リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「次世代型ワクチン開発に向けたカイコ生産ウイルス様粒子及び抗原タンパク質の架橋による抗原提示ナノ粒子の作製」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

次世代型ワクチン開発に向けたカイコ生産ウイルス様粒子及び抗原タンパク質の架橋による抗原提示ナノ粒子の作製

増田, 亮津 MASUDA, Akitsu マスダ, アキツ 九州大学

2022.03.23

概要

ウイルスなどの感染症が広まりやすい現代社会において、予防的ワクチンは獲得免疫を利用した感染症を防ぐのに有効な手段の一つであるが、現在の主流のワクチンは病原ウイルスを弱毒化した生ワクチンであるため、安全性への懸念がある。感染症の抗原タンパク質ベースのワクチンは病原ウイルス自体を使用しなくても良いため、より安全なワクチン形態である一方で、その免疫原性は比較的低いことからアジュバント存在下で複数回投与する事が必要となっている。タンパク質ベースのワクチンの中でもウイルス様粒子(VLP)はウイルスの外殻タンパク質のみが自己集合化してできるウイルスの形態を模倣したナノ粒子であり、高分子量とエピトープの反復によって高い免疫原性を持つが、VLP の形態をとる事が困難もしくは難生産性である抗原タンパク質も存在する。そのため、本研究では、VLP の粒子表面上に抗原タンパク質をディスプレイする事で免疫原性を改善した次世代型ワクチンの開発を目標とし、カイコ-バキュロウイルス発現系(silkworm-BEVS)における VLP ワクチンの生産法確立と難生産性のコロナウイルススパイク(S)タンパク質の生産性改善、新規酵素修飾法による VLP 上への分子ディスプレイ、さらに自発的なイソペプチド形成を利用した VLP 上へのコロナウイルス S 抗原のディスプレイを試みた。

まず、VLP ワクチン生産のモデルとして、家畜伝染病の原因として知られる豚サーコウイルス 2型(PCV2)のカプシドタンパク質を silkworm-BEVS を用いて発現し、夾雑なカイコ蛹から精製する手法を確立した。得られたカプシドタンパク質は自己集合化による VLP ナノ粒子の形成が確認された。また、マウスにおける免疫試験ではカイコで生産した PCV2 VLP が市販の PCV2 ワクチンと同等の中和抗体を誘導できたことから、カイコをプラットフォームとした VLP ワクチン生産の有用性が示された。

次に、silkworm-BEVS を用いた難生産の抗原タンパク質の生産性改善のモデルとして、コロナウイルス科に属し、PCV2 と同様に重要な家畜伝染病となっている豚流行性下痢病ウイルス(PEDV)のスパイク(S)タンパク質を選んだ。PEDV の S タンパク質はホモ三量体を形成することから、三量体としての構造安定化のため、鳥軟骨基質タンパク質(CMP)の三量体化モチーフを C 末端に融合すると、カイコ血清における大幅な分泌発現の改善に成功した。また、カイコの系統間の S タンパク質の血清中の発現量を比較した所、系統によって発現量が異なる事が分かり、高生産系統の雑種が安定的に S タンパク質の生産を可能にする事を示した。

このように、カイコで生産した VLP と抗原タンパク質を架橋し、抗原ディスプレイ VLP ワクチンを生産するための方法として、タンパク質間のリジン残基とグルタミン残基を架橋する酵素である微生物(Streptomyces mobaraensis)由来トランスグルタミナーゼ(MTG)に着目した。PCV2VLP の立体構造をもとに粒子表面に配置される様に MTG のグルタミン側の認識配列である Qtagを挿入した所、タグのない VLP と同様に精製可能である事が確認された。精製した Qtag 付きのPCV2 VLP を MTG のリジン側の認識配列である Ktag のついた EGFP と混ぜ、MTG による酵素反応を行った所、特異的に VLP と EGFP が架橋された事が確認され、MTG による VLP の分子修飾法の抗原ディスプレイへの利用の可能性を見出した。

異なるアプローチとして、Streptococcus pyogenes 由来のタンパク質フラグメントとペプチドタグによるイソペプチド結合形成を利用した SpyTag/SpyCatcher system を用いて、部位特異的タンパク質間架橋を試みた。カイコで大量生産可能なノロウイルス VLP に SpyTag を融合した所、VLPを形成できることを示し、抗原側として、PEDV の S タンパク質に SpyCatcher を融合して生産することで、in vitro における特異的な VLP と S タンパク質の架橋が起こることを示した。S タンパク質と架橋されたノロウイルスの VLP は粒子径と分子量の増加が見られたことから、VLP の表面に S タンパク質が提示された抗原提示ナノ粒子が生成できた事が示された。

以上の結果より、silkworm-BEVS を利用して、より安全なワクチンとして使用可能な VLP を生産し、その表面を特異的に修飾することに成功した。また、カイコで難生産のコロナウイルス抗原の生産改善と部位特異的架橋による VLP 上への提示にも成功したことから、これらの成果は、ワクチン生産コストの削減と免疫原性の向上を期待できる次世代型ワクチンの開発に寄与するものであると考えられる。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る