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大学・研究所にある論文を検索できる 「Raman molecular fingerprints of rice nutritional quality」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Raman molecular fingerprints of rice nutritional quality

Pezzotti, Giuseppe 京都大学 DOI:10.14989/doctor.r13520

2022.11.24

概要

本研究では、米の栄養価を定量的かつリアルタイムに評価するためのラマン分光の解析アルゴリズムの開発を行った。イネは熱帯および温帯地域の多様な農業気候条件下で栽培することが可能であり、気候と水環境等の栽培条件の差異が品種の選択とその栽培手法を多様化させ、同一の品種であっても米の栄養特性に変化をもたらす。米を基本的な栄養源とするアジア諸国における気候変動はイネ生産に加えて米の品質にも大きな影響をもたらすと考えられている。また、品種特性と米の処理方法が食後の血糖値に影響を与えることが知られており、先進国における健康管理の面でも、品種や収穫後の処理および保管条件の違いによる栄養価の変動を把握することの重要性が増している。

 米の栄養価は多様な化合物の複合的な特性に規定され、本質的にはゲノムの遺伝子発現に依存することから米の栄養価に関連する物質の生合成に関わる遺伝機構は幅広く研究されており、米穀粒中の微量な栄養素の蓄積過程の解明が進んでいる。しかし、イネの生育条件、環境条件、米の保存時間にも大きく左右されるため、遺伝子型情報のみでは年次間変動や環境条件および保存条件に起因する質的変化を捉えることができない。本研究で開発したラマン分光法を用いた定量的なアプローチは従来技術では捉えられなかった品質データの入手を可能にするものである。さらに、消費者ニーズに対応できるハイスループットな実用技術の開発へ繋がるものである。以上を緒言として1章にとりまとめた。

 第2章では、本研究で適用したラマン分光法における装置と測定、データ処理、機械学習、および得られたデータの統計処理について記述すると共に、ラマンスペクトルからラマンバーコードを作成する考え方を詳述した。また、ラマン分光法による計測結果の定量性を評価するために用いた既存の定量法について解説した。

 第3章では、まず、第2章で示された考え方に基づき、アミロペクチン/アミロース、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン/トリプトファン)、各二次構造のタンパク質含有量、シアノ基含有合成化合物を測定するための完全なプロトコルを確立するために必要な一連のラマン分光アルゴリズムを新規に開発して、その実用性の検証を行った。アミロース/アミロペクチンの定量評価に用いたアルゴリズムの構築は、アミロース/アミロペクチンに共通する2種類の変角振動(C1-O-C5:868cm-1とC1-O-C4:855cm-1)とアミロペクチン特有の変角振動(C1-O-C6:844cm-1)からのスペクトル強度の比較解析に基づいて行った。ラマン分光法によって得られたデータと従来のアミロース-ヨウ素比色法で得られたデータとの比較により新たに開発したラマン分光法のアルゴリズムが有効であることが確認された。芳香族アミノ酸の定量評価のアルゴリズムには、フェニルアラニンとトリプトファンの分子構造における特異なリング構造に対して中心から動径方向に原子が変位するそれぞれ1004cm-1と765cm-1の呼吸振動を利用した。その定量性の評価を加水分解法およびクロマトグラフィー法によって得られるデータとの比較によって行った。また、タンパク質二次構造に対応するAmi de I振動の特異なサブバンド(αヘリックス:1638cm-1、βシート:1673cm-1およびランダムコイル:1660cm-1)を用いて、米品種の消化性に関連する二次構造の構成比を検出できることを示した。次いで、本研究で開発したプロトコルを用いて実用性の検証を行った。まず、モチ品種を含む9種類の日本産の白米を供試して、アミロペクチン/アミロースの定量が既存の手法と同等の精度で実施できることを示した。また、玄米、無洗米を加えた6種類の米を供試してアミロペクチン/アミロース、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン/トリプトファン)、各二次構造のタンパク質含有量、シアノ基含有合成化合物を測定し、本研究で開発したラマン分光法アルゴリズムの実用性を実証した。さらに、長粒種を含む世界の著名な7種の米を供試して開発したラマン分光法による測定を実施し、本手法が多様な形態の穀粒に適用可能であることを実証した。一方、穀粒の断面を用いて穀粒内部の栄養パラメータの分布状況を調査してアミロペクチンとタンパク質の含有量の穀粒深度の変化に伴う濃度勾配を把握した上で、非破壊の米を対象とした深度0.3mmでのラマン分光法測定によって栄養価の評価が実現可能であることを明らかにした。

 第4章では、日本および海外産の米を供試して調理時の温度の影響についてラマン分光法を用いて解析し、米のアミロペクチン含有量がグリセミック指数に与える影響等の調理後の米の栄養特性の評価が可能であることを示した。

 第5章では、本研究の結論として、ラマン分光法によって多様なイネ品種に由来する米から栄養情報を定量的かつ非破壊的に取得することに成功したことを踏まえ、本研究で開発した技術の農学分野における幅広い応用の可能性を論じた。その中では、米の栄養価のバーコード化により品質情報を携帯電話等の端末で容易に認識できる近未来的な品質管理、品質表示の革新的なシステムを提示した。

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