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大学・研究所にある論文を検索できる 「アクアポリン9遺伝子欠損は視神経挫滅による網膜神経節細胞死と機能不全を助長する:アクアポリン9がモノカルボン酸輸送体と共同してアストロサイト・神経間乳酸シャトルとして働き、網膜神経節細胞の機能と生存を維持していることの証明」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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アクアポリン9遺伝子欠損は視神経挫滅による網膜神経節細胞死と機能不全を助長する:アクアポリン9がモノカルボン酸輸送体と共同してアストロサイト・神経間乳酸シャトルとして働き、網膜神経節細胞の機能と生存を維持していることの証明

Mori, Sotaro 神戸大学

2020.09.25

概要

緑内障は眼圧上昇など様々な因子によって網膜神経節細胞死を来す神経変性疾患であり、本邦においては 40 歳以上において約 4%の有病率を認める common な疾患であり現在日本人における成人失明原因の 1 位となっている疾患である。眼圧下降が唯一のエビデンスがある緑内障治療法となっているが、日本人においては正常眼圧緑内障と呼ばれる眼圧が高くないにもかかわらず視野狭窄が進行する病態を比較的多く認め、その他の治療法が模索されている。アクアポリン(AQP)は、水輸送を司る膜タンパクであるが、このうち AQP9 は水以外に乳酸輸送などを行う aquaglyceroporin の一種である肝臓や大脳などに分布している。過去の報告において AQP9 は視交叉を含む脳の白質においてアストロサイトと共に発現しているとされている。これまで我々はヒト献体の緑内障眼や慢性高眼圧モデルラットの網膜神経節細胞において AQP9 の発現が減少していること、また培養網膜神経性津細胞においては siRNA で AQP9 発現を阻害すると、活性酸素産生上昇と細胞死に至ることが報告している。また近年アストロサイト・神経間乳酸シャトル (ANLS)仮説と呼ばれる網膜神経節細胞を含む神経細胞はグルコース以外にアストロサイトから供給される乳酸もエネルギー源として利用しているのではないかというモデルが提唱され、それらを支持する報告が蓄積されている。

今回我々はマウス網膜内層における AQP9 とモノカルボン酸輸送体 (monocarboxylate transporter ; MCT)、グルコース輸送体(glucose transporter; GLUT)の関与について検証を行った。そして Aqp9 ノックアウトマウスを使用して網膜神経節細胞の機能維持と生存に対する AQP9とエネルギー供給の変化について緑内障病態モデルとして視神経挫滅を使用して網膜神経節細胞の構造(網膜神経節細胞密度)や視機能(網膜電図による振幅評価)の検証を行った。また網膜神経節細胞の生存に対する乳酸の寄与を調べるために、MCT 阻害薬を硝子体内に投与し、視神経挫滅と同様に網膜神経節細胞の構造と機能障害の程度について調査した。

免疫染色法において網膜神経節細胞層にはAQP9 が網膜神経性節細胞マーカーであるRBPMS やアストロサイトのマーカーである GFAP と共発現しており、また MCT1,2,4 も網膜神経節細胞層において AQP9 と共発現していた。網膜タンパクにおいて野生型マウスでは免疫沈降と Western blotting 法により AQP9 と MCT1,2,4 が共発現していることが明らかとなった。また視神経挫滅後においては網膜における AQP9 の発現が免疫染色や Western blotting 法の評価において低下を認めた。MCT については MCT1 と 4 は視神経挫滅において発現低下を認めたが、MCT2 について発現量は変化しなかった。また Aqp9 ノックアウトマウスは生理的な状態では、野生型マウスと比べて血糖や眼圧、体重において変化はなく、網膜神経節細胞密度や網膜電図による振幅も差を認めなかった。しかしながら視神経挫滅後においては、野生型マウスにおいても視神経挫滅 1 週間後に網膜電図の振幅低下や網膜神経節細胞密度低下が認められたが、その程度は Aqp9 ノックアウトマウスより軽度であり、Aqp9 ノックアウトマウスは野生型に比べて有意に網膜神経節細胞死が亢進し、網膜電図における振幅低下を認めた。また野生型において MCT 阻害薬の硝子体注射を行うと、それ単独では網膜神経節細胞の密度や網膜電図に変化を認めなかったが、視神経挫滅と同時にMCT 阻害薬と投与すると、視神経挫滅単独に比べ有意に網膜神経節細胞死が亢進し、網膜電図における振幅低下を認めた。Aqp9 ノックアウトマウスや視神経挫滅においては網膜内の乳酸濃度は低下し、代わりに網膜における GLUT1,3 の発現亢進と網膜内グルコース濃度の上昇が認められた。

これらの事実から網膜神経節細胞において AQP9 が乳酸輸送に対して MCT と共同しながら機能していること、また AQP9 や MCT のみを阻害して網膜の乳酸濃度が低下しても代償的にグルコース供給が増えるために網膜神経節細胞の機能や構造に影響を与えないが、視神経挫滅というストレス下においては乳酸輸送を阻害されると通常よりも網膜神経節細胞死の亢進や機能低下が認められた。今回明らかになったこれらの事実は、ANLS 仮説において AQP9 も MCT と共に関与している事の傍証となり、これらのアストロサイトから網膜神経節細胞への乳酸授受の機序やグルコースと共にエネルギー需要から考えられる網膜神経節細胞生存の寄与は、将来的な緑内障性視神経症の病態機序の解明に重要であり、さらには眼圧下降に代わる新たな緑内障治療としての臨床応用につながる可能性がある。

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