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大学・研究所にある論文を検索できる 「糖部5'-C-アミノアルキル修飾核酸の合成と核酸医薬への応用」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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糖部5'-C-アミノアルキル修飾核酸の合成と核酸医薬への応用

梶野, 瞭平 岐阜大学

2022.03.14

概要

siRNA(small interfering RNA)やアンチセンス核酸(ASO)等の核酸医薬は、人工的に合成したオリゴ核酸を用いて遺伝子発現を制御する医薬品である。核酸医薬はmRNAやpre-mRNA等の遺伝子に直接作用するため、これまで低分子医薬及び抗体医薬等による治療が困難な疾患に対する新な医薬品になるものと期待されている。しかし、天然のオリゴ核酸は、1)生体内の核酸分解酵素(ヌクレアーゼ)により容易に分解される、2)疎水性の細胞膜を透過できないため細胞内移行性が極めて低い、3)標的組織指向性に乏しい等の課題があり、このため、siRNAやASOの医薬品化を目指し、化学修飾した核酸並びに標的組織へ送達可能なドラッグデリバリーシステムの開発が行われている。このような背景のもと申請者梶野瞭平は、siRNA及びASOへの適用が可能な化学修飾核酸の設計・合成及び機能評価を行った。また、核酸医薬を標的組織特異的に送達する技術、特にガン細胞への核酸医薬の送達技術の開発を目指し、糖鎖をリガンド分子として用いた糖鎖-核酸コンジュゲートの合成及びその遺伝子発現抑制能について評価した。

1. siRNA及びASOへ応用可能な化学修飾核酸の開発
 当該研究室では、これまでにオリゴ核酸の糖–リン酸バックボーン上にアミノプロピル基を有する糖部4′-アミノプロピル修飾核酸(4′-AP-U)が、siRNAのヌクレアーゼ抵抗性を増強することを報告している。しかしながら、リボース環内炭素原子である糖部4′位へのアミノアルキル基の導入は、リボース環の配座を変化させ、siRNA二重鎖を熱的に不安定化することも明らかとなっている。そこで本研究では、糖部5′位炭素原子がリボース環外であることに着目し、糖部5′-C-アミノプロピル修飾核酸を設計した。糖部5′位炭素原子への化学修飾は立体異性体が生じるため、本研究では(R)-5′-C-アミノプロピル修飾核酸((R)-5′-AP-U)及び(S)-5′-C-アミノプロピル修飾核酸((S)-5′-AP-U)を新規に合成した。

 (S)-5′-AP-U及び(R)-5′-AP-Uは4′-AP-Uと比較して、糖部のコンホメーションがC3′-endo型であり、特に(S)-5′-AP-Uを含むRNA二重鎖が4′-AP-U及び(R)-5′-AP-Uを含むRNA二重鎖よりも高い熱的安定性を有することが明らかとなった。加えて、(S)-5′-AP-Uを含むオリゴ核酸は、4′-AP-U及
び(R)-5′-AP-Uよりもウシ血清中で高いヌクレアーゼ抵抗性を示した。以上の結果から、(S)-5′-AP-Uはこれまでに報告された4′-AP-Uと比べ、優れたRNA二重鎖形成能及びヌクレアーゼ抵抗性を示し、より核酸医薬に適した修飾核酸であると示唆された。

1-1)(S)-5′-C-アミノプロピル修飾核酸のsiRNAへの応用
 次に、(S)-5′-AP修飾をsiRNA医薬へ応用するため、これまでに合成した(S)-5′-AP-Uに加え、(S)-5′-C-アミノプロピル修飾核酸のシチジン誘導体((S)-5′-AP-C),アデノシン誘導体((S)-5′-AP-A),グアノシン誘導体((S)-5′-AP-G)を新規に合成した。続いて、(S)-5′-AP修飾を含むsiRNAの性質を詳細に検証した結果、パッセンジャー鎖の中央部分に(S)-5′-AP修飾を含むsiRNAに関しては、遺伝子発現抑制能が著しく低下する一方、パッセンジャー鎖の末端部分に(S)-5′-AP修飾を含むsiRNAでは、同じ位置に2′-OMe修飾を含むsiRNAと同等の遺伝子発現抑制能を示した。加えて、パッセンジャー鎖両末端部分もしくは3′-末端部分のみに(S)-5′-AP修飾を含むsiRNAは、同じ位置に2′-OMe修飾を含むsiRNAよりも高いヌクレアーゼ抵抗性を示した。以上より、siRNAの末端部分、特にパッセンジャー鎖の3′-末端部分へ(S)-5′-AP修飾を導入することで、高い遺伝子発現抑制能を保持しながら、ヌクレアーゼ抵抗性を増強できることが明らかとなった。

1-2)(S)-5′-C-アミノプロピル修飾核酸のアンチセンス核酸への応用
 (S)-5′-AP修飾核酸のASOへの応用を目指し、(S)-5′-AP-U及び(S)-5′-AP-Cを含むGapmer型ASOの合成と機能評価を行った。その結果、(S)-5′-AP-Cを含むASOは、同じ位置に2′-OMe修飾を含むものよりも標的RNA結合親和性が高いことが確認され、これはアミノアルキル鎖の末端アミノ基の正電荷によりリン酸バックボーンの負電荷が中和されたためであることが示唆された。さらに、(S)-5′-AP修飾核酸を含むASOは、同じ位置に2′-OMe修飾核酸を含むASOと比べ、高い遺伝子発現抑制能を示した。以上より、(S)-5′-AP修飾核酸を含むASOは2′-OMe修飾核酸と比べ、高い標的RNA親和性及び遺伝子発現抑制能を有することが明らかとなった。

2. 糖鎖-核酸コンジュゲートの合成及び機能評価
 核酸医薬を組織特異的に送達するための新たなリガンド-核酸コンジュゲートとして、N-アセチルラクトサミン(LacNAc)-ASOコンジュゲートを設計した。ホスホロアミダイト法によりLacNAc-ASOコンジュゲートを構築するため、N-アセチルグルコサミン誘導体を出発物質として、11段階総収率12%で目的のLacNAc-ホスホロアミダイトを合成した。続いて、LacNAc-ASOコンジュゲートの標的RNAとの二重鎖形成能及びRNaseH活性化能を評価した結果、LacNAc分子を含まないASOと同様に標的RNAと二重鎖を形成し、RNaseHによる標的RNA鎖の切断を引き起こすことが明らかとなった。最後に、LacNAc-ASOコンジュゲートの遺伝子発現抑制能を評価した結果、1分子のLacNAcを結合したASOでは、LacNAcを結合していないASOと同等の遺伝子発現抑制能を示したが、3分子のLacNAcを結合したASOでは遺伝子発現抑制能が大きく低下することが明らかとなった。したがって、LacNAc分子とASOが結合した状態では、遺伝子発現抑制能が低下することから、細胞内で開裂するリンカーを介してLacNAc分子をASOに結合する等、新たな分子設計により高い遺伝子発現抑制能を有するLacNAc-ASOコンジュゲートの開発が可能である。

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