対し根
治切除(R0,1)を行った 200 例中、術前療法施行例、残膵癌、追跡不能例を除く計 161
例を対象とした。初回再発形式を部位別に分類し、初回肺再発症例の全生存期間、
再発時期、臨床病理学的因子、リスク因子について後方視的に検討を行った。
【結果】
男性 100 例、女性 61 例、年齢は中央値 69 歳(40-86 歳)であった。傍大動脈リンパ
節は、90 例にサンプリングが行われ、11 例(12.2%)で陽性であった。リンパ節転移
は 109 例(67.7%)に認め、R0 切除は 111 例(69.0%)であった。術後観察期間は中央
値 24.9 ヶ月であり、術後再発は 113 例(70.2%)に認めた。初回再発形式は、局所/
肝/肺/腹膜/その他/複数がそれぞれ 33/28/17/10/5/20 例であった。初回
肺再発は、他部位との同時再発症例も含めて 22 例(13.7%)であった。
① 全生存期間 (OS)
初回再発部位別の Median Survival Time(MST)は、肺/局所/肝/腹膜/複数同時で
それぞれ 38.0/24.7/17.5/13.4/21.4 ヶ月であった。肺再発と肺以外再発では
38.0/22.2 ヶ月であり肺再発で有意に良好であった(p=0.001)。
② 再発時期

肺再発、肺以外再発の Recurrence Free Survival(RFS)はそれぞれ 16.1/9.8 ヶ月で
あり肺再発で有意に長かった(p=0.008)。
③ リスク因子
単変量解析では肺再発症例において女性、傍大動脈リンパ節陽性が有意に多く、多
変量解析において女性(Odds Ratio(OR)=5.26,p=0.027)、傍大動脈リンパ節陽性
(OR=8.4,p=0.006)が肺再発における独立したリスク因子であった。
【考察】
我々は今回の研究で、膵癌根治切除後の肺再発症例は、他部位の再発症例に比べて
RFS, OS ともに有意に良好であることを明らかにした。また、多変量解析により、傍
大動脈リンパ節転移と女性が肺再発の独立したリスク因子であることを明らかにし
た。
肺転移のメカニズムは肝転移と同様に血行性であると考えられている。しかしなが
ら再発時期や予後が明らかに異なることから、肺再発のメカニズムは、他の遠隔転移
と異なる可能性がある。膵臓から流出するほぼ全ての静脈血は門脈系に流入するため
血行性転移では肝転移が最も多いと考えられる。一方、膵癌ではリンパ節転移も多く
見られるが、腹腔内のリンパ流は傍大動脈リンパ節を介して胸管に流入し、左静脈角
を介して上大静脈から肺動脈に流入する。肺転移が肝転移に比べて転移時期が遅く、
傍大動脈リンパ節転移が肺再発のリスク因子であるという今回の研究結果をあわせ
ると、肺転移の機序が血行性だけでなくリンパ行性によるものが存在する可能性があ
ると考えられた。
また、女性であることが肺転移のリスク因子であることは、既報でも散見されてい
る。膵癌の予後や治療反応性といった臨床経過が性別によって異なるという報告もあ
り、性ホルモンが癌の臨床経過に影響を与えている可能性があるが、関連性を明確に
するには更なる詳細な研究が必要である。

【結論】
膵癌切除症例において、肺再発は他部位再発と比較して有意に再発時期が遅く、予後
も良好であった。膵癌切除後の肺再発のリスク因子は、女性と傍大動脈リンパ節転移
であり、肺再発の転移経路として、傍大動脈リンパ節を経由するリンパ行性の経路が
関連している可能性がある。

神 戸 大 学 大 学 院 医 学(
系)
研究科 (
博 士課程)



論文題目

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甲第

3263 号



受付番号

文 審 査 の 結果 の 要 旨


朝倉

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ladenocarcinoma

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膵腺癌切除後の肺再発の臨床病理学的特徴とリスク因子

主 査
審査委員

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副 査

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叫、乃応仁




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(要旨は 1
, 000字 ∼ 2, 000字程度)

【目的】
膵癌は最も予後不良な悪性腫瘍のうちの 1つであり 、全病期をあわせた 5年生存率は約

9%である。唯一の根治的冶療は切除であるが、切除後の再発率は約 70%と非常に高く、
2%から 27%にとどまると報告されている。切除後の
切除症例においても 5年生存率は 1
再発形式は、局所再発、血行性転移、リンパ行性転移 、腹膜転移など多岐にわたり、肺転

2
2%と報告されている。
移再発は肝転移再発、局所再発に続き 3番目に多く 、再発率は約 3
肺転移再発の臨床病理学的特徴やメカニズムは他の遠隔転移とは異なる可能性があるが 、
詳細な解析はなされておらず明らかでない。本研究では、膵癌切除後の肺再発の臨床病理
学的特徴を解析し 、他部位再発との比較とリスク因子を明らかにすることを目的とした。

対象と方法】

2008年 1月から 2016年 12月まで神戸大学医学部附属病院において、膵癌に対し根治
,
1
)を行った 200例中、術前療法施行例、残膵癌、追跡不能例を除く計 161例 を対
切除 (R0
象とした。初回再発形式を部位別に分類し、初回肺再発症例の全生存期間、再発時期、臨
床病理学的因子、リスク因子について後方視的に検討を行った。

結果】
、 年齢は中央値 69歳 (
4
086歳)であった。傍大動脈リンパ節は、
男性 100例、女性 61例

90例にサンプリングが行われ、 1
1 例 (12.2%
)で陽性であった。 リンパ節転移は 109例
(67.7%

に認め、 RO切除は 1
1
1例 (
69.0%)であった。術後観察期間は中央値 24.
9ヶ月で
1
3例 (70.2%

に認めた。初回再発形式は、局所/肝/肺/腹膜/その他
あり、術後再発は 1
28
/1
7/10/5/20 例であった。初回肺再発は、他部位との同時
/複数がそれぞれ 33/
13.7%)
であった。
再発症例も含めて 22例 (
1) 全生存期間 (
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)

初回再発部位別の Med
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lTime(MST)は、肺/局所/肝/腹膜/複数同

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7/17.5/13.4/21.4 ヶ月であった。肺再発と肺以外再発で
時でそれぞれ 3
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2ヶ月であり肺再発で有意に良好であった (
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2) 再発時期

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肺再発、肺以外再発の Rec
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0.
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)。
あり肺再発で有意に長かった (
3) リスク因子

単変量解析では肺再発症例において女性、傍大動脈リンパ節陽性が有意に多く、多

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(
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=
5
.
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,
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0
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0
2
7
)、傍大動脈リンパ節陽性
変量解析において女性 (Odd
(OR=8.4,p=0.
006)が肺再発における独立し た リスク因子であった。


考察 】
本研究は今回の研究で、膵癌根治切除後の肺再発症例は、他部位の再発症例に比べて

RFS,OSともに有意に良好であることを明らかにした。また、多変量解析により、傍大動
脈リンパ節転移と女性が肺再発の独立したリスク因子であることを明らかにした。
肺転移のメカニズムは肝転移と同様に血行性であると考えられている 。 しかしながら再発
時期や予後が明らかに異なることから 、肺再発のメカニズムは、他の遠隔転移と異なる可
能性がある。膵臓から流出するほぼ全ての静脈血は門脈系に流入するため血行性転移では
肝転移が最も多いと考えられる 。一方、膵癌ではリンパ節転移も多く見られるが、腹腔内
のリンパ流は傍大動脈リンパ節を介して胸管に流入し、左静脈角を介して上大静脈から肺
動脈に流入する。肺転移が肝転移に比べて転移時期が遅く、傍大動脈リンパ節転移が肺再
発のリスク因子であるという今回の研究結果をあわせると、肺転移の機序が血行性だけで
なくリンパ行性によるものが存在する可能性があると考えられた。
また 、女性であることが肺転移のリスク因子であることは、既報でも散見されている。
膵癌の予後や治療反応性といった臨床経過が性別によって異なるという報告もあり、性ホ
ルモンが癌の臨床経過に影響を与えている可能性があるが、関連性を明確にするには更な
る詳細な研究が必要である 。

結論 】
膵癌切除症例において、肺再発は他部位再発と比較して有意に再発時期が遅く、予後も
良好であった。膵癌切除後の肺再発のリスク因子は、女性と傍大動脈リンパ節転移であり、
肺再発の転移経路として、傍大動脈リンパ節を経由するリンパ行性の経路が関連している
可能性がある 。
本研究は 、膵癌切除後の肺再発について、その臨床病理学的特徴とリスク因子ついて研
究したものでああり、傍大動脈リンパ節転移が肺再発のリスク因子であるということを初
めて明らかにした報告である。肺再発のメカニズムが血行性だけでなく、リンパ行性の経
路が関連している可能性があるという 重要な知見を得たものとして価値がある 。 よって、
本研究者は、博士(医学)の学位を得る資格があると認める 。

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