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大学・研究所にある論文を検索できる 「BCG由来のトレハロースジミコレートリポソーム製剤の抗腫瘍免疫」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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BCG由来のトレハロースジミコレートリポソーム製剤の抗腫瘍免疫

志賀, 正宣 筑波大学

2021.12.03

概要

目的:Mycobacterium Bovis bacillus Calmette-Guérin(BCG)は古くから行われている有効ながん免疫療法であるが、BCG は生菌であることから投与経路が限られるため臨床応用は限定的である。そのため、BCG の有効な抗腫瘍免疫を利用した新規非生菌製剤の開発が求められている。本研究の目的は、BCG 細胞壁成分の一つである trehalose 6,6'-dimycolate(TDM)含有リポソーム製剤の抗腫瘍効果ならびにそのメカニズムを明らかにすることである。

対象と方法:TDM は、BCG コンノート株から薄層クロマトグラフィー(TLC)で抽出し、MALDI-TOF mass spectrometry によって確認した。TDM 含有リポソーム製剤(Lip-TDM)は、TDM に 1,2-dioleoyl-sn-glycero-3-phosphocholine(DOPC)、コレステロール、デンドロン脂質 D22 を混合し作成した。Lip-TDM の毒性は、抗酸菌感染の特徴である体重減少と肺の肉芽腫形成を測定し評価した。Lip- TDM の抗腫瘍効果は、膀胱癌細胞株(MB49)、大腸癌細胞株(MC38)、メラノーマ細胞株(B16F10)を用いたマウス皮下腫瘍モデルにて評価した。Lip-TDMの抗腫瘍メカニズムはヌードマウス、CD8 陽性 T 細胞枯渇マウス、TDM を認識する活性化受容体である Macrophage-inducible C-type lectin(Mincle)欠損マウスを用いて評価した。

結果:BCG コンノート株から TDM を TLC にて抽出し、オルシノール染色にて赤紫に染色される TDM を確認した。Lip-TDM を作成し、リポソーム製剤の表面は正に帯電し、直径は 100-160 nm であった。Lip-TDM 投与において、マウスの体重減少は認めず、肺の肉芽腫形成は抑制された。
Lip-TDM 皮下投与は MB49 担癌マウスにおいて BCG と同程度の腫瘍増殖抑制効果を認めた。さらに MC38 担癌マウス、B16F10 担癌マウスにおいても同様に腫瘍増殖抑制効果を認めた。
MB49 担癌ヌードマウスおよび MB49 担癌 CD8 陽性 T 細胞枯渇マウスにおいて Lip-TDM の腫瘍増殖抑制効果が消失した。Lip-TDM 投与は、MB49 担癌マウスの腫瘍流入リンパ節(TDLN)における活性化 CD8 陽性 T 細胞、細胞傷害性 CD8陽性 T 細胞を有意に増加させた。以上の結果から Lip-TDM が腫瘍微小環境において CD8 陽性 T 細胞の活性化を誘導し、抗腫瘍効果が細胞傷害性 CD8 陽性 T細胞によってもたらされることが示唆された。
次いで、MB49 担癌 Mincle−/− マウスにおいてLip-TDM の腫瘍増殖抑制効果は消失した。Lip-TDM 投与は、MB49 担癌野生型マウスの TDLN における CD40、 CD80、CD86 陽性樹状細胞(DC)ならびに CD103+ DC を有意に増加させたが、 MB49 担癌 Mincle−/−マウスでは差を認めなかった。以上の結果から Lip-TDM が腫瘍微小環境において DC の成熟化ならびに migratory DC を誘導し、その活性は Mincle 依存的であることが示唆された。

考察: Lip-TDM は膀胱癌、大腸癌、メラノーママウス皮下腫瘍モデルにおいてBCG と同等程度の抗腫瘍効果を示した。TDM は分子の立体構造に応じて異なる生物学的活性を示すことが知られており、Lip-TDM では体重減少ならびに肺の肉芽腫形成が消失したことから、リポソーム化することで TDM の毒性が軽減されることが示唆された。この利点により、投与方法が限定的で臨床応用が限られている BCG 治療の有効性を Lip-TDM を用いることで、さまざまな癌へ応用可能であることが示唆された。
Lip-TDM 治療がマウス皮下腫瘍モデルのがん免疫微小環境において Mincle 依存的に DC の成熟化ならびに migratory DC の増加を誘導した。さらに Lip-TDM の抗腫瘍効果は CD8 陽性 T 細胞枯渇マウスにおいて消失し、Lip-TDM 治療は腫瘍部および TDLN における活性化 CD8 陽性 T 細胞、細胞傷害性 CD8 陽性 T 細胞を増加させた。以上の結果から、Lip-TDM 治療は、がん免疫微小環境において Mincle 依存的に DC 成熟化を誘導し、細胞傷害性 CD8 陽性 T 細胞活性化させるアジュバント効果をもたらすことが示唆された。
免疫チェックポイント阻害薬を中心とする免疫療法の治療効果は未だ不十分であり、既存のがん免疫療法の効果を高める新規のアジュバント製剤の開発が求められている。TDM は、Mincle アゴニストとして自然免疫を活性化し、細胞性免疫を活性化するアジュバント効果を有しており、Lip-TDM も免疫チェックポイント阻害剤といった他の免疫療法と併用することで治療効果を高める可能性がある。

結論:BCG 細胞壁成分の一つである TDM 含有リポソーム製剤が 3 つの癌モデルにおいて抗腫瘍効果を示し、その抗腫瘍効果は TDM が Mincle 依存的に DC の成熟化を介して細胞傷害性CD8 陽性T 細胞を誘導することでもたらされると考えられた。投与方法が限定的で臨床応用が限られている BCG 治療の有効性を Lip-TDM を用いることで、さまざまな癌へ応用可能であることが示唆された。

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