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大学・研究所にある論文を検索できる 「S-1 facilitates canerpaturev (C-REV)-induced antitumor efficacy in a triple-negative breast cancer model」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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S-1 facilitates canerpaturev (C-REV)-induced antitumor efficacy in a triple-negative breast cancer model

宮嶋, 則行 名古屋大学

2021.07.27

概要

【背景・目的】
乳癌は日本人女性において最も罹患率の高い癌であるが、遠隔転移した乳癌は切除による根治は困難であり薬剤による全身治療が必要である。トリプルネガティブ乳癌 (TNBC)は、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体陰性およびヒト上皮成長因子 2 (HER2)陰性の乳癌である。ホルモン療法と抗 HER2 療法に感受性がなく化学療法が標準的な治療であり、新しい治療法が望まれる。

S-1 は、5-フルオロウラシル(5-FU)のプロドラッグであるテガフール、ギメラシルおよびオテラシルカリウムが配合された経口製剤であり、進行再発乳癌の主要な化学療法剤として使用されている。

腫瘍溶解性ウイルス(OV)は、直接的な腫瘍溶解と抗腫瘍免疫の誘導により抗腫瘍効果を発揮する。Canerpaturev (C-REV)は、弱毒化された腫瘍溶解性 1 型単純ヘルペスウイルスの変異株である。前臨床において、C-REV は乳癌を含む多くの癌腫に対して単独および併用療法で強力な抗腫瘍効果を示した。また、乳癌・メラノーマ・膵臓・頭頸部癌を対象とした第 I 相および第 II 相臨床試験でも安全性と有効性が実証されている。

骨髄由来抑制細胞(MDSC)は、慢性炎症の過程で増殖する不均一な細胞集団であり、乳癌など多くの癌患者に見られる。MDSC は CD4 +および CD8 + T 細胞の活性化を阻害することにより、腫瘍免疫を抑制して腫瘍増殖を促進する。

5-FU と OV の併用による抗腫瘍効果は in vivo で報告されているが、詳細な機序は不明である。今回われわれは、TNBC に対する C-REV と S-1 の併用の抗腫瘍の機序を腫瘍免疫の観点で MDSC に注目し、検討した。

【方法】
C-REV と 5-FU の殺細胞効果
殺細胞効果は MTT アッセイを用いて評価した。4T1 細胞(マウス TNBC 細胞株)播種 24 時間後に各濃度の 5-FU を加え、さらに各 multiplicities of infection の C-REV を感染させ、3 日間培養した。相乗反応は combination index (CI)値を用いて評価した。 CI>1 の時、相乗効果と判定した。

動物実験
4T1 腫瘍をマウスの両側面に 2 個、皮下移植した。腫瘍の大きさが 100–200 mm3 の時点で治療を開始した(day0)。マウスに S-1 (10mg / kg)を週 5 日で連続 2 週間、経口投与した。C-REV は day 0, day 2, day 7, day 9 に 5 × 105 PFU/100 µL を右側の腫瘍内に投与した。体重と腫瘍重量を観察し、腫瘍体積は 1/2×(長さ)×(幅)2 mm3 で算定した。総腫瘍体積が 1500 mm3 に達したときに死亡と定義した。

腫瘍浸潤リンパ球の再刺激
4T1 腫瘍を酵素処理し、細胞懸濁液を得た。得られた腫瘍浸潤リンパ球は CD3 抗体により刺激した。

抗体とフローサイトメトリー
腫瘍から得た細胞懸濁液を、CD45, CD3, CD4, CD8, CD11b, IFNγ, Gr-1 の抗マウス抗体を用いて染色し、フローサイトメトリーで解析した。

統計分析
連続変数は post-hoc Tukey test を使用した ANOVA によって、生存分析はカプランマイヤー法によって、曲線の統計的比較はログランク検定によって解析した。p 値が0.05 未満の場合を統計的に有意とした。

【結果】
S-1 は C-REV の 4T1 腫瘍に対する抗腫瘍効果を増強する
C-REV、5-FU、および、それらの併用に対する 4T1 の殺細胞効果を MTT アッセイで評価した。in vitro では S-1 の代わりに 5-FU を用いた。C-REV と 5-FU は濃度依存的に 4T1 細胞の増殖を抑制し、その効果は相乗的であった。in vivo では C-REV、S-1、および、併用により腫瘍の増殖を抑制し優位にマウスの生存を延長させた。特に併用効果は非投与側の腫瘍で顕著であった。

C-REV は CD3+CD8+T 細胞の腫瘍への集積と IFNγ 産生を促す
OV は直接的な腫瘍溶解に加えて、腫瘍関連抗原(TAA)を放出し免疫応答を惹起することから、CD3+CD4+ T 細胞と CD3+CD8+ T 細胞の腫瘍への浸潤を調べた。マウスに S-1 (10 mg / kg)を経口投与(連続 5 日、day0〜4)し、day0 と day2 に C-REV (5×105 PFU)を右側腫瘍に投与した。最終投与の 3 日後、腫瘍を摘出し腫瘍浸潤リンパ球を分離した。C-REV は投与側腫瘍と非投与側腫瘍の両方で明らかに CD3+CD8+ T 細胞の腫瘍内への浸潤を増加させたが、CD3+CD4+ T 細胞の浸潤は増加させなかった。CD3+CD8+ T細胞からの IFNγ 産生を調べたところ、投与側腫瘍および非投与側の腫瘍に浸潤した CD3+CD8+T 細胞からの IFNγ 産生の増加が認められた。

S-1 は脾臓および腫瘍で MDSC を枯渇させ、C-REV は腫瘍で MDSC を減少させる
4T1 腫瘍の進行は MDSC が関与することが報告されている。そこで S-1 および C-REV 投与により脾臓ならびに腫瘍内の MDSC に変化が起き、抗腫瘍効果が増強するという仮説を立てた。治療後の腫瘍の MDSC を調べると、S-1 は脾臓の MDSC を著明に減少させたが、C-REV はその効果を示さなかった。S-1、C-REV の併用治療では投与側と非投与側の両側の腫瘍内の MDSC を明らかに減少させていた。

C-REV および S-1 と C-REV の併用は、腫瘍所属リンパ節(TDLN)内の T 細胞からのIFNγ 産生を増加させる
C-REV が腫瘍を溶解し、樹状細胞(DC)が TDLN において TAA を CD3+CD8+ T 細胞に提示し、T 細胞を活性化する仮説を立てた。C-REV ならびに併用により CD3+CD8+ T 細胞の IFNγ 産生が増加したが、S-1 処理ではその効果は認められなかった。

以上より、併用効果は C-REV の直接的な腫瘍溶解効果だけでなく、S-1 処理によって脾臓および腫瘍の MDSC が減少することによる抗腫瘍免疫の賦活効果によると示唆される。

【考察】
この研究では、悪性度が高く治療に難渋する TNBC に対して in vitro および in vivoにおいて単剤と比べて C-REV と S-1 の併用効果の優位性が確認された。S-1 は再発乳癌の 1 次治療において全生存率でタキサンに非劣勢であり、QOL において優れるという報告がある。この研究から、in vivo において S-1 は C-REV の TNBC に対する抗腫瘍効果を高めることを明らかにし、この治療法は臨床において TNBC に対する有望なアプローチとなる可能性を示した。また、その機序として、C-REV と S-1 による MDSC浸潤抑制効果と、C-REV による腫瘍への CD3+CD8+ T 細胞の誘導、およびそれらの T細胞からの IFNγ 産生が亢進している点などが寄与している可能性が考えられた。われわれの研究は、OV の抗腫瘍効果がフッ化ピリミジン系抗癌剤によって高められる機序として、MDSC を減少させることを示した点で新規であり、単剤と比較した時の C-REV と S-1 の併用効果の優位性と機序を解析した。

【結語】
C-REV と MDSC を減少させる薬剤の併用は、TNBC に対する新しい治療戦略となることが示唆された。

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