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Two-photon microscopic observation of cell-production dynamics in the developing mammalian neocortex in utero

Kawasoe, Ryotaro 川添, 亮太郎 名古屋大学

2020.04.02

概要

【緒言】
大脳形成は脳室側で細胞産生が起こり、誕生したニューロンが脳表面側に積み重なり組織が厚くなることで達成される。細胞産生を担う神経系前駆細胞(NPC)は脳室面から脳表面にわたり細長い形態をとり、細胞周期依存的に核移動する(Fig.1A)。

こうした知見を得る上では組織培養下に細胞レベルの現象をライブ観察することが有力な手法であった。その一方で限界も存在する。まず、個体から組織の一部を切り出すため、脳膜などの隣接する組織や他臓器との関連を含めた全身系としての理解ができない。

また観察時間の経過とともに組織構造が変化するなど生理条件からの逸脱がみられる。

さらに母体への薬剤投与や一過的な虚血などの急性変化が胎仔大脳形成に与える影響を評価する、といった臨床的に重要な視点からの研究も困難である。そこで私は深部観察可能な二光子顕微鏡により、胎生 13 日(E13)〜E14 を対象に脳室面までを見通し、脳形成の子宮内直接観察を目指した。

【方法】
二光子顕微鏡を用い、結果①で詳述するプロトコールに従って観察を行った。母体麻酔下で E13〜E14 の胎仔脳原基を 5 分おきに観察した。脳室面近傍での NPC による細胞産生の観察には H2B-EGFP Tg(ヒストン H2B を EGFP で標識し全ての細胞について間期の細胞の核/分裂期の細胞の染色体を可視化)マウスを用いた。NPC の細胞周期動態観察には Fucci(S,G2,M 期で AzamiGreen-Geminin を発現)マウスを用いた。また、組織培養下における脳室面近傍での細胞産生の観察には H2B-mCherry Tg(ヒストン H2B を mCherry で標識)マウスを用いた。

【結果】
① 子宮内観察の達成のためのプロトコールを確立した。
二光子顕微鏡による子宮内観察の達成に向け以下の4つの問題点の解決を図った。
(i) 母体からの振動の抑制
観察に際し、母体からの呼吸や拍動による観察像の揺れを抑える必要がある。一方 で柔らかい胎仔や胎盤に対する物理的ダメージは胎仔の生存に直結する。そこで次の ような保持法を採用した。母体腹腔外へ引き出した子宮を 1kPa 程度の弱い吸引と側 方からの挟み込みにより、宙吊りの状態で保持する(Fig.1E-1)。次に子宮と保持装置 の外枠との間を低融点のアガロースゲルで固め胎仔を保護しつつ固定する(Fig.1E-2)。アガロースが固まった後、胎仔の頭部を軽く押しつけながらカバーガラスをねじ止め する(Fig.1E-3)。

(ii) 脳室面までを含めた組織深部の観察。
脳室面までを見通し細胞レベルでの分解能を得るため、高感度な GaAsP detector 付き二光子顕微鏡を用いた。

(iii) 胎仔を子宮内に留めるための工夫。
先行研究では子宮から胎仔を完全に取り出していたのに対し、子宮壁及び羊膜に小さな穴を開け胎仔自体は子宮内に留める方法を採用した。

(iv) 母体及び胎仔の生存管理。
観察中、胎仔を生存させるためには温度管理が重要と分かった。そこで母体に対し、直腸体温を測定しながらリアルタイムで体温管理を行う体制を整えた。また胎仔については保持装置全体を 37℃の PBS に浸すことで恒温性を確保した(Fig.1E-3)。

上記子宮内観察のプロトコール確立のため 40 回の条件検討を行った。
次に、確立したプロトコールを用い結果②及び③のデータを得るための観察を行った。全 21 回の試行のうち、5分間隔で撮影を行った際に観察時間 10 分以上のケースが 33%、60 分以上のケースが 14%だった。また最長観察時間は 90 分だった。

② 新規子宮内観察法により脳室面近傍での細胞産生を捉えた
脳室面近傍は細胞産生の場であるため、H2B-EGFP マウスを用い脳室面までを見通すことができれば、染色体が凝集した細胞が多数観察されるはずである。さらに(ⅰ) G2 期細胞の脳室面への到着。(ⅱ)脳室面での NPC の分裂。(ⅲ)誕生した娘細胞の脳表面側への移動を観察できると考えられる。

実際に E13 の胎仔を対象に頭皮越しに組織深部に向かい観察を行ったところ(Fig.2A)、頭皮から約 220 μm の領域で染色体が凝縮した多数の分裂期細胞と側脳室と思われる蛍光シグナルが消失する領域を認めた。

また脳室面近傍のライブ観察により、染色体が凝集したのち二つに分離する過程やその後誕生した娘細胞の核と思われるシグナルが脳表面側へ移動する過程を捉えた。このように NPC が脳室面で分裂し、誕生した娘細胞が脳表面側へ向け核移動するというこれまでの知見と一致する観察像が子宮内観察においても得られた(Fig.2B,C)。さらに定量的な解析として脳室面での分裂に関し面積・時間あたり(3600 μm2・1h)の頻度を組織培養下での観察と比較したところ有意な差はなかった(p = 0.7 ; 2 胎仔 3 視野)。また、娘細胞が誕生してから脳表面側に向け核移動するまでの時間も組織培養下と有意な差が無かった(p = 0.56 ; 各 n = 17 cells)。

③ 子宮内観察下で細胞周期進行に応じた NPC の核移動及び脳室面以外での分裂を捉えた。
NPC は細胞周期依存的に核移動するため、脳室面での細胞産生にはそれに先立つ S 期での DNA 合成の適切な完了と G2 期での脳室面方向への核移動が必要となる(Fig.1A)。

また、大部分の NPC が脳室帯(VZ)と呼ばれる脳室面から約 100 μm の領域内で核運動を行い、脳室面で分裂する一方で、VZ の脳表面側に隣接する脳室下帯(SVZ)と呼ばれる領域で分裂を行う NPC が一部存在することが知られている。

そこで大脳形成時の細胞産生動態を包括的に評価するため S、G2、M 期で蛍光タンパク(AzamiGreen-Geminin)を発現する Fucci マウスを用い子宮内観察を試みた。その結果以下の4つの現象を捉えた(Fig.3A)。

(ⅰ)S 期の完了後、脳室面方向へ移動する NPC の核(Fig.3A event 1)。蛍光標識された NPC の核が約 2 μm/min の速さで脳室方向へ移動する様子を捉えた。これは組織培養下での知見(平均 0.5 μm/min、最高で 1.5-2.0 μm/min)と同等の結果と言える(Fig.3B cell 1)。(ⅱ)SVZ での NPC の分裂(Fig.3A event 2)。蛍光標識された細胞体部分が約 10 μm に丸く膨らんだ後、10 分以内に蛍光が消失した(Fig.3B cell 2)。 Fucci システムによる蛍光は M 期の終盤で即座に消失することが知られているため、 SVZ で NPC の分裂を捉えたと考えられる。(ⅲ)脳室面以外の領域で分裂する際、NPCが分裂に先立ち細胞体を脳表面側へ移動させる現象(Fig.3A event 3)。NPC が SVZ で分裂する際、分裂に先立ち細胞体部分を脳表面側へ移動させるというこれまでの組織培養下での知見と一致する観察像を得た(Fig.3B cell 3)。(ⅳ)G1 期を完了した NPCが S 期に入ることによる蛍光の発現。又は既に S 期に入った細胞が視野中に移動してくる様子(Fig.3A event 4, Fig.3C)。

【考察】
組織深部の脳室面近傍で細胞レベルの分解能を得るには高感度の GaAsP detector 付き二光子顕微鏡の利用が有効だった。観察中に胎仔の拍動が停止する理由を完全に特定できていないが、胎盤や胎仔の循環を良好にする工夫が有効と考えられる。

今後の改善により長時間の子宮内観察が可能になれば、(ⅰ)組織の広範囲にわたるニューロンの移動、(ⅱ)脳実質の細胞と将来の頭蓋を形成する周囲の細胞との間に想定される相互作用、(ⅲ)脳内での細胞産生への関与が示唆されている血管形成、(ⅳ)神経堤由来の周皮細胞についても直接観察が期待できる。

また、妊娠期間中の一過的な虚血に対し NPC がどの程度、感受性や耐性を持つかといった、母体とのつながりを維持しながら母体への急性変化が胎仔脳形成に及ぼす影響を評価するモデル構築等の応用が期待できる。

【結語】
脳室面までを含むマウス大脳原基の全ての細胞を子宮内で観察できる観察法を構築した。また新規子宮内観察法により、脳室面での細胞産生や組織深部での NPC の細胞周期動態を捉えた。

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