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書き出し

食肉の国内加工における乾燥工程の基礎的研究

加藤, 慶一 筑波大学

2023.09.04

概要

食肉の国内加工における乾燥工程の基礎的研究

2023 年 1 月

加藤

慶一

食肉の国内加工における乾燥工程の基礎的研究

筑波大学大学院
生命環境科学研究科
生物機能科学専攻
博士(生物工学)

加藤

慶一

学位論文

論⽂要約

ヨーロッパなどの諸外国では、紀元前から⾷⾁製品を乾燥し、保存⾷として喫⾷する⽂化が⽣ま
れ、各地⽅の気候などに応じて加⼯技術が発展した。⼀⽅で、アジアの中でも特に⽇本では、⾁⾷
禁⽌令などによる影響で⾁⾷が浸透しなかったため、⾷⾁を保管する必要もなく、乾燥による加⼯
技術も発達しなかった。このため、本格的に⽇本で乾燥⼯程を含むサラミソーセージに代表される
乾燥⾷⾁製品が⽣産されたのは規格基準が公⽰された 1981 年、⽣ハムに代表される⾮加熱⾷⾁製
品は 1982 年からと諸外国と⽐較すると歴史が浅い。しかし、国内加⼯された各製品は⽇本の消費
者に受け⼊れられ、国内⽣産量が増⼤した。この増⼤に対応するため、⽣産性向上を⽬的とした独
⾃製法が国内では開発された。サラミソーセージの製造において、諸外国では低温乾燥による⾮加
熱サラミ製法が主流だが、⽇本では乾燥⼯程の前に加熱することで、タンパク質変性を伴う脱⽔を
⾏い、⽣産時間が短縮可能な加熱サラミ製法が定着した。また、⽣ハムの製造において、ヨーロッ
パでは⾷⾁表⾯に⾷塩を塗布する乾塩法が⼀般的であり、数か⽉を要する。⽇本では、塩漬期間短
縮技術が開発されて、その中で⾼圧法という技術が⽣まれた。これは、塩⽔を⾷⾁中に⾼圧処理す
ることで均⼀に塩漬ができ、塩漬⼯程を短時間化する技術である。このように国内では⾷⾁の処理
⽅法の⼯夫で製造時間短縮に向けた技術開発が進んだが、乾燥⼯程はこれまで経験的な⽅法で⾏わ
れているため、⽇数を要している課題がある。
本論⽂は、⾷⾁の⽇本国内での加⼯における乾燥⼯程に関する基礎的研究に関するものである。
具体的には、モデル乾燥材料を⽤いて、温度や相対湿度を設定した乾燥試験を実験装置で⾏い、試
料中の乾燥挙動解析や乾燥後試料の品質評価を⾏い、製造に適した設計指針に関する基礎的知⾒を
得ることとした。
第 1 章では本研究の背景について概説し、本研究の⽬的を述べた。
第 2 章では、乾燥⾷⾁製品の乾燥挙動を明らかにするため、加熱サラミ製法によるサラミソーセ
ージを試料とし、さまざまな乾燥条件における⽔の有効拡散係数(De)を求め、拡散の活性化エネ
ルギーを算出した。その結果、試料への脂肪添加によって拡散の活性化エネルギーが異なったこと
から、脂肪添加試料では、相対湿度(RH)が⾼い条件にて⽔分移動メカニズムおよび⽔分存在状態
が RH の低い条件と異なると考察した。さらに、実⽣産に向けて、本知⾒から、乾燥条件を低い RH
条件に設定することで、従来の乾燥⼯程で使⽤されている⾼い RH 条件と⽐較してエネルギー消費
量は増⼤する⼀⽅で、乾燥時間は約 70%に短縮されるため、時間当たりの⽣産効率が向上する可能
性が⽰された。
第 3 章では、⾮加熱⾷⾁製品における乾燥⼯程中の⽔分拡散を明らかにするため、ピックル液が
均⼀に分布した⽣ハムモデルを試料とし、さまざまな乾燥条件での De を決定し、拡散の活性化エ
ネルギーの変化と磁気共鳴イメージング(MRI)分析により求めた⽔分分布から、乾燥⼯程におけ
る⽔分の拡散挙動について議論した。得られた結果から、拡散の活性化エネルギーは、低い RH 条
1

件において、乾燥初期に急激に上昇しており、⽔分の移動に障壁が⽣じていることが⽰唆された。
乾燥中の MRI 分析でも同様に試料表⾯の含⽔率が乾燥中に急激に減少したことが⽰された。これ
らの結果から、⽣ハムの乾燥⼯程では、試料表⾯からの⽔分の急速な移動によって表⾯部分が乾燥・
硬化するケースハードニングが⽣じることを本研究で初めて明らかにした。⼀⽅で、乾燥後の MRI
分析では、表⾯部分の⽔分分布に乾燥中のような試料内部の含⽔率に⼤きな差が⾒られなかった。
以上の MRI 分析の結果から、乾燥初期に⽣じた試料表⾯部分のケースハードニングは、乾燥中期
から後期にかけて試料内部からの⽔分の移動によって軽減されたと考察した。さらに、実⽣産に向
けて乾燥条件を低い RH に設定し、⽣ハムを乾燥することで、製造時間の短縮およびエネルギー消
費量を低減できることが⽰された。
第 4 章では、第 3 章にて議論した⾮加熱⾷⾁製品である⽣ハムを対象とし、乾燥条件が製品の品
質へ及ぼす影響を評価した。品質は、⾷品の要素として⽋かすことのできない安全⾯と、⾷⾁中に
残存する酵素による影響が考えられる⾵味⾯を評価した。乾燥条件は、⽣ハム製造において⼀般的
な 18°C 70%RH と第 3 章にて乾燥時間短縮およびエネルギー消費量の低減が期待された 18°C 10%
RH である。まず、安全⾯において、⾷品衛⽣上の指標となる⼀般⽣菌数を検査した結果、各乾燥
条件において⼀般⽣菌数の増加はなかった。⾵味⾯の評価は、環境変動が少ない機器分析にて実施
した。機器分析は、遊離アミノ酸量、味認識装置による味覚、GC/MS による揮発性成分を対象と
して評価した。その結果、⾼い RH の乾燥条件での遊離アミノ酸量は、低い RH 条件と⽐較して、
わずかに増加していた。遊離アミノ酸量の増加は呈味へ影響すると考えられるため、ヒトが感じる
味に近い呈味評価が可能な味認識装置で⽐較した結果、本装置における呈味に差はなかった。さら
に GC/MS による揮発性成分量についても差ほとんどなかったことから、乾燥条件による⾵味⾯へ
の影響は⼤きくないと考えた。以上の結果から、乾燥時の RH を低い条件に設定しても、⼀般的な
乾燥条件と同等の品質である⽣ハムを作製できる可能性が⽰された。
以上のように本研究では、サラミソーセージと⽣ハムのモデル乾燥材料を⽤いて、さまざまな温
度や RH を設定した乾燥試験を実験装置で⾏い、試料中の乾燥挙動の解析や乾燥後試料の品質分析
を⾏った。これにより、サラミソーセージや⽣ハムの乾燥⼯程に関する基礎的知⾒を得ることがで
きた。本知⾒は、乾燥時間の短縮やエネルギー消費量の削減など⽣産効率向上に適した乾燥条件の
設計へ活⽤できると考えられる。これらの知⾒が、今後の⾷⾁加⼯品技術開発への発展となること、
ならびに⾷品産業での⽣産への活⽤、そして、消費者へ⾼品質かつ低コストである⾷⾁加⼯品の提
供につながることを期待する。

付記
本論⽂の内容の⼀部は、下記の誌上で報告されている。

2

1) Keiichi Kato, Hiroyuki Tanji, Sosaku Ichikawa 2022. Drying characteristics of a Japanese drycured ham model: Effect of temperature and humidity. International Food Research Journal.
29(6), 1429-1438. ...

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