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量子スピン系における磁化率の異常に関する研究

相場, 信孝 AIBA, Nobutaka アイバ, ノブタカ 九州大学

2021.03.24

概要

物性物理学において、相転移やそれに対応する基底状態と励起状態間のエネルギーギャップは系の振る舞いを知る大事な手がかりとなっている。電子のミクロな状態について記述する量子スピン系ではエネルギーギャップの有無によって系の振る舞いが変化するため、エネルギーギャップ(以下で、ギャップと表記)について調査することが重要となる。

量子スピン系に関する様々な研究では、磁化過程と呼ばれる磁化と磁場の曲線からギャップが観測されている。しかし、磁化過程を利用して、対象とする系にギャップがある(gapped)か、ギャップがない(gapless)かの判定は困難だ。なぜなら、gapless 系と極小さなギャップしかない gapped系の違いは、数値計算上では判別がつかないためだ。先行研究において Sakai and Nakano は行列の対角化を用いる計算手法である数値対角化を用いて、ギャップの有無を判別する手法を提案した。その手法では磁化の関数として磁化率を導入し、磁化過程と比較するとギャップの微小な変化を明確に示すことができた。

Sakai and Nakano の研究を拡張して、本研究では磁化率の異常についての観測手法を提案する。ここでの”異常”という単語は、熱力学的極限において物理量が発散することを意味する(通常、”異常”は相転移、ギャップの変化を示すものと扱われる)。具体的な手法として、磁化率と、磁化に対する基底エネルギーの 4 階微分 A を計算し、これらの物理量から見える異常について考察する。今まで、磁化率に対する異常の研究はなされていたが、4 階微分 A に対する異常の研究はあまり実施されていない。本研究の対象として、以下に示すスピン 1/2 反強磁性 XXZ 鎖を考える。

Δは異方性パラメータ、それぞれの S は x、y、z 方向のスピン演算子を意味する。この系においては、Δ が変化することによって相も変化し、Δ≦−1 では強磁性相、−1<Δ≦1 ではTomonaga-Luttinger(TL) 相、Δ>1 では反強磁性相(Neel)を示すことが知られている。各パラメーターに対して、数値対角化法で系の基底状態エネルギーを計算し、磁化率や 4 階微分 A を求める。結果として、Δ>1 で磁化 0 における磁化率に異常が観測された。一方、4 階微分 A については、磁化 0、Δ>1/2 で異常が観測された。これらのことから、4 階微分 A は磁化率よりも容易に異常を観測できると示せた。ただし、Δ>1/2 において 4 階微分 A で異常を観測したという事実は相転移が起きているようにも捉えることができる。しかし、1/2<Δ<1 での異常は Δ=1 で観測されるKosterlitz-Thouless (KT) 転移のような相転移現象とは異なるということがスケーリング次元の観点から示される。スケーリング次元は Δ によって連続的に変化し、その性質が変わる点 (Δ=1) で相転移は発生する。−1<Δ≦1 においてはスケーリング次元の性質は不変であるため、Δ=1/2 では相転移が発生しないと言える。これらのことから、4 階微分 A で観測される Δ>1/2 における相転移を伴わない変化の発見は、我々の大きな成果である。加えて、3 階微分 D について 4 階微分 A と類似した異常を確認した。

本研究では、異常の観測について理論構築と数値計算にのみとどまったが、実験でもこのような異常を見ることができるだろう。なぜなら、3 階微分 D や 4 階微分 A などの高階微分は非線形磁化率と呼ばれる実験系の物理量と関連しており、その物理量を介して高階微分の異常についても観測できるからだ。以上のことから、本研究は量子スピン系における理論と実験に新たな進展を与えるものとなる。

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