重水素化による医薬分子と分子触媒の機能開拓
概要
令和 4 年度
京都大学化学研究所 スーパーコンピュータシステム 利用報告書
重水素化による医薬分子と分子触媒の機能開拓
京都大学大学院薬学研究科 薬品分子化学分野
中 寛史
研究成果概要
本研究では、化学合成によって位置選択的に重水素化された分子を合成し、スペクトル測
定によりその機能を明らかにすることを目的としている。本年度は、高度に官能基化された医
薬品の重水素化にも適用可能な触媒系の開発を目指した。その結果、有機物質の可逆的な
水素移動反応に有効なイリジウム錯体 (藤田触媒、Ir-1) によって、重水を重水素源としたア
ルコールのヒドロキシ基 α 位の重水素化が効率的に進行することを見出した 1。ロサルタンカ
リウム (1-K+) を含む、多様なアルコールの α 位選択的な重水素化が可能であった。
また、キラルな相間移動触媒(有機分子触媒)の重水素化が、触媒の頑健性を高めることを
突き止めた 2。これらの成果に関連して、新たな触媒の開発に向けた検討にスーパーコンピュ
ータシステムを利用している。
発表論文(謝辞なし)
1.
Itoga, M.; Yamanishi, M.; Udagawa, T.; Kobayashi, A.; Maekawa, K.; Takemoto, Y.; Naka,
H. Chem. Sci. 2022, 13, 8744−8751.
2.
Liang, H.; Li, Z.; Liu, Y.; Murayama, S.; Naka, H.; Maruoka, K. Tetrahedron Lett. 2022, 96,
153753. ...