東京慈恵会医科大学附属病院の実状に応じた透析導入減少のための戦略 (第137回成医会総会一般演題)
概要
【目的】
国は2018年から,関連学会と日本医師会が連携して作成した「かかりつけ医から腎臓専門医療機関への紹介基準」を活用し,腎臓専門医が腎臓病患者に早期から介入することで重症化を予防し,2028年までに透析導入患者数の10% 減少を目標とした腎疾患対策を開始している.本研究では,東京慈恵会医科大学附属病院(当院)の導入患者について,腎臓・高血圧内科(以下当科)と紹介元との連携状況を調査し,その実状に基づく戦略を提案することで,当院および地域の透析導入減少に貢献することを目的とする.
【方法】
2018年の当院での透析導入患者について後ろ向きに調査した.
【結果】
① 患者背景:総数100名のうち,男性78名,平均年齢66歳,原疾患は糖尿病30名,高血圧24名など,標準的な導入患者像であった.東京都民は77名,そのうち港区民は7名と,広域から患者が受診していた.②当科への紹介元:院外施設から46名(かかりつけ医19名,病院18名,健診施設4名,産業医4名等),院内他科から54名(糖尿病内科13名,泌尿器科8名,循環器内科7名の他,計15科から紹介あり)であった.③ 当科紹介時の重症度:腎機能の指標であるeGFR の平均は,院外からは29.3,院内からは22.4と,いずれも2019年版診療ガイドラインで推奨される45より低く,紹介が遅かった.
【結論】
様々な紹介元からの紹介を早める対策が必要である.「かかりつけ医」に対しては,近隣のみならず広域での連携構築・紹介基準の普及とともに「健診の普及や適切な受診勧奨」も重要である.また,紹介元として多い「院内他科」や「健診施設」にも紹介基準の周知が必要である(本学健診センターには紹介基準を周知済).また,当科紹介前の時点で早期介入が可能な,管理栄養士,薬剤師,看護師・保健師等は対策上重要であり,日本腎臓学会を中心に「腎臓病療養指導士」として育成を進めている.ぜひ早期(eGFR<45または尿蛋白≧+ 1)から,遠慮なく当科に紹介・相談頂き,透析導入患者の減少にご協力頂ければ幸いである.