重いアリールアニオンを基軸とした新規骨格構築反応の開発
概要
令和 4 年度
京都大学化学研究所 スーパーコンピュータシステム 利用報告書
重いアリールアニオンを基軸とした新規骨格構築反応の開発
Development of Novel Synthetic Reactions Using Heavy Aryl Anions
京都大学 化学研究所 有機元素化学研究領域
西野龍平
研究成果概要
当研究室では、フェニルアニオン(C6H5–)のゲルマニウムやスズ類縁体であるゲルマおよび
スタンナベンゼニルアニオンの合成・単離に成功している。ゲルマベンゼニルアニオンの反応
性の調査の過程で 1,2-ジブロモジゲルメンとの反応を行うと、ゲルマニウム原子が他の化学種
に輸送される興味深い現象が見いだされた。本研究課題では、この新規なゲルマニウム原子
の輸送反応について、反応機構に関する知見を計算化学的な視点から調査することを主な目
的とした。
研究室所有のワークステーションを用いた AFIR 計算(GRRM 17)によって得られたモデル化
合物のポテンシャルエネルギーマップから、化学的・エネルギー的に妥当な経路を抽出した。
この各中間体および遷移状態を実際に用いた分子に拡張し、Gaussian 16 を用いて構造最適
化および IRC 計算を行った。様々な計算レベルを検討し、B3LYP-D3/6-31+G(2df,p)レベルが
最も妥当と考えられる結果を与え、初期生成物から 4 段階で INT4 へと至ることがわかった。
INT4 はゲルマベンゼン環をゲルマニウム原子が架橋した構造をしており、ここからゲルマニウ
ム原子が脱離することで芳香族性を獲得するため、これが反応の駆動力となっていることが強
く示唆される。 ...